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24

眠くなってきたけど、銀さんがまだ居間にいたので、今日はソファではなく押入れで寝てみることにする。横になってみると、身長が高くない私には十分な広さだった。目を閉じる。
…寝れない。さっきまで眠かったのに、眠気がどこかに飛んでしまった。目を閉じてしばらくじっとしていると、銀さんがお風呂に入る音がした。まだ寝れない。仕方ないので、古典的に羊を数えてみることにする。羊が1匹羊が2匹。柵を飛び越えている羊は、逃げ出しているのだろうか、帰ってきているのだろうか。なんとなく、集団逃走中ということにしてみる。自由への逃走。閑話休題。
346匹めで、銀さんがお風呂から出てきた音がした。1000匹逃げ出して、諦めて押入れから出た。

「寝れない」
「ふーん」

銀さんは、ソファでチューハイの缶を飲んでいた。そういうのも飲むんだ。
それにしてもふーんって。もう少し関心持ってくれても、なんて。アホか。勝手に知ったような気になって親しみを感じてたけど、向こうからしてみれば私は会って数日の、自殺しようとしてた人間だ。そんなの関わりたくない人間トップ10にランクインするわ。
カンという軽い音がして、チューハイが机に置かれる。台所に向かう銀さん。まだなんか飲むのかな。
アルコールを摂取したら眠れるだろうか。 前にちょっとしたヤンチャでワインを飲んだ時は、あんまり寝付けなかったのを覚えている。次の日は酷い二日酔いだった。

「ほら」

ぼーっと突っ立っていた私の目の前に差し出された湯飲み。その中の濃い色の液体。

「コーヒー」
「え、コーヒー?」
「貰ったんだよ、インスタントのやつ」

私に一つを押し付けると、自分の分らしいもう一つの湯飲みを持って再びソファに座った。湯飲みにコーヒー。合わない。

「なんで、コーヒー。カフェイン摂ったら余計眠れなくなるじゃないですか」
「ごちゃごちゃ言ってねえで、黙って飲め」

銀さんの向かいのソファに移動して、斜め前に座る。一口飲む。あったかい。

「ありがとうございます」
「おう」

この、温度が食道を通って、お腹まですとんと落ちていく感じ。銀さんは、コーヒーを苦そうに飲んでいた。そういえばブラックだ。牛乳でも砂糖でもぶちこめばいいのに。馬鹿なんじゃないかと思った。

馬鹿だ。馬鹿みたいにお人好しだ。

あったかい。苦い。温もりが、私を満たして包み込む。口の中だけが、ただ苦い。


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