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学食に入ると案の定、席は大半が埋まっていた。
緑成学園の生徒はほとんどが学食で食事をする。一応各部屋にキッチンは備え付けられているが、朝と夜は寮の食堂が解放されているのでそこで食事をとることができる。昼食のためにわざわざ自炊をする奴など、入学してからほとんど見たことがない。食堂は全校生徒を収容できるよう、かなり広い造りになっているが、それでも空席を探すのはなかなか至難の業だ。
そんな人ごみの中で、一番奥、ぽっかりと空いた空間。

「今日は伊勢谷さま来られないのだろうか……」
「役員の方々は忙しいもんなー」
「あああ……柿島さま……」
周りからそんなささやきが聞こえる。食堂の隅に設けられたそこは、生徒会役員専用のVIP席だ。もっとも、役員にはさまざまな特権が与えられていて、その中にルームサービスなども含まれているからメンバー全員がそろって食事をとることは少ない。

おばちゃんからトレイを受け取り、うろうろとさまよう。早くしないと休み時間が終わってしまうし、なにより麺がのびる。
「席ないなー…千秋そっちは?」
「こっちも駄目」
「お、あそこ空いてるじゃん!おーい陽人、千秋、こっちこっちー!」
「あ、ばか、そこは生徒会の……!」
鳴瀬は食事の乗ったトレイを机に置いて、早く早くと手招きしている。そこは使用してはいけないのだと説明しようとした瞬間、周囲から黄色い歓声があがった。

「伊勢谷さまー!!!」
「……食堂では静かに」
知的な銀ぶち眼鏡を押し上げる姿に、近くにいた生徒が卒倒する。

「古崎会長ー!!!!」
「やぁ、こんにちは」
まるで物語の中の王子様のような、優しくにこやかな笑顔。

「柿島さまー!!」
「う、うっせーよ!黙れ!!」
一際異彩を放つ赤髪に、いくつも光るピアス。

「辻中さまー!!!!!!」
「…………」
声をかける生徒を一瞥し、俯く。

まさかの生徒会役員、勢揃いだ。


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