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しかし、一向に「今度会った時」は訪れず。あれから命を狙われることはなかったが、話をする機会も全くなかった。避けられている。それもリヴァイ班とのクンレンが始まったというのに、だ。徹底してやがる。
その代わり、グンタ以外とのリヴァイ班と話す機会が増えた。私が調査兵団に接触したあの日のことを見ていない人間からは、「上層部しか知らない特殊な事情のある隊員」と認識されてるらしかった。当たり前だが、主人公くんは近づいてこない。そもそも近づかせてもらえないっぽい。わたしがリヴァイ班と行動する日は、主人公くんは一緒にはいなかった。まあね、大事だもんねその子。
オルオ・ボザドとペトラ・ラルは好奇心が勝ったのか頻繁に話しかけてくる。エルド・ジンは微妙。あの日のことを見ていたのかもしれない。
久々に、会話というやつをしたような気がした。コミュニケーション。喰種だって、化け物とはいえ意外と社会的な生き物だ。他者との関わりは、心を満たす。ましてや、ここには私を殺そうとしている敵はいないのだ。あいつ以外。たわいない雑談が、楽しくないと言えば嘘になる。悪意なく話しかけてくる人間に、多少の親しみを感じるのは仕方のないことだと許してほしい。

そして、壁外調査の日がやってきた。初めて出た壁外に、当然のように何の感慨もわかず。ていうかここもまだ壁の中なんでしょ?すげーなー、でかいなー、って感じに馬に乗ってるなう。この馬、大抵のことにはビビらない素直ないい子ちゃんだ。かわいい。
何でも今回の目的は「行って帰ってくること」らしい。イマイチやる意味が感じられないが、きっとお偉いさん方の脳内では私には考えられないような思考が飛び交っているんだろう。肉体派の脳筋には理解できない領域の話だ。
今回の私に課せられた任務は「団長のそばにいてひたすら団長の命令に従う」という、脳筋に非常に優しい低レベル仕様。なるほど、単純明快に不愉快である。もちろん抗議をしたが、言いくるめられてしまった。これでもしあいつが死んだら本当に人類滅亡させてやるからな。
その上、あいつがこの作戦でどこの場所で何をしているのかも教えてもらえない。信頼されてないのは当たり前にせよ、頭にくるね。だから私も、別に懇切丁寧に教えてもらわなくてもニオイで居場所くらいは分かる、なんてことは黙っていることにした。
馬に乗りながら、いろんな色の煙が各地で上がり、それに対して団長殿がいろいろ指示してるのをぼんやり眺めていた。右翼が壊滅?大変だね。それでも撤退はせず進むらしい。やっぱり「行って帰ってくることが目的」なんて嘘なんじゃないか。頭のいい奴の考えることはわからん。

「後方に伝達してくれ。これより中列・荷馬車護衛班のみ森に侵入せよ、と」

そしてあり得ないくらいにデカい木が生えた森へ進んでいく。なんだこの木は。縄文杉もびっくりの大きさだ。実はこの世界、巨人が大きいんじゃなくて人間が小さいんじゃないか?要はアリエッティ。向こうが大きいんじゃなくてこっちが小人なんだ。いや真実なんて知らないけど。自分を基準に考えるのなら、私達からしたらあいつらは巨人だしあいつらからしたら私達は小人なんだろう。ただし私に限りヒトではないが。

ある程度進んだところで、止まれとの指示。そして後から来た荷馬車を続々と道の中央に向けて立て始める。何やってんのこいつら?意味わからないなと思って眺めていると「馬から降りて木の上で待機していてくれ」とのご命令が。はいはいわかりましたよと言いたいのをぐっとこらえて「了解」と返事をする。そのまま普通に登りかけて、やべー私今人間だったんだということを思い出し大人しく立体機動装置を使った。これだから脳筋は。なんのためにクンレンしたんだよ。

どうやら仕掛けが終わったらしく、団員たちが持ち場らしきところに着く。うーん、罠なのかな、これは。なにを捕まえようとしてるんだか知らないけど。これを私にこの位置で見せているのは、お前もいずれこうしてやるよっていう見せしめか?それとも人類は意外と強いんだぞっていう脅し?そんなことしなくても別にあいつの身に危険が降りかからない限り変なことしないのに。まあ、ただ単に駒の一つとして利用されてるだけかもしれないけど。

「進め!!」

そしてものすごい足音とともに、あいつと主人公とグンタその他諸々が馬に乗って現れた。その後ろの、とてもいいフォームで走るボブヘアの巨人。いい筋肉してるね。どうやら罠にかかる子ウサギちゃんはその巨人らしかった。確かに明らかに他のデカブツどもとは違う雰囲気を纏っている。

「撃て!!」

団長殿が叫ぶと、ドドドドッというけたたましい音とともに荷馬車からワイヤーのついた針のようなものが発射された。それらはあの巨人の体に突き刺さり、身動きを封じる。うへえ。自分があれをやられることを考えてみる。あの針みたいなやつの強度によるかな。でも一部始終を見てたわけだし、同じことを私にもやるほど馬鹿じゃないよな?一つわかるのは、人間相手とは言え慢心してるとやばいってことだね。
見ていると、あいつともう一人男が巨人に攻撃を仕掛け始めた。うなじの中に人間がいるらしい。それを取り出したいんだって。ただ皮膚が硬く刃が通らないらしく、作業は難航している。諦めて違う方法を試すらしく、攻撃は止まった。あいつはひらりと巨人の頭に着地すると、滔々と話しかけ始める。

「おい…いい加減出てきてくれないか?こっちはそんなに暇じゃないんだが」

なんだこいつ、化け物に話しかける趣味でもあるのか?それなら私ともうちょっと会話してくれてもいいんじゃないか?
こっちの迷惑も考えてほしいもんだ、と兵長さんの語りは続く。

「お前は確か…いろいろなやり方で俺の部下を殺していたが、あれは楽しかったりするのか?俺は今楽しいぞ」

なるほど、育て方を間違えたかもしれない。いや別に私が育てたと言えるようなこともしてないけど。それにしてもお前人格大丈夫か?

「なあ…?お前もそうだろ?お前なら俺を理解してくれるだろ?」

お前は、一体全体、なんの話をしているんだ?まさかお前、自分のことも化け物だと思ってるのか?ばっかじゃねえの。お前は人間だし、仮に化け物仲間が欲しいのなら…、私が、いるじゃないか。
ねえ。

そして次の瞬間、空気を切り裂くような叫び声が発せられる。声の主はあの巨人だ。そのつんざくような悲鳴は、聴覚がヒトよりも優れている種としてはすごく大ダメージ。頭が揺れてくらりとする。なんなんだ。断末魔か。迷惑な。
使い物にならなくなった耳の代わりに、巨人の気配を鼻で感じた。それも全方向から。もしかして仲間でも呼んでたの?うわ厄介。

「荷馬車護衛班、迎え撃て!」

団長殿の指示が響き渡るとともに、三体の巨人が現れた。護衛班じゃない私はどうすればいいんですか。聞きに行ったら流石にぶん殴られそうなので、自分の中の優先順位に素直に従って行動しようと思う。
三体の巨人は、護衛班の方々を総スルーしてあの巨人と、その上のリヴァイの、元へ。

「はあ?」

許すわけねえだろ、んなこと。
一体の巨人のうなじを刈り取ると、視界の隅で残りの二体があいつによって成敗されているのが見えた。
うん、わかってたよ、こんぐらいだったら一人でなんとかできるよね。冷静になればわかるんだけどね。無理だよね。赫子を使わずにちゃんと立体起動とブレードを使っただけ冷静だったと褒めて欲しい。あからさまな舌打ちを貰った気がするが、私に向けてじゃなくて巨人に向けてだよねとポジティブシンキングで生きるよ私は。

「全方位巨人出現!全員戦闘開始!女型の巨人を死守せよ!!」

えええそんな無茶な。とりあえずあいつを視界に入れつつ、出来得る限りで巨人を駆除していく。その数の多いこと多いこと。殺しても殺してもうじゃうじゃ湧き出てきて気持ち悪い。ていうか赫子使っていい?
動き回って疲れたので、この騒動ならバレないだろうとうなじを刈り取るついでに口にいれてみた。ん?うんまずい。人間の食べ物ほど不味くはないが、ほとんど無味無臭だ。おまけにやけに軽く、スポンジを食べてるみたいである。これ腹の足しになるのかな?微妙だ。どちらかというとさっきの女型の巨人とかいう奴が殺しただけで食べてない人間の方を頂戴したい。

「全員一時退避!」

なんだ、諦めちゃうのか。団長殿の隣に向かうあいつを見て、その斜め後ろの木に降り立った。

「なんてツラだてめえ…」
「敵にはすべてを捨て去る覚悟があったということだ。自分ごと巨人に食わせて、情報を抹消してしまうとは…」

そういうことらしい。女型の巨人はブチッブチッという音とともに他の巨人どもに食われている。それなんのパーティ?私も参加していい?なんて、ふざけすぎか。てへぺろ。

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