小学校にあがってからも、よく快斗くんと青子ちゃんと一緒に遊んだ。 快斗くんはどんどんマジックが上手になって、青子ちゃんはいつも明るくて優しかった。 突然の訃報は9歳になった頃だった。 電話口でお母さんが黙りこんで、受話器を戻してからも涙を流して立ち尽くしていた。 お母さんに連れられて快斗くんの家に行くと、真っ黒な服を着たたくさんの人がいて、すすり泣く声が聞こえた。 彼は居なかった。 「快斗くんママ…」 「…雛ちゃん、来てくれたのね」 快斗の姿が見えなくなった、と千影から聞いた雛は公園に向かった。 (……居ない。) 一人でどこへいったのだろう。 (…そういえば、最近よく行くのは…) 秘密の場所を見つけた、と快斗が楽しそうに話してくれたのは、少し高いところにある、見晴らしの良いところだった。 家の近くだが、細い路地の先にあるので人通りがない場所だった。 「…快斗くん、」 景色を見ながら涙を流す彼が振り向く。 まだ明るいが、夕暮れで空が朱くなり初めていた。 涙目で自分を探しに来た雛を見ると、快斗は後ろを向いてゴシゴシと涙を拭う。 「、雛ちゃん………なんだよ。こんな、とこ……」 違う。 こんな言い方をしたい訳じゃない。 心配して探しに来てくれたのは解ってるけど、泣いてるとこなんか見られたくなかった。 (カッコ悪ぃだろぅが…っ、) 雛も、きっと涙目のまま。 俺の後ろで黙っている。 (あー、もう……っ、) 気を張っていても、俺だって涙を抑えられないのに。 散々泣いたはずなのに。 雛は背中を向いたままの快斗にそっと近づくと、涙を拭う反対の手を両手で包んだ。 「ごめんね、快斗くん……一人で泣いたら、もっと悲しいと思ったから…」 そう言われて快斗がそろりと振り向けば、雛も静かに涙を流している。 「───っ、」 あぁ、もう。 恥ずかしいけど。 今日くらいは、カッコ悪くてもしょうがねぇか。 ひとしきり一緒に泣いたあと、久しぶりに二人で手を繋いで家まで帰った。 幼い頃よく繋いでいた手は、お互い少し大きくなっていて、温かった。 戻る |