キミとのセカイ1



※「キミとのセカイ」はアルヴィンとジュードを中心とする完全なるパロディです。
 また、年齢設定がジュードが10歳・アルヴィンが21歳と公式の設定より5歳ずつ若くなっております。
 アルジュというより、(特に最初のほうは)年齢的にもアル+ジュのほうが近いと思います。
 物語の進行スピードは亀並みに遅いです。
 それでも大丈夫な方のみご覧ください。











僕が病院に着いた頃には、もう両親は帰らぬ人となっていた。
誰もいない病室で二人はベッドを並べて静かに横たわっている。
いつも忙しくて厳しくて、めったに会話などしない父だった。
そんな父を常にサポートしていた母の作った料理なんて、記憶のある中では数回程しか食べたことはない。
たいして一緒にいたわけじゃないし悲しくなんかない、そう思っていたのに、気がついたら頬を伝って涙が地面に向かって零れていた。
僕は本当に一人ぼっちになってしまった、そんな思いが胸中を支配している。
「いってらっしゃい」も「おかえりなさい」ももう言えないし、「いってきます」も「ただいま」も二度と聞くことは出来ない。
実際そんな言葉、言ったことも聞いたこともなかったけれど、一度くらい言えばよかった、と後悔してももう言う相手はいないのだ。

「貴方がジュードさん、ですか?」

突如そんな声が自分の背後から聞こえた。
涙を止めようと目を手の甲でごしごしと擦って振り返ると、戸口の近くに立って一人の老人がこちらを見ている。

「…はい、そうですけど……貴方は、誰ですか?」

涙を我慢しているからか、途切れ途切れで掠れた言葉しか出てこない。

「これはすみません、ご挨拶が遅れてしまいました。
 私はローエン・J・イルベルト、ローエンとお呼びください。」

「ローエン、さん…」

呟くように名前を呼ぶと、ローエンと名乗った男はゆっくりと歩いて自分に近づいてきた。
後ろで一つに結われている白くて長い髪がゆらゆらと揺れている。

「はい。
 私は貴方のお父様と生前懇意にしておりました。
 …聞けばジュードさんは頼る親戚もなくお一人だとか。
 そこで提案なのですが、もし宜しければ私と一緒に暮らしませんか?」

突然とんでもない提案をしてくる老人にビックリして思わず目を見開く。

「え?で、でも…僕は貴方のことを全然知らないし、それに…そんなことまでして貰う理由がわかりません」

「実は私は以前ディラック様に命を救って頂いたご恩があるのですよ。
 それから親しくしていただいておりまして…あぁ、ジュードさんのお話も度々お聞きしました」

「ぼ、僕の話?」

あの父が僕の話を誰かにしていたなんて信じられなかった。
でも目の前の老じ…じゃなくてローエンさんは優しそうな笑みを浮かべながら自分を見ている。

「はい、それはもう色々と。
 自分が口下手なせいであまり会話が出来ないと相談されたこともありました。」

「…あの父が…そんなことを……」

横たわる父と母のほうを向いてその顔を見つめる。
堪えられない涙が溢れ出てきたのがわかったけれど、今度は止められなかった。

「と…父さん……か、あさん………ひっく…うわぁぁぁん」

ローエンは僕の前でしゃがんで膝をつくと、泣いている僕の頭にそっと手を伸ばしてくる。
そして優しく撫でながらもう片方の手で僕のことを抱きしめた。

「大丈夫です、私がいます…何も心配いりません」

そう言って僕が泣き止むまで胸を貸してくれた。
僕はそんなローエンの言葉に、ただただ頷くしか出来なかった。


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