(1/7) カミナが乗っ取ったガンメンとラガンが協力して敵を倒したその夜。 前代未聞のガンメンの乗っ取りをやり遂げたカミナを中心に、リットナー村はお祭り騒ぎだった。大きな戦力が加わり、これからの戦いが有利になることは喜ばしいことである。カミナの武勇伝に耳を傾け、笑い合い、大人も子どももこの時ばかりは地上での過酷な生活を忘れて騒いで夜は更けていった。 村の面々が寝静まり、聞こえるのは整備室からグレンやラガンを整備する音だけだ。マナは村の入り口から少し離れ、大きな岩の上に胡座をかいていた。白く発光する月や青白い星の群を眺めている。 「……なんだよ」 夜空を眺める視線はそのまま、マナは背後に忍び寄る気配に話しかけた。 まさか後ろを向いているのに気付かれるとは思ってもいなかったのだろう。――シモンはびくりと身を強張らせ、それから恐る恐るマナの隣によじ登ってきた。 「ね、寝ないの?」 「……その質問、そのままお前に返すよ」 「なんだか、寝れなくて……」 へへへ、とシモンは頭を掻く。 そしてマナと同じように無数の煌めきを放つ夜空を見上げた。 「アニキが、誉めてたよ。女だけど度胸があるって。……マナはすごいよ。オレなんてアニキがいないと何も出来ないのに」 膝を抱えて俯くシモンを、マナはちらりと横目で見る。 「ぼくを助けてくれたじゃないか」 「えっ?」 「腹が減って動けなかったぼくの、下敷きになってくれた」 「あ、でも、あれは……」 ジーハ村でのこと言ってるのだろう。シモンは夜空を眺めるマナの横顔を見た。 「ガンメンを見たのはあれが初めてだったんだろ? ――ありがとう、シモン」 マナが夜空から視線を外してシモンのほうを振り向く。 「あ、いや、あの……えっと……」 微かに微笑んでいるマナに、シモンは顔の温度が急上昇するのを感じた。マナから視線を反らして再び俯く。そこでふと気になったことを口にした。 「――マナはガンメン初めてじゃなかったの?」 「ん?」 「その、ガンメンを見ても慣れてるみたいだったから、地上で暮らしてたのかなぁって」 「まぁね」 「へえぇ、すごいなぁ……!」 「……そんなタイソーなもんじゃないよ、ぼくは」 「え?」 「眠い。――寝る」 「え!? こ、ここで寝るの? マナ、村に戻ろうよ!」 「めんどくせぇ。……寝られれば……どこだって、同じ……」 「……違うと思うよ……」 マナは岩の上にごろんと寝転がり、滅茶苦茶な持論にシモンが突っ込みを入れる。しかし時すでに遅し。横を向くマナから寝息が聞こえてきていた。 シモンは軽く息をついて、自らも岩に仰向けになった。ちゃり、と首から提げていたコアドリルが胸板の上で転がった。それを手に取って目の前に持ってくる。 ――だいじょうぶだ。 「……礼を言うのは、オレのほうだよ……」 ◆ 「立派になったね!」 「三つを合体させたんだとさ」 シモンとカミナ、マナが見上げる先にはカミナが獣人から奪い取ったガンメン――グレンが鎮座している。先の戦いで壊れた腕と足は補完され、カミナの乱暴な動きにも対応出来るようになったらしい。徹夜明けでも全く疲れを見せないリーロンが説明していた。 |