キミとのセカイ5
夜、ぽつんぽつんと一定間隔に設置されている街灯の明かりだけが照らす薄暗い道を二人で歩いていく。
男性の話だとアパートから歩いて15分くらいの距離に大型ショッピングセンターがあるらしい。
アルヴィンさんは僕とは歩幅が全然違うし歩くのも早くて、僕は少し小走りになりながら後を着いていく。
するとそれに気づいたアルヴィンさんは悪い悪いと言いながら途中でスピードを落としてくれた。
「すみません、アルヴィンさん。
ありがとうございます」
僕がそう言うとアルヴィンさんは片手で頭をぽりぽりと掻きながら僕のほうを見下ろしてきた。
「なぁジュード君、その呼び方やめない?
どーもむず痒いんだよね、アルヴィンでいいから。
あと敬語も禁止ね、これから一緒に暮らすんだし別にいらねーだろ」
「えっ、でもアルヴィンさんは僕よりずっと大人で…呼び捨てなんて出来ません。
それに敬語は癖みたいなものだから…」
「俺がいいって言ってんだからいーんだよ。
それにおたくローエンのことだって呼び捨ててたじゃねーか」
なっ、て言いながら僕の頭に手を置くとわさわさと手荒く撫でてきた。
「わわっ、や、やめてください…!
髪がぐしゃぐしゃになっちゃう……わ、わかりましたアルヴィンさ…アルヴィン!」
すると頭上からクククッって笑いが聞こえるとともに頭に乗せられていた大きな手も離れていった。
僕はぐしゃぐしゃになってしまった自分の頭に両手をやると手櫛でなんとか整えていく。
そんなやり取りをしているうちに気がついたら大きな建物に辿り着いた。
沢山のライトがその建物を照らしていてそこだけ見ると今が夜だということを忘れてしまいそうだ。
慣れた調子で自動扉を潜っていくアルヴィンに続いて僕も建物の中に入っていく。
「まぁとりあえずは布団を見に行くか」
そう言うアルヴィンに了承の意を示すと僕は彼に続いて歩き出した。
暫くしてたどり着いた布団売り場で適当に布団一式を購入する。
店員さんが大きなカートを持ってきてくれたのでとりあえずそこに購入した布団を乗せてみたが、思ったよりも大きくて重たい布団をカートなしで家までの15分の距離運ぶのは大変だ。
それに15分とはアルヴィンが歩くスピードであって、僕が歩くスピードに併せていたら15分どころか20分や25分くらいはかかるんじゃないかと思う。
僕じゃとても持てそうになく、アルヴィンは少し考えるような表情で片手を顎に当てている。
そんな僕たちの様子に気を利かせた店員さんが
「ご自宅まで配送も承っておりますよ。明日の午前中にはお届け出来るかと思います。」
と教えてくれた。
するとアルヴィンがそうするか、と独り言のように呟くと僕のほうを振り返った。
「ジュード君もそれでいい?」
手短に聞いてくるアルヴィンに僕はこくんと頷く。
確かアルヴィンの自宅には毛足の長いカーペットがひいてあったはずだ、今は真夏だし一日くらいそこで寝ても風邪はひかないだろうから大丈夫だろうと思った。
僕が頷くとアルヴィンは了解、と一言言って店員さんと配送の手続きをし始める。
僕がぼーっとその様子を何とはなしに見てると暫くしてアルヴィンが僕の傍に戻ってきた。
「さて、と。後は何を買えばいいんだっけ?」
「えーっと、パジャマや少しだけど私服とか宿題一式は持って来まし…来たよ。
あ、制服やランドセルとかはまだ持ってきていないから今度一回ローエンの家に取りに行かなくちゃいけないんだった。
後は…歯ブラシを持ってくるのを忘れてしま…ちゃったから買いに行ってもいいです…いい?」
気を抜くと敬語になってしまうのを面白そうに笑って見ているアルヴィンは正直言って性格が悪いと思う。
そんなアルヴィンはあぁ、と一言返事をすると歯ブラシが売っているのであろう売り場に向かって歩き出した。
その後ろを着いていくと薬局のような所に案内されたので、子供用と書かれた青い歯ブラシを手に取る。
ついでに歯磨き粉も買っとけというので、イチゴ味のものを同時に購入した。
買い忘れはないかと確認されたので大丈夫だと答えるとんじゃ帰るか、と言って来た道を戻り始める。
ちらっと腕時計を見ると時計の針はもう10時を差していた。
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