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12

「はい。死にます」
「あー、あのさ、そこの目の前のパチンコ屋、俺の行きつけなんだわ。別のとこにしてくんね?」
「はあ。すみません。じゃあ」
坂田銀時と会話してしまった。もしこれが寝てる私の夢なのだとしたらイタすぎる。
あれ。でも、洋装の上に派手な着流しを羽織ったいつものスタイルじゃない。地味な着物一枚だ。なぜだろう。まあいいか。
「あ、待て」
「え」
「えじゃなくてさ。ちょっと確認してえんだけど」
「嫌です」
「お前、最後に話したのが俺だからって化けて出たりすんなよ?別に怖いわけじゃねえけど」
そういえばこの人極度の怖がりだったな。自殺した女の幽霊なんて、そんなの王道じゃないか。髪も長いのでぴったりだ。白い着物を用意するべきか。
「幽霊には、ならないと思います。そんなものになったら、自殺する意味なくないですか」
「まあ、確かに」
一応は信用してくれたのだろうか。
二次元のキャラと会話したら、もっと興奮するものかと思ったが、現実感がなく実感もない。金閣寺を初めて見たときに似ている。こんなものか、と。
「あ、あとさ、」
「なんです」
「お前自体がそもそも幽霊だったりとか、しないよね?」
「…え」
そう言われてみれば、その可能性がないわけでもない。でも処女喪失したし。なんだその根拠。少なくとも私は、自分が幽霊でないことの証明はできない。しかし、それを目の前の怖がりな男に言う理由も特にない。
「幽霊って、自殺するんですか?」
「いや、知らねえけど。聞いてみたことねえし」
そりゃそうだ。
「あ、雨降ってきた」
夕暮れから怪しい雲行きだった天気も、どうやら我慢の限界らしい。さっきから顔に水滴が当たると感じる程度だった雨が、どっと強くなってきた。
「お前、家近い?」
「え、いや、全然」
私、世界的な迷子なんです。なんて。
「チッ。仕方ねえな。おい、転ぶなよ」
「え、は?」
突然腕を捕まれて走り出された。今日は走ってばかりいる。


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