◎跡部→←ヒロイン←忍足 「苦しいくらいに好きだった」 そう彼女は泣いた。 まだ冬の寒さが残る学校で、長年彼女が支え続けてきた真緑のコートを歪んだ瞳に映したまま。 細い肩に回した腕に力が篭る。本当はこの肩を抱いて彼女を慰めてやるのはあいつの役目なのに。そう奥歯を噛み締め今にも弾け出しそうなやるせない思いを胸の奥に押し込んだ。 どうしてこうなんだろう。 あの人は強い。弱さを微塵も感じさせない強さを持ってる。会話の端々にも、その顔つきにも立ち方ひとつにも、それは滲み出ていた。好きで好きでたまらなかった。だからこそ弱音を吐き出して欲しかった。でもあの人との距離は近すぎた。それがわかっていたから辛かった。それでも私はあの人が好きだった。苦しいほどに、好きだった。 でもその想いは届くことはなかったし、届けるつもりもさらさらなかった。ただ、あの人は勘がいいから、実はわかっていたかもしれないけど。 …………………………… 2011/08/30 01:50(0) |