(1/5) 「シモン! 何やってんだ早くしろ!」 カミナの叱咤が飛ぶと同時に、ラガンは敵のガンメンによって地面ごと蹴り飛ばされる。 すでに涙目になっているシモンにヨーコが呆れてため息をついた。 「さっきは立派にやっつけてたじゃない」 「あんなのっまぐれだよ!」 「しょーがねェ!」 このままでは埒が開かないと判断したカミナが叫ぶ。 「天井開けろォ!!」 シェルターが開き、カミナはラガンから外に出る。シモンとヨーコは一体何をしでかすのが怪訝な表情でそれを見守っている。 「やいやいやいやい! 聞きやがれデカ面ども!」 ジーハ村でしたときと同じように、カミナはガンメン二体に啖呵を切ったのだった。 「あ……アニキ……」 シモンがうめき声を漏らし、ヨーコが呆れた顔をする。 「一度故郷を離れたからには!」 「どっどうしよう……アニキが……」 「しっかりなさいよ! あんた男でしょ!?」 「ひぃっ」 こうなったカミナは止められない。ラガンで無理やり引っ張ろうにも、肝心のラガンが動かないのである。 弱音を吐くシモンに苛立ったヨーコが怒鳴った時だった。 シモンが背負っていた少女がぽつりと喋った。 「……近い……」 「え?」 「縄。……ほどけ」 「あっ、ご、ごめん」 慌ててシモンは少女をくくりつけていた紐を解く。 自由になった少女はのっそりとシモンの背中から起き上がる。そして未だガンメンに文句を言っているカミナの元へと歩き始めたのである。 「ちょ、ちょっと!? 危ないわよ!」 ぎょっとしてヨーコが止めるも、少女は意に介した様子はない。ふらふらと危なっかしい足取りでカミナの隣に立った。 「ねぇねぇ尽くしの男意地! グレン団のカミナ様が相手になってやる! ……ってなんだァお前」 刀をガンメンに向けていたカミナは、突然現れた少女に怪訝そうに眉を潜める。 少女は相変わらずフードをすっぽり被っているので表情は全く見えない。 自分の口上を邪魔されたカミナは文句を少女に言おうとするが、少女のただならぬ雰囲気に思わず口をつむぐ。少女の周りの空気が変わった。少女のローブが風に煽られているかのようにはためく。 「……来い」 少女がぽつりと呟いた。 「ああん? おいガキ! 女は男の戦いに」 口出しするんじゃねェ、そうカミナが怒鳴ったが、目の前のガンメンが突然爆発した轟音で遮られた。ガンメンの後方からレーザーの如く飛んできた刀に突き抜かれたのだ。 「なっ……」 そしてその刀は少女の手に一直線に納まった。爆発の衝撃で少女の被っていたフードがとれる。 ――漆黒の髪に黄金の瞳。まだ幼さが残る顔立ちだが、刀を扱う動作は流れるようで無駄がない。刀は少女の身の丈ほどある大太刀で、硬いガンメンを貫いてきたのに傷一つついていない見事な刀だった。 三人が驚愕して少女を見つめる中、少女は刀を抱いてぱったりと倒れてしまった。 「お、おい……?」 カミナが少女を覗き込む。 「……腹……減った、あ……」 「――あ?」 少女は目を回していて、見計らったようにぐうぅ、と腹の虫が鳴くのが聞こえてきた。 「ふ……ふざけるなァ! 人間の分際で!」 もう一体のガンメンが激昂する。あっという間に仲間が倒されたというのに、それよりも空腹を訴える態度が気に入らないようだ。 カミナが刀をガンメンに向け、ガンメンがその大きな手を振り上げた時だった。 後方から銃弾が飛んできてガンメンの手に当たった。 「無事か! ヨーコ!」 「ダヤッカ!」 岩の陰から数人の武装した男たちがヨーコに手を振る。 「仲間か!」 「うんっ」 カミナがヨーコを見ると、ヨーコは頷く。そのヨーコの表情からして、よほど大事な仲間なのだろうと予測がついた。 ヨーコの仲間たちの集中攻撃でガンメンから煙が上がる。 「おのれ人間ども! この続きは明日だ!」 そう吐き捨てるとガンメンは踵を返して走って行く。 「情け無用! ファイヤ!」 走るガンメンの背中に銃弾の雨が降りかかる。ガンメンは痛がりながらも地平線へと走り去っていった。 |