キミとのセカイ6




家に着くと既に10時半をまわっていた。
アルヴィンは部屋に入るなり暑いな、と一言言って冷房のスイッチをつける。
暫くたつとぶぉーんという音と共に冷たい風が流れてきた。
僕は買ってきたものを机の上に置くと少し眠たくなってきて目を擦る。

「おい、青少年まだ寝るなよー。
 とりあえず歯磨いて風呂に入って来い」

「だ、駄目だよまずは家主のアルヴィンがお風呂に入ってきて。
 僕はTVでも見ながら待ってる…から。」

今にも寝そうなのをぐっと堪えてアルヴィンの提案を否定する。
だって面倒を見てもらう相手より先にお風呂に入るなんて出来ない。
ベッドを背もたれ代わりに床に座ってテレビの電源を付けた僕にアルヴィンがはぁ、と息を吐き出す音が聞こえた。

「そうは言ってもおたくすげー眠たいんじゃないの?
 俺が先入って出てきたら寝てそうな気がするんだけど」

僕の横にしゃがみながらそんなことを言うアルヴィンに大丈夫だと言うが、眠たそうな声では信憑性に欠けるのも自覚していた。

「…なぁ、じゃあこれからは出来るだけ俺が先に入るから今日のところはジュード君が先に入ってきなよ、ね?
 家主の俺がいいって言ってんだからいーだろ?」

そう言って頭を撫でる手が気持ちよくて僕は本当に寝てしまいそうだった。
な?と再度確認をとるアルヴィンの押しに負けるように無意識のうちに僕の首はこくんと上下に動いた。
よし、と言う言葉と共に頭に置かれていた手が離れていく。
それを少し寂しいと思うのは僕が今眠たいからだろう、そうに違いない。
僕は目を覚ますように軽く頭を横に振ると買ってきた袋を持ってその場から腰を上げた。
そして部屋の隅に置いていた黒い大きめのボストンバックからパジャマと着替えの下着を取り出す。
するとアルヴィンも一緒に立ち上がったのがわかった。

「風呂の説明してなかっただろ?」

と言いながら廊下に出て左側にある扉を開けた。
脱衣所に置いてある棚からバスタオルとタオルを1枚ずつ出すと僕に渡してくれる。
その後シャワーの使い方とかを説明すると、んじゃごゆっくりーと言いながら出て行った。
一人になると僕は改めてぐるっと見渡してみる。
よくあるユニットバスタイプの風呂ではなく、トイレと風呂が別々になっているタイプだ。
洗面台とその横に洗濯機と汚れ物を入れるのであろう大きな籠が置いてあった。
思ったより広いんだな、と思いながら僕は服を脱いだ。






「アルヴィンお風呂ありがとう」

風呂からあがって部屋に戻ると既にテレビは消されており、アルヴィンはパソコンで何かをしている最中だった。
そこから顔をあげるとこちらを見て濡れた黒猫みたいだな、と苦笑しながらパチンという音を鳴らしてパソコンを閉じる。
アルヴィンは立ち上がるとこちらに歩いてきて僕の首にかかっていたタオルで髪をわさわさと拭き始めた。

「わわっ、アルヴィン何するのっ…い、痛いよ」

「ちゃんと乾かさねーと風邪ひくだろ、大人しく拭かれとけ。
 ってかなんでドライヤーで乾かして来ねーんだよ」

そう言うと今度は少し優しく僕の髪を拭うと、暫くして頭にタオルを乗せたまま手を離した。

「ドライヤーがどこにあるのかわからなかったんだ」

一瞬あれ?説明しなかったっけ、という顔をしたアルヴィンは廊下に出て行ったと思ったらドライヤーと僕が先程飲みきれなかったペットボトルに入ったお茶を持って帰ってきた。

「とりあえずここで乾かしとけ、後これお茶な。
 俺も風呂入ってくるわ」

「う、うん。ありがとう」

アルヴィンはそんな僕に片手を挙げて答えると廊下と部屋をつなぐドアを後ろでで閉めて出て行った。

ぶぉーという音と共に暖かい風が僕の髪を乾かしていく。
そのまま10分くらいするときれいに乾かしきれたのでドライヤーの電源をオフにした。
途端に部屋がシーンと音がするくらい静かになる。
そんな中ふぅ、と一息つくと喉に渇きを覚え、机に置いていたペットボトルのお茶をぐっと呷る。
やることがなくなると一気に睡魔が襲ってきた。
アルヴィンがお風呂から出てくるのを待ってなきゃいけない、そう思いつつも瞼がどんどん閉じていくのを止められない。
しばらく自分の瞼と格闘していたのだが、ついに負けて目を閉じてしまうとそこから眠りに落ちるのは早かった。








〜アルヴィンSIDE〜

風呂から出てきてみると、すぅすぅと気持ちよさそうに寝息をたてながら床に転がって眠っている少年がいた。
初めて来た場所に初めて会う相手、よほど緊張していたんだろう。
子供なりに各所気を使っていたのはこいつの態度や会話の中からよくわかった。
飲んでいたお茶のペットボトルを机の上に置くと、近くに転がっていたドライヤーを持って再び脱衣所に向かう。
髪を乾かし終わり部屋に戻ると先程と寸分違わぬ姿で眠りこけるジュードの姿。
冷房のタイマーをセットし、ジュードの背と膝の裏に手を回してそっと持ち上げた。
そのままベッドの右よりの位置にジュードを下ろすと、自分も左側に寝転がって掛け布団を胸が隠れる程度まで持ち上げる。
すると「…んっ」と言いながらジュードが寝返りをうって自分のほうを向いてきた。
次の日の朝起きた時こいつどんな反応するんだろうな、と内心少し笑いながらリモコンで電気を消すと目を閉じた。

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