level_1

伝えられなくたって、想い続けさせてくれるだけでいい。
なんて、ありきたりな歌詞みたいなことを言うわけではないが、告白なんてする気はない。

俺とあの人は違いすぎる。
そう、思っていた。


「陽人、おはよう」
「おはよう」
俺はここ、私立緑成学園に通う至って普通の高校二年生。……否、「普通」ではないかもしれない。
何を隠そう、緑成学園は各界のVIPの子孫が集う桁外れのお坊ちゃん校。山の中にあるという立地と全寮制が関係してか、校風は良くも悪くも閉鎖的で、卒業する頃には人格が変わるやつもいるというのだから恐ろしい話である。何故、家柄も普通でこれといった特技もない俺がこの学校に入学できたのか、という話はひとまず置いておくとしよう。

「見ろよ、生徒会一行のお出ましだ」
男子のものとは思えない黄色い歓声が上がる先には、容姿端麗な数人の男たち。
緑成学園では毎年、生徒の投票で生徒会のメンバーを決める。早い話が人気投票だ。そんな風にして選ばれた人々がアイドルのような扱いを受けるのは当然で、メンバーに気に入られようと頑張る男子や、親衛隊に加入する男子、いじめをする男子……余談だが、緑成学園では同性愛者でない人のほうが少ない。

「ああ会長……今日も王子でいらっしゃる……」
俺の横でうっとりと会長を見つめているのは松下千秋。彼のお気に入りは会長のようだが、恋愛感情ではないらしい。以前問い詰めたら「恋愛じゃないけど、なんていうか……主食っていうか?萌えっていうか、うん、そんな感じ」と曖昧な答えを返された。そう言われてほっとした自分がいたのを覚えている。

何故なら。

「おはよう、森垣くん」

俺はこの人が好きで、

「……おはようございます、古崎会長」

親衛隊長だからだ。


――親衛隊規約その壱、隊員は対象に恋愛感情を抱くべからず。

prev|topnext

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -