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「リヴァイ!!」

女の子を庇い、巨人の腕を蹴り上げようとしたリヴァイの足が明後日の方向に曲がり、そのまま巨人の腕に吹っ飛ばされるところまで、スローモーションに見えた。
このままだと、木に、叩きつけられる。
立体機動装置を使うのも忘れて駆け寄り、肩に抱え上げそこから飛び退く。巨人の腕は木の幹を殴りつけていた。危機一髪、というやつだろうか。

「離せッ!」

肩に担いだリヴァイが、膝で私の鳩尾を狙ってくるのを手のひらで受け止めて防ぐ。自分の怪我を顧みず暴れるその体に、仕方なく一発入れて意識を沈めた。
そしてそのまま、リヴァイを傷つけた巨人の左腕を、赫子で粉々に吹っ飛ばした。次はうなじだ、デカブツめ。

「チッ…クソが」

しかしうなじに刺さらない。普通の巨人よりも固くできてるらしい。ならば。さっきのリヴァイの真似をして全身に傷を入れていく。目を潰すといいんだっけ?目玉をくり抜いて、捨てるのも勿体なくてそのまま口に放り込む。
ああ、なんだ。

「おいしいじゃないか、お前」

やはり普通の巨人とは違うらしい。さっき粉々にしなかった方の、右腕の指を切り離し口に入れる。その濃厚な味わいに、全身の血液が煮えたぎった。
いける。
頬を削り取り口に入れ燃料を確保しつつ、うなじを目指す。赫子を突き立てると、今度こそ刺さった。で?具体的にどの辺を削ればいいんだっけ?忘れちゃったから全体的に抉り取る。ついでに齧りついてみると、あら不思議。指より美味い。抉りがら腹を満たしていると、今までとは比べ物にならないまろかやで深みのある味わいが口の中に広がった。自分がかじっているものをよく見てみると、それは人間の腕だった。

「うん?」

どうやらこの中には人間がいるらしかった。そう言えばさっきそんなこと言ってたな。忘れてた。
人体を食べたくなるのを抑え、赫子を差し込んでゆっくりと取り出す。そこにいたのは、金髪の女の子だった。

「うわっ」

巨人の体が突然熱くなり熱風に煽られる。落ちる。これはまずいとリヴァイを担ぎ直すと近くの枝に着地した。ていうかこいつ重い。

「エレン!」

あ、リヴァイに庇われてた子。いたんだ。完全に存在を忘れてた。その女の子が巨人の口に向かっていくと、中から男の子、おそらく主人公くんを取り出した。なにこれ、どういう状況?女の子が未だ熱風を撒き散らかす巨人の体から主人公くんを担いで撤退する。
そのまま眺めていると、巨人の体は徐々に骨へと変わっていった。ああ、肉が。もったいない…。
そして視界がクリアになり、そこに現れたのは女の子とそれを包む巨大な水晶のようなものだった。なんだこれ。
人が集まってくる気配がして、赫子をしまう。人間の中に金髪のクソ団長がいるのが目に入り、そっと身を隠した。状況説明は女の子がしてくれるだろうし、そしたらクソジジイがなんとかしてくれるだろう。

「はあ……」

最初はリヴァイを傷つけられた怒りだったのが、途中から完全に食欲に囚われていたことに吐き気がする。変わらない。忘れてはならない。喰種は、欲望に忠実で、理性のカケラもない。そういう浅ましい生き物だ。
人間とは相入れない。いくら強くたって、誰かを正しく守ることすらままならない。
私は、生まれた瞬間からずっと、化け物なのだから。

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