半宵_10

「どうする?」
まだ湿り気を帯びた髪に、微妙にサイズの合わないスウェットを着て数時間前と同じ言葉をかけられる。
「……なんでもいいっす」
目線は床から上げない。
「前に人からもらった茶、あるからそれでいい?」
「はい」

しばらくの後、電子ケトルが沸騰を知らせる音を鳴らし、目の前に湯気をたてたマグカップが置かれた。熱い香りが鼻をくすぐる。
「あちっ」
ひー、と顔をしかめる先輩だが、俺は相変わらずテーブルに手を伸ばそうともしない。
「……」
「……」
「……ごめんな」
その一言に先程までのことがよみがえり、かぁっと耳が熱くなる。

「ふ、風呂場で……」
「うん」
「あの、粗相したのは本当に申し訳ないと思っています」
「それは仕方なかったし、気にしてないから」
軽く頭を下げ、息をすってから、でも、と続ける。

「そのあとは……正直、なんか、理解に苦しみます、すいません」
最後、声が震えてしまった。


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