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お登勢さんに酒をたかる銀さんを置いて、一人で二階に戻った。ギョウザを食べた後なので、歯を磨こうと思う。
「あ」
歯ブラシ、なかった。馬鹿だ。さっきスーパー行った時買ってくればよかった。洗面所のそれっぽい戸棚を勝手に漁って、予備の歯ブラシを探してみる。あった。意外。
本当はブレスケアが欲しいけど、贅沢を言ってもしょうがないのでとりあえず歯を磨く。歯ブラシの予備は、今度買って返そうと思う。
「おう」
銀さんがいつの間にか帰ってきていた。お酒に弱いはずなのに、それほど酔っているように見えない。お登勢さんに追い出されたのかもしれなかった。
「借りました」
「何を」
「歯ブラシ。予備の」
「あったっけ、そんなん」
「見つけました」
「ふーん」
鼻をほじりながらの返事。興味なさそう。返さなくても忘れてそうだ。いや返すけどさ。
「お風呂も借りてもいいですか」
「入りたいんなら、ドーゾ」
「大丈夫です、狼さんには気をつけますから」
「言っとけ、アホ」
そう吐き捨てると、そのまま家の外に出て行ってしまった。調子乗ったな。怒らせたかな、と思ったけど、居酒屋とかに飲み直しに行くだけだろうと思い直した。
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