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「腹が減ったから戦できないなあ」

お腹減ったー、で始まる少年漫画が多いらしいという情報を得たので便乗してみた。いや、さすがにこの現代社会で戦をする気はないが。戦場があるっていうなら喜んでバイキングしに行くけどね!
というわけで、食料を求めてうろうろしてるなう。いい感じに路地裏で一人ふわふわしてる馬鹿がいれば俺得なんだけどなーいないかー。
「おっ」
諦めかけたその時、とでもナレーションが入りそうなタイミングで、道の隅でうずくまる女を見つけた。身なりが汚く、大事にされていそうな感じではない。おまけに、近づいてよく見てみると服のところどころに血が飛び散っている。ワケありか。ラッキー。

「おねーさん、どしたの?」

友好的な仮面を被って、まるで親切かのように質問した。問答無用で襲いかかってもいいんだけど、それであとで面倒ごとに巻き込まれたら嫌だし。

「あのね、」
「うん」

どうやら何かを喋り出そうとしている人間のおねーさん。体そのものだけでなく、おねーさんに付着している血液からも人間の匂いがするから素敵に無敵だね。食べやすい的な意味で。

「人間を、食べたの」
「…へ?」
「そしたら、ここにいたの」

喰種?じゃないよね?え、食べたの?ここにいたの?ねえ、ちょっと待ってよおねーさん。私さっぱりわけがわからないよ。

「あなたを食べたら、戻れるかしら?」
いや、聞かれても知らないけど。

まあ、その、よくわからないけど、なんか襲いかかってきたので、よくわからないまま、とりあえず返り討ちにした。

「おねーさん、なんだかさっぱり意味がわからないんだけどさあ。一つ言うと、私は食べる側だよ?」

というわけで、いただきます。ありがたくご馳走になりますよおねーさん。意味がわからなかったけど消化してしまえばなんの問題もない…はず。まあいいや、気にするのやめやめ。食べることに集中しよ。

そして、完食して、お腹いっぱいになったとき。ドクンと、体の中で脈打つ気配がした。心臓じゃない。ちょうど胃のあたり。ドクン、ドクンは止まらない。もしかしたら、まずいもんを食べたかもしれない。ドクン。胃のあたりが熱くなってきた時点で、勿体無いながらも吐き出そうと決心したとき。

ドクン。

私は倒れこんだ。そのまま脈打つ得体の知れない気配を感じながら、私の意識は薄れていった。

***

ああ。

「人間を、食べたの。そしたらここにいたの」

本当だ。

おねーさんを、食べたら、そしたら、知らないところにいた。

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