03
 …なァんだよ。ユウリのヤツ。

 遠くの方で、見知らぬ男たちと楽しげに喋っているユウリを見つめながら、ナランチャはつまらなそうにワインを口に運んだ。
 壁際にずらりと並んだ料理。それらを手当たりしだいにぱくぱくと食べすすめ、喉が詰まればウエイターの運んできたワインで流す。
 上品さのかけらもない、野性味あふれるナランチャを、周囲の金持ちたちは遠巻きに見つめ、怪訝な視線を送る。

(ふん、どいつもこいつも、見下した目で見やがって)

 そろそろ終わったか、と、ユウリの方を見るが、彼女は依然と、男たちに囲まれたまま。どうやら彼女の前にいる初老の男が、今夜のパーティの中心人物らしい。
 ユウリいわく、彼はユウリがこの世界に入ってきたころからの付き合いで、はじめこそ肉体関係をもっていたが、近ごろではもうそれもなく、さしずめ良き茶飲み仲間、というところらしい。

(でも、ケツ触りまくってンじゃあねえかッ)

 その感情を歯に込め、こんがりローストされたチキンをむしっと齧る。
 むしゃむしゃとチキンを咀嚼するあいだにも、男は、ユウリの顎に手を添え、頬にキスしたり、手の甲をなぜたりと、まるで恋人のように振る舞っている。それがナランチャは気に入らなかった。とても、イライラした。

(くっそ、何なんだよ、これッ)

 はやく終われ!はやく終われ!はやく終われ!
 チキンを食べ終え、次のチキンに手をのばす。
 そんなときだった。ユウリを見つめていたナランチャの視界に、背の高い男が割り入ってくる。

「ねェ、キミ。ヒマ?」
「あァ!?」

 立っていたのは、知らない男だった。



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