ぎぎぎぎんたま! | ナノ


▽ 紙パック症候群


「…人間って、複雑怪奇だよねえ」
「なんでィ、急にしんみりっぽく」
「ぽくってあによ、しんみりよ、しんみり」

バコッバコッと空の紙パックジュースをなおもストローで啜り、嫌な音を鳴らしながらそう返してきたものだから一瞬、何の話か忘れそうだった。
紙パックはもうグチャグチャで、おそらく…フルーツオレだったんだろう、というのが伺える…ような伺えないような。

今の私の心境もあんな風にグチャグチャ……だとは思いたくはないな。

ちなみに、私の飲んでいるものはイチゴオレ。断じていちご牛乳なぞではない。

「んー、複雑っていうか、…理不尽極まりない」
「あん?」
「沖田さー、お姉さんのこと、好き?」
「もちろん、好きでィ」
「んじゃー、土方は?」

もちろん、嫌いでィ。そう答えると、今度は紙パックにパコパコと空気を入れ出した。
……子供かお前は。高3だぞ高3。
その設定忘れんなよ。


「神楽は?」
「嫌いでィ」
「銀ぱっつぁん」
「嫌いでィ」
「ふうん……」

こう即答してるが、嘘に決まってる。
本当は好きなんだろう。あ、もちろんlike的な意味で。

照れ隠しだ、こんなのは。
それが微笑ましくもあり、なんだか少し……


「じゃー、私」
「……んー。ナイショ」
「はぁ!?」


飽きたのか、紙パックを解体し始める。ぺり、と紙を剥がしつつ器用にストローを加え、液体が漏れないように。

…正直その反応は予想外だった。
というか、別に、とかそんなんでお茶を濁すかと思ったのに。


…ナイショって、どういう意味なのだろう。割と真面目に嫌いってこと?それとも、…?

……あああ!複雑怪奇!
なんでこんな気持ちになってるんだろうか、私はこいつ相手に!

『好き』とかまぁ、こいつの場合は『嫌い』もか、みんなとおんなじくらい言われたらそれはそれで嫌だけど。
かといって、ナイショ、とか言われて不安になってる私は何…!


「……なーにが、不安なんだよ…?」
「何がでィ」
「なっ、なんでもない!」


ふ、と考えて一つの仮説に辿り着いたけど、それを認めるには、確証もないし、なにより私が嫌だ。

ま、まさか、私がこいつのことを、…好き?

そう考えれば複雑怪奇で理不尽極まりない思考も、合点がいく。

そう考えているうちに手に力がこもっていたようで、イチゴオレのピンクがすこし零れている。


「おい、これ」
「えっ!?あっ、はい!?」
「よっ…と、じゃなー」


投げて渡された物を反射的に受け取る。
掴んだ物はくしゃくしゃな紙パックをうまく畳んだそれと、それの間にこっそり挟まっている、イチゴ味のアメ。

……ああもう、そういう不器用な優しさが腹立つのだ。なんとなく、この仮説が本当のような気がして。
……なんでこんな気持ちになるのか、認めなければならないような気がして。

とりあえず今は、緩み切ったこの頬が恐らく答えでよさそうだ。


紙パック症候群
(って、要するにゴミ押し付けられたっ!)
(……へへへ、でも満足)



**

紙パック?あんまり関係ないですよ?←
沖田は夢主のことちゃんと好きです、気を引きたいからナイショだなんていうんですね、もう!
ていうか沖田いる意味ねえ!

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