この手から零れていくような





「いま…なんて言った?」



まだ雪の舞う寒い季節。



近所とはいえ、一人で俺の部屋を訪れた雛ちゃんの言葉に、俺は耳を疑った。



「…お父さんの仕事の都合で、お引っ越ししなきゃいけないって…お母さんが…」



…雛ちゃんが居なくなる?


幼い頃から隣に居たのに。


憧れて仕方ない、大好きな家族を失ってから一年も経っていないというのに。



じわり、と雛の目が潤む。



「でも、米花町だからここから近いし…遊びにくるから……だから、…っ、」


「、雛ちゃん…」


耐えきれなくなった涙腺から、涙が零れる。



いつもそうだ。

泣いちゃいけない、と堪えようとするが、涙腺が脆いのですぐ涙が零れる。



(俺の前で我慢することねぇのに)





ぎゅっ、




「───っ、///!?」



「…いつでも会えるから、心配すんな」



きっと俺自身、顔を真っ赤にしていると思うが、雛ちゃんから見えてないから良いだろう。



「うん…っ、……ありがとう、快斗くん」



きゅ、と服の裾を掴む雛ちゃんが可愛くて。


寂しさに襲われる反面、ドキドキと煩い心臓の音が聞こえないか、内心ヒヤヒヤした。






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