×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


31


銀さんがポトフ食べてる。うまい?って聞いたらうまいって返ってきた。

「そりゃ良かった」
「お前が作ったわけでもねえだろ」
「正解」

ポトフって良いよね。次の日にカレーにもシチューにも出来るし。したことないけど。
自宅で昔作った時は、圧力鍋の便利さに感動した覚えがある。玉ねぎがとろとろに溶けてて美味しかった。懐かしいなあ。帰りたい…のかは分からない。自宅には、帰りたくない、ような気がする。友達には、会いたいと思わないわけじゃない、けど。でも誰に会いたいの?って聞かれると困る、というか。一緒にいて楽しい人はそれなりにいたけど、その人がいないと生きていけないわけでもなくて。だからなんというか、この居心地のいいところを手放しても会いたいか、と聞かれると悩む、し、わからない。
でも、帰りたいと思っても、思わなくても、どうせ帰り方が分からないんだから、帰らないという結果は変わらない。だから、どっちでもいいよね、って思うんだけど。どうだろう。だめかな、そういう思考の停止。
もし、死んだら帰れるとしたら、どうするだろう。分からないけど、死んだのに死ねないっていうのは嫌だなあと思った。

「私が死んだら、私のこと忘れてくれますか?」
「うーん、時と場合による」
「…いいですね、それ」

時と場合による。いい言葉だ。そりゃそうだ。完全に記憶から抹消することはできないし、四六時中思っているなんてこともできやしないのだ。時と場合による。嘘のない感じ。


prev next
back