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それからは、あのデカイ奴が壁を蹴破って、小さめの巨人(意味がわからない)が、壁の中に流れ込んできた。私は、呆然として私以外の気色悪い生き物が人間を食べるのを見ていた。これほど大きな生き物が、人間を捕食しているのは見たことがない。一匹の巨人が、私の方に手を伸ばしてきた。もちろん、自分が食べられる側に回ることも今までなかった。足がすくむのは、恐怖なのだろうか。圧倒的な大きさを誇る捕食者に対する?冗談じゃない。

「ははっ、化け物のくせに」
なにビビってるんだか。

巨人が私を掴み、口元まで持って行こうとする。勘違いすんな。

「食物連鎖の頂点はお前らじゃねえよ」

赫子を出して巨人の手を粉々に吹っ飛ばしてやった。それから、周りを見て、目撃者となるような人間を殺す。そいつの腕を赫子の燃料代わりに頂戴してから、家の屋根の上に登った。なんだっけ、うなじの…なんか細かいメートル数が決まっていた気がするけれど、そんなもの覚えているわけがない。適当に抉りまくったら蒸発して死んだ。

「ばーか」

気分が良かったので、塔の上に行って高みの見物を決め込む。別に巨人を殺しに行ってもいいのだが、それを目撃した人間に生き残られると面倒だ。だからと言って人間たちと一緒に逃げようとも思わない。だって、もうすぐここは食べ放題のバイキング会場になるのだ。避難できる人間がいなくなれば、過去最高のご馳走が待っている。巨人もなかなかいい働きをしてくれるじゃないか。

見ていると、ワイヤーのようなものをつけ、剣もしくは薔薇のマークが背中についた制服を着てひゅんひゅん飛んでいる奴らが巨人を殺そうとしていた。あれ、もしかしてあれが調査兵団…?だとしたら半端ない幸運である。でもどうしよう。この状況で「調査兵団ですか、チビな人類最強いますか」って聞きに行ったら流石に空気読めなさすぎだよなあ。だからと言って探しに行くのも、探すのはいいが巨人と目撃者を殺さなきゃいけないのが面倒だ。でも、この間にあいつが殺されてたら…なんて。
臭いで探そうか。人間にも巨人にも見つからないように歩くのは面倒だけど。特に人間。調査兵団の人たちに目をつけられないように慎重に隠れながら歩かなければならない。避難するふりして走り回ってたらいいかな。それで誰かが助けてくれちゃったりしても厄介だけど…。
とりあえず、あいつの臭いを探して壁の上を歩くことにした。地上を歩くよりは見つかりにくいだろう。
次々と食べられていく人間たち。ああ、私のごはん…食べ方汚いし…。あいつらのおこぼれだと思うとムカつくが、食べ残しは後で綺麗にいただくことを決意した。できれば保存用に干し肉とかにもしたいくらい。特にもも肉が好きだ。人のももの干し肉。何食べてるかバレなさそうでいいね。本当にやろうかな。
そういえばこの世界にコーヒーつてあるのか。ないなら死活問題である。うーん、コーヒー豆以外の豆から作ったコーヒーって、喰種飲めるのかな。試してみたいけれど、当たり前だがそんな技術はあいにく持ち合わせていない。
話が逸れた。ちびを探そう。臭いはしないし、声で探そうにも声変わり後の音がわからないので探しようがない。仕方なく、視覚に頼って黒髪のチビを探している。黒髪の巨人ならそこそこいるんだけどなあ。見ると、黒髪の巨人が他の巨人と戦っていた。へえ。あいつら、デカブツ同士で争いもするのか。ますます知能が低いな。いや、人間に近いと言えばいいのか。この世は馬鹿ばっかりだね。

「ん…?」

巨人同士の喧嘩を、見るともなしに見ていたら、倒れた黒髪のデカブツの首から人間が出てきた。なにゆえ?
耳をすませると、エレンと呼ぶ女の子の声がする。エレンって…主人公じゃなかったっけ?…うーん。もう少しちゃんと漫画を読んでおけばよかったかもしれない。
仕方ない。こんなことになるなんて、思いもしなかったのだ。忘れたかったんだから。
そう、たぶん、私がこの世界にいるのは、陳腐な言葉で言うのなら「奇跡」というやつで。間違えようのない、チャンスなのだ。
いてもたってもいられなくなり、私は走り出した。どこに向かってるのかも分からないまま。どこに行けばいいのかも分からないまま。

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