level_2

親衛隊長といっても、会長の意向でうちの隊は比較的穏やかだし、ミーティングの出席や生徒会の雑用手伝いの他に大した仕事はない。部活に打ち込んでいる生徒に比べたら、ずいぶん暇なものだ。
千秋と話しながら教室へ入る。
「そういえば聞いたか?」
「何を」
「うちのクラスに転校生が来るんだって」
……転校生か。いくら四月とはいえ二年生から入ってくるなんて、何か理由があるんだろうか。

「どんな子かな〜可愛い受けかな……それともイケメン攻め……」
「千秋、よだれ出てる」
黙っていれば可愛いのに、つくづく残念な奴だと思う。男に可愛いというのも変な話だが。

「おいお前ら席つけー、知ってるやつもいるかもしれんがこのクラスに転校生だ。よろしくしてやってくれ。入ってきていいぞ」
担任に声を掛けられて入ってきた、そいつは。

「もっさ……」

思わずそう呟いてしまうくらい、なんというか、異様だった。ぼさぼさの漆黒の髪に、古典的な瓶底メガネ。色白で小柄なだけに、頭の鳥の巣とのミスマッチがすごい。シルエットは完全にキノコだ。マッシュヘアと呼ぶには野性的すぎるだろう。初めてエイリアンを目にした時のような(もちろんそんな経験はない)クラスの雰囲気の中で、そいつは口を開いた。
「俺、鳴瀬奏!奏とか鳴瀬とか、好きなように呼んでくれ!よろしくな!」
ニッと笑った拍子に馬鹿でかい眼鏡がずれて慌てている。よほど目が悪いのだろう。

「あー……じゃあ、自己紹介はその辺で。席は、そうだな……森垣の後ろが空いてるからそこに座っておけ。はいHR終わり」
「わかりました!」
こちらへ近づく黒い鳥の巣に、歩く振動でまたずり落ちる眼鏡。
「森垣っていうの?下の名前は?」
「……陽人」
「ハルトか!よろしくな、陽人!」
差し出される手。なにこれ、どこの少年漫画?一応握り返しておく。

「いだっ!」
「あっごめん!俺、力の加減とか知らなくて、怪我とか大丈夫?」
「だ、大丈夫」

手が潰れるかと思った……見た目によらず力はあるらしい。なんとなくだが、このキノコが自分にとって良くないものを運んでくるような、そんな気がした。あくまで予感だが、俺のそういう時の勘は結構あたるのだ。


prevtopnext

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -