23
お風呂から上がって、着替えがないのでさっきまで着ていた服を着直す。せめてあと2着は着替えが欲しい。
ガラガラガラ。玄関の戸が開く音がする。一瞬警戒したが、銀さんが帰ってきたようだ。漫画の感じからして、帰ってくるのは朝か、早くても夜中だと思ったのに。
「ほらよ」
投げられたものを慌ててキャッチする。歯ブラシだった。スーパーのビニール袋を提げているところを見るに、わざわざ買ってきてくれたらしい。優しい。けど、もう歯磨いちゃったよ。
プシュッ。缶を開ける音がして顔を上げると、銀さんが喉を鳴らしてビールを飲んでいた。これを買いに行ってたのか。宅飲みしたかっただけかもしれない。
「ありがとうございます」
「ん」
例えついでだったとしても、気まぐれの優しさが嬉しくてお礼を言った。
興味本位で、銀さんがテービルに置いたビールを一口飲んでみる。うわっ。
「苦っ」
「お子ちゃま」
「にがー、よくこんなもの飲めますね」
「大人だからな」
よく言うよ。ニートのくせに。
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