短く息を漏らしたのを合図にどんどん胸が苦しくなって、ふと周りが真っ暗になった。頭がぐらり、揺れてその場に膝をつけば、足元が少しずつ下に下に沈んでいって、しんとした寒さに体が凍る。 胸が痛い、心臓が止まるんじゃないかなんて、身の危険が迫ってるにも関わらず頭は冷静で少しびっくりした。これは夢だとわかっているからだろうか。うん、多分夢には違いないんだけれど、本当に夢なんだろうか。どうしても、この胸の痛みと息苦しさは、現実のように思えてならなかった。 そう、考えてるうちにも、どんどん体は沈んでいく。わたしこのまましんじゃうのかな。ぽつりと漏れた本音、流れた涙。ああだめだ、もう戻れない。 なんて諦めかけてたときに。頭上に感じた暖かい感覚。私を照らす唯一の光だった。 「きて、なぁ、起きろって」 体がゆらゆらと揺れる感じに、ついに頭のてっぺんまで沈んじゃったのかと思っていたらどうやらそれは違ったようで、額をぺしりと鈍い痛みが襲った。 「いった」 「とっとと起きないからだろ」 「平馬手加減なさすぎる」 「いつだって本気だから」 「もっと違うとこに使おう?」 「例えば?」 「勉強とか」 「はい却下」 べしり、もう一発。だからいたいっての。 ベッドの上でゴロゴロ転げ回る私を見てひいひい笑い続ける平馬。なんかすごくムカついたからお腹を蹴ってやった。さすがスポーツ選手、腹筋が固くて私の足の裏へのダメージもなかなかだったけど、当の本人もお腹を抱えてゴロゴロしだしたので同じように笑ってやった。ざまあみろ。 「てか今何時?」 「7時」 「朝の?」 「晩の」 「…は?」 嘘でしょ、小さく漏れた声に返ってくるのは現実だという返事。起き上がってカーテンをゆっくりと開けると、そこには朝日に薄く染まって輝く田んぼはなく、夕陽に照らされてオレンジに染まった道路があった。 続きはいつかまた …………………………… 2011/08/07 23:07(0) |