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「総員撤退!巨人達が女型の巨人の残骸に集中したいる内に馬に移れ!荷馬車はすべてここに置いていく!巨大樹の森、西方向に集結し陣形を再展開!カラネラ区へ帰還せよ!」

あら、帰るのね。今回の目的はあの巨人を捕まえることだったのか?それも失敗に終わってるけど。そもそもあの巨人はなんだ?こんなことなら漫画をもう少し読み込んでおけばよかった。

「俺の班を呼んでくる。奴ら、そう遠くに行っていなければいいが…」
「待てリヴァイ。ガスと刃を補充していけ」
「時間が惜しい。十分足りると思うが…なぜだ?」
「命令だ。従え」

なんなんだこの雰囲気。そもそもこいつら、どういう関係なの?部下と上司であることは分かるが、よく分からない。それだけではない気がする。

「…了解だ。エルヴィン。お前の判断を、信じよう」

…信じよう、ね。
あいつが補充をするために立ち去ると、クソジジイがこちらを振り向いた。

「君も向かってくれ」
「そりゃどーも。…私はお前のことなんか信じちゃいねえけど」
「構わない。君の目的は一つだろう?」

…チッ。いちいち腹立つ野郎だな。地獄へ落ちろ。

あいつを追いかけ森の中を駆ける。立体機動で。向こうも勿論私に気づいていただろうが、特に何も言われることはなかった。クソ団長の指示が聞こえていたのかもしれない。

そして、美味しそうな、におい。
私にとって「美味しそうなにおい」が何を意味しているのかは明白で。数は全部で4つだろうか。その中に、嗅ぎ慣れたにおいが一つあった。
行くな、とあいつに言いかけて、口を閉じた。言う権利も、理由もなかった。それに、私が言っても止まることはないだろう。どうせ見ることになる。見なくてはいけないものだろうから。
私はそこに近づかなかった。だって、いくらそれなりに関わりのあったグンタだって、それはもう、餌だ。飢餓感に襲われるほどの空腹なではないが、満腹でもない。
だから、仲間を失ったあいつの顔も見ていない。その時、どんな顔をして、何を思ったのか私には分からない。私に分かるのは、その死体を口に入れたら、きっと私の腹と舌を満たすのだろう、ということだけ。死を悼むという感情は、随分前からよく分からない。

あいつがそこから動いた音がして、私も立体機動のガスをふかした。死体を見て目が変わらない自信がなかったので、大回りして追いかける。ああ、先回りしておけばよかったな。頭が良い奴なら、こういう判断も間違えず素早いんだろう。

あいつは、例の女型の巨人を追っているようだった。じゃあ、あの人達を殺したのもあの木偶の坊かな?どっから湧いて出たんだか。そういうのを考えるのは私の仕事じゃないけど。周りを軽く見て、誰の目もないことを確認して速度を上げた。

頭を回転させて良い判断を下すことはできないけど、運はあったらしい。その、速度を上げた行為により、私はちゃんと追いつくことができた。

巨人に向かって行く、あいつの背中。

まだ、手は届く。

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