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「ちったぁ自分で歩きなせェ」
「行く気がない人にそれを言うのね…勝手に連れてきてるんじゃないのさ」


…ていうか!あんたが無理矢理引きずってるんでしょうが!!
という怒鳴り声がご近所中に響いた。あぁ、朝からすみませんねえ…。
その後まるで合いの手のようにワンッ、と犬が吠えたのがなんだかおかしかった。


「とにかく、なんでもいいから歩きなせェ。あんた重いんで疲れやした」
「手離してくれたら歩く、家の方向へ」
「それじゃ意味ねーや」


全く、横暴もいいとこ!
いいじゃないの、私が1人いなかったところで何も変わらないでしょうに。Z組が問題児の集まりであることにも変わりはないはずだ。


「いちご牛乳1年分はきつい」
「知らないよ、人のフレンチトースト食べといて」
「まぁだ根に持ってるんですかィ?しつけーや」
「あんたねー、いきなり知らない人に不法侵入された挙句、大好きなフレンチトースト食われたのよ」


これで黙っていられる
そういうと、やれやれ、仕方が無いな、というような感じで、本当にそういう感じですある提案を出してくる。


「おとなしくついてきてくれたら、俺が放課後にでも美味しいフレンチトースト、ご馳走してやりまさァ」
「なっ…美味しいフレンチトースト…」
「なぁ?どうですかィ?」

悪くはねーだろィ。
……たしかに、悪くはない。
むしろ、むしろ、喜んで飛びつきたい…!

先ほど言ったとおり、私は無類のパン好きで(言ってない?)なかでも、フレンチトーストなんかはパンランキング上位に入るくらいである。

美味しいフレンチトーストなんて言われたら、あんなに行きたくない学校も、1日くらいなら行ってもいいような気がしてきた。


「…よし、わかった。本当に美味しいフレンチトースト食べれるのよね?」
「つまらない嘘はつきやせん」
「…よし、今日1日くらいなら、学校行く。というわけで離しても歩くよ」

そういってやんわり腕を拒否する。
春先ではあるので、離れて行った温もりが少し惜しくはあるものの。何を考えてるのやら、私は。
そう思いつつ、隣を歩く。


「あらあら、あなたたち、学校は?」
「え、いやこれから…ですけど」
「あらあらぁ?銀魂高校、もう始まってるでしょう?チャイム鳴ってたわよぉ」
「「え」」

通りすがりのおばさまに聞かされた衝撃の事実に、私たちはふ、と顔を見合わせる。
一拍の間を置いて、慌てて各々携帯を取り出し、時刻を確認する。

9時3分、あ、4分

……1限の開始は、9時前のはずである。
つまり、これは、この状況は。

「遅刻でさァ…やべぇ」
「あーあ、遅刻かぁ、サボっちゃわない?」
「なーに言ってるんでさァ、いちご牛乳奢るなんていやでさァ。というわけで…走りやすぜ」


そういうなり私の腕を掴み、走り出す。

なんだが、後ろの方でさきほどのおばさまが、「青春してていいわねえ、2人幸せにねえ〜」なんて言っていたけれど。

全力で否定しておこう、カップルではない!!


フレンチトーストの恨みつらみ
(わわっ、ちょ!いたいいたい!)
(うるせー、ほら走れ走れー)



**

夢主こんな子じゃなかった!おわた!

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