ささやかな話し声で、目が覚めた。どうやらぼーっとしている間に眠っていたらしい。警戒心ないなあと、ほんのり自分に呆れた。
それにしても。話し声ということは、ちゃんと人間のいるところなのか。それは一安心だ。人間がいて良かったと言うより、食料に困らなさそうでよかったと言うべきか。例えるなら、食べられそうな植物が生えていて良かった、みたいな?いや別に例える必要もないんだけどさ。私喰種だし。
さてと、これからどうしようかなあ。さっき食事をしたばかりだから、腹を満たす必要はない。…やっぱり、探すべきなのか。でもなあ。
もしかしたら、というか、もしかしなくても、その辺の誰かに聞いてしまえば一瞬で分かるかもしれないんだけど。年齢によっては、探し人は有名人だ。彼がいま何歳なのかは知らないが、まだ少年もしくは青年だとしてもここは地下なのだからやっぱり有名人という可能性もある。勿論、全くの見当違いでこのよく分からん現象に彼は全く関係ないという可能性もある。だから、その聞いて、事実を知るという行為にめっちゃびびってるわけだけども。
だって、どこか遠くでって願ったんだよ。無力な私は、もうなにもできないからって諦める覚悟を決めたのに。なんで、なんで今更
「なんで今更になって掻き乱されなくちゃいけないんだよッ!!」
あー、なんかもう、腹が立ってきた。そうだよ!もう何ヶ月も前に諦めて、部屋も心も整理したの!それをなんだよ今更!
「ああ!もう!」
とにかくイライラして、床を思いっきり殴りつけた。
あ、痛い。
その痛みで、頭が一回真っ白になって、訳の分からない怒りからも目が覚めて、なんで怒ってるのかわからなくなってきた。なんでこんなにうじうじしてるのかも、なんで立ち上がりたくないのかも、なんかもう全然わからなくなってきた。
馬鹿なんじゃないか私。
試しに聞いてみればいいじゃないか。リヴァイって知ってる?って。
私は私の中のリヴァイを殺した。それが生きているかもしれないという可能性が出てきたのだ。喜ぶべきじゃないか、ねえ?
そうでしょ?肝の小さい化け物さん。
何かに突き動かされるように立ち上がると、ヒトの気配を探して駆け出した。
見つけた。
感情が高ぶっていた私は、その見つけた細っちいヒトの腹を蹴飛ばしてから聞いた。
「こんにちは、リヴァイって知ってる?」
今の時間がわからないので挨拶に困ったが、困った時の「こんにちは」
だ。
割と本気で蹴ってしまったので、どうやらすぐには喋れなそうだった。やっちまったてへぺろ、と思いつつ落ち着いてしばらく待つ。
「いきなりなんなんだよッ…!」
「いいから早く答えてほしいな」
落ち着いて、と決意した12秒前を放り出してそいつの腹の上に足を乗せながら促す。そんなに力を入れてはいないのだが、さっきの蹴りが効いたらしく今度は素直に答えてくれた。
「…リヴァイって、調査兵団のか」
ああ、ほら。馬鹿みたいに簡単なことじゃないか。
別に食べたかったわけでもないし美味しそうでもなかったのでそいつを捨て置くと、私は歩き出した。
まあ、どこに向かって歩くべきなのかなんてちっとも分かっちゃいないんだけど。なんとなく直感で。
今度こそは。
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