三角関係的友情的親愛_14

足場の安定しない砂に苦戦しながら、来た道を引き返していると、突然奈津が声を上げた。
「あ、携帯……!」
「えっ?」
ポケットに入れていた携帯を落としてしまったらしい。よりによって、こんな真っ暗なところで。
「いつまで持ってた?」
「砂浜に降りた時は確かにあったから……」
「波打ち際まで行ってないから、海に持っていかれてはないはず」
とりあえず階段のあたり探してくる、と御影は小走りで駆けていった。悠樹は先程まで歩いていた道をもう一度辿り、奈津も数メートルの間隔をあけながら、その後をついてゆく。暗闇にある程度目が慣れてきて月あかりもある

とはいえ、物を探すにはかなり最悪の状況だ。沈黙の間に、波の音だけがやけに大きく響く。

「なんか目印になるものついてたっけ?」
「……大仏ストラップ……でも小さいから……。」
なんだそりゃ。ずいぶん渋いもんつけてるんだな。
「そんなのどこで買ってきたんだよ」
「悠くんが買ってきてくれたんだよ、中学の修学旅行で。」
「あー……」
そういえばそんなのもあった気がする。喜ばせようとか思ったわけではなく、何かないと可哀そうかな、という適当にも程がある理由で選んだのだが。御影が奈津のために高そうなお菓子を買っているのを横目に、たしかあれは400円くらいだったと思う。

「よくまぁ、大事にしてくれて……」
「悠くんがくれたから」
「……おお、そうか」
こんなとき、なんて返せばいいのだろうか。曖昧に返答を濁した。そんな悠樹を知ってか知らずか、奈津はさらに言葉を続ける。
「好きだったから、その時から」
「……うん」
「僕にとっては……宝物なんだよ」
「……はは……それはなんというか、逆に申し訳なくなってくるな」
じわりじわりと、追い詰められているのを感じる。


prevtopnext

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -