これこれの仲間。






俺は死んだ。
それは高校三年の暖かい春の日であったり、暑い夏の日だったり、寒い冬の日だった。俺は高校三年の一年間のどこかで、必ず命を落とした。
歩道に飛び出た子どもを庇う、鉄柱が脳天を貫く、他校の不良に絡まれる。どれも痛くて痛くて、化け物染みた身体なのに、何故かこんな時には指一本動かなくて、そして決まって最後には、泣き出しそうな臨也がそこに居て。



――また、ダメだった



気持ち悪いな、そんな顔するなよ、そう伝えたくても声が出ない。そして俺は長い夢から覚める。起きてしまえば夢は鮮明さを失ってしまう、それでも幾度となく繰り返す夢は、いつも臨也に看取られる自分で終わった。



「屋上でサボるなんて、ベタすぎない?」

「…………臨也」



臨也は何度となく繰り返したのだろうかわからない。けれど、俺も臨也も、卒業を迎えられずに延々と廻っている。今日はそう、卒業式の前日。予行演習。きっと今日、俺は死ぬのだろう。
折原臨也にとって平和島静雄が死ぬということは、これ以上ない幸運だろう。嫌いで嫌いで早く死んでほしいのに死なない化け物が死ぬんだから。それなのに、それを阻止しなくてはいけないだなんて皮肉すぎる。

ただ、俺が死ぬことで繰り返しを引き起こしているなら、俺が、何かに殺される事で命を落とす事で繰り返すなら。このループは、もしかしたら案外簡単に終わるんじゃないだろうか。でもそれには勇気がいるし、覚悟も要る。俺に出来るだろうか。



「俺さ、何度も何度も死ぬ夢を見てんだ」

「……へぇ、化け物の君がね」



微かに震えた臨也の声に、今までの薄れた記憶の臨也は勘違いではなかったんだと悟る。俺が死なないようにと運命の袋小路に迷ってしまった臨也。ごめんな、ずっと一人で、闘っていたんだろ。



「俺……。頑丈だから死ぬわけないのに、何度も死んで」

「…………」

「痛くて冷たくて痛くて、ただ、それ以上にお前がいつも泣きそうにしているから」



今みたいに、泣きそうに歪んだ臨也の表情は、いつも夢で見ていた表情だった。が酷く情けない表情をしていた事に気付いた。色々と考えては居たけれど、言葉にするとシンプルだった。謝罪と、感謝を。



そして、俺は死んだ。
俺が何らかによって殺されるなら、その前に自分で絶ってしまえばいいんだ。屋上のフェンスは立て付けが悪くなっていたという事になっていたから、予め負荷をかけておいた。役目を放棄したように見えるフェンスと共に落下する俺は、不思議と悲しくはなかった。



大丈夫、明日はきっとくる。

卒業おめでとう、臨也。









在る運命打破の話
(そして目覚めたのは、)