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銀さんがもう寝る、お前も寝ろと言うのでのそのそと押入れに戻る。全く眠れない。当たり前だ、もともと眠れなかったうえにコーヒーまで飲んだんだから。
眠れないのに目をつぶってじっとしていることが苦痛になってきて、とりあえず押入れから出ることにした。居間のソファに座る。落ち着かない。外に出よう。
深夜のかぶき町は明るく、星はちっとも見えない。それでも、夜の空気はなんとなく好きだった。暗いと落ち着く。誰にも見られてない安心感というか、誰も自分に関心がないとほっとするというか。
別に誰にも一生関心を持たれずに生きたいというわけではないのだけど。だからこそ厄介だ。繋がりが欲しくならなければ、きっともうちょっと苦しくない。
繋がりがちょっとは欲しくて、でも基本的に一人でいたい。一人でいて寂しくなってきたら誰かのところに行って、そんでまた一人になりたい。厄介だ。いっそのこと他人なんて必要なくなってしまえばいいのに。
近代的な江戸時代は、しかしメインストリートから離れるとやはり暗くて、月明かりを頼りに歩いた。月明かりでも、影ができること。自宅近くの林の中を夜歩いた時に、初めて月影を見た時は感動したのをよく覚えている。月明かりでも影ができるなんてことを、現代の私たちは知らずに生きてる。失ったもの。得たもの。必要なもの。いらないもの。

そして、気づくと、後ろに、人影。月明かりに反射した、刀を持っている。何か言っている、言っているけど、声が聞こえない。鼓動が、うるさい。体が震える。これが、死の恐怖、だろうか。怖いのか?自殺しようとしてたのに?
命は、私の命は、一つしかない、一つしかないけれど。必要なものだろうか?それとも。


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