20.5
 ずる、とモノを引き抜くと、同時にあふれ出る不透明な粘液。
 射精後の混濁した意識の中、ブチャラティは咄嗟に、ユウリの中に出した精液を掻き出した。

「すまない、中に…」

 言葉を遮ったのはユウリの唇だった。

 ブチャラティが一度達するまでに、彼女はすでに何度も絶頂を迎えている。しかし、媚薬を投与された彼女には、それでもまだ足りないのだろう。ユウリは濡れそぼった熱い唇で、ブチャラティの口内を食んでいく。

「いいの…。ブチャラティ、まだ、全然、足りない…。お願い、もっと、もっと欲しい…」

 ブチャラティにしがみつき、萎えたペニスに腰や太ももをすり寄せる。愛撫とはまた違う、くすぐったいような、ささやかな刺激。ブチャラティは腰を引くこともせずにそれに甘えた。

「ん…」

 ブチャラティの口から、吐息のような声が漏れ、ユウリは足腰で刺激していたソコへ手をのばした。
 柔く刺激していたペニスはすっかり勃ちあがり、ユウリの手の中でさらに硬度を増していく。
ユウリは目を細め、その形を確かめるかのようにペニスを手のひらで扱いた。

「ユウリ、…ふ…」

 鈴口を指でこね回したり、袋の方も小突いてみたりと、手での愛撫はブチャラティが息を荒げるほど激しくなっていく。

「ねえ、良い?ブチャラティ、良い?…」
「っ…、ユウリ…」

 吐息を隠すように、ブチャラティはユウリの胸に舌を這わせた。
「あっ」ブチャラティの下で、ユウリが小さく声を上げる。

 すでにかたく勃ち上がった乳首にはふれてやらず、渦を描くように乳房を舌で愛撫する。

「あっ…あぁ…ン、こ、こっちもぉ…」

 身をよじり、乳首を口元に押し付ける。発情しきった彼女にとって、焦らすような中途半端な愛撫はもはや拷問に近かった。
 口元に宛がわれた小粒なそれを、ブチャラティはされるがまま、唇で挟む。

「あんっ」

 それだけでびくびくとユウリが反応するので、ブチャラティはさらに強弱をつけて、胸の突起を吸ってみる。時折、歯を立ててみたり、わざと音を立てて舌で転がしてみたりもした。そのたびに、ユウリはつま先をぴんとのばして、甲高い声をもらすのだった。

「ふぁっ、あァン、んっ、あぁ〜ん」

 赤ん坊のようにチュパチュパと胸に吸い付くブチャラティ。
 彼が胸から唇を離したかと思うと、不意に、耳の中に舌が入りこんできて、ユウリはその快感ともつかない曖昧な刺激に身悶えた。
 濡れた舌で聴覚を犯される。同時に秘部に指を挿し込まれ、それだけで、ユウリは何度目かの絶頂を迎えた。

「あッ、や、ブチャラティ…っ」
「これだけで、いったのか?」
「だって、だってっ…」

 涙を零しながら、自分を見つめてくるユウリの頬に手を添える。そのまま、ブチャラティはゆっくりとキスをした。部屋に入ってすぐにした、性急なキスとはまた違う、相手を心から慈しむような口づけである。

「ん…っ」

 口付けが深くなると同時に、下半身同士がこすれ合い、目の覚めるような快感。

「あっ、ん」

 達したばかりの敏感なそこを、熱くなったペニスでこすられ、ユウリはただただ、恍惚に溺れていく。

「入れて…早く」

 瞬間、優しいキスが降ってくる。口づけ合いながら、ブチャラティはユウリの太ももをぐっと押し上げ、愛液で濡れたそこに先端を埋め込んだ。

「ん…っ」

 どちらともなく、口づけが激しくなる。ほぐれきった肉ヒダはブチャラティのペニスの侵入を喜び、きゅうきゅうときつく締め上げる。

「あ、ァん…ッ」
「っ…、ふ」

 余裕のないブチャラティの表情がいとおしい。
 完全に奥まで挿入すると、ブチャラティは目を細めて、息を吐いた。

「お前な…、濡れすぎだ」
「だってぇ…、ッあ、まだ動いちゃ…」

 ブチャラティが動くたび、下方からいやらしい水音が聞こえてきて、けれどそれさえも感情を昂ぶらせる手段となり、ユウリはだらしなくひらかれた唇からただただ嬌声をもらすだけ。

「んっ、んぅ、あンっ、あンっ」

 揺さぶられる動きに合わせて声が出る。それを抑えようとはもはや思わなかった。

「あ〜ん、あぁん、ブチャラティ、気持ちイイよぉ…」
「ユウリ…」

 薬はここまで人を狂わせるのか。
 自身の下でもだえるユウリを、ブチャラティはたまらない思いで見つめていた。

 ユウリの脚を抱え、肩に乗せて揺さぶると、より中の方までペニスがこすれ、その快感に、ブチャラティは頭の中が白んでいく。

「…っ、ユウリ、もう…」
「…あンっ、私も、いくっ…」

 吐息を絡め合いながら、二人はほぼ同時に絶頂を迎えた。体内でどくどくと脈打つブチャラティ自身を、ユウリは愛しく思う。

「ブチャラティ、キスして」

 返事の代わりに、啄むようなキス。ちゅ、ちゅ、と、角度を変え、何度も何度も、口づける。

 二度も射精したとあって、さすがに萎えたペニスがするりと膣から抜け落ちる。

「あ…」

 圧迫感のなくなった体内。けれどユウリの体の疼きはまだ収まらない。

「ブチャラティ、ねえ、私、まだ…っ」

 泣きそうな顔で、ユウリはブチャラティに覆いかぶさった。

「おい、ユウリ…」

 困惑するブチャラティの下半身に手をのばし、ユウリは、自身の内部からこぼれ出たブチャラティの精子を、彼の後ろの穴へと塗り込んでいく。

「な、ユウリ…ッ」
「あン、んっ」

 ブチャラティの穴をマッサージしながら、柔らかくなったペニスを、割れ目にこすりつけ、ユウリはなおも快楽を得ようとする。もどかしい刺激だが、それでも、クリトリスがこすれて気持ちいい。

「ッ、ユウリ、やめ…」

 弄られたことなどただの一度もない彼のアナルが、ユウリの細い指に犯されようとしている。気持ちいいのかすら、まだわからないが、それでも、次第にペニスが硬さを取り戻していくので、おそらく気持ちいいのだろうと、他人事のようにブチャラティは思った。

「ブチャラティ、っぁ、ン、あぁん…」

 かたくなったペニスでクリトリスをこすっていたユウリが、身を強張らせて、また一度、達した。
 ぐったりともたれ掛ってくる華奢な体を抱きしめ、墨の彫られた背に手をまわす。

「満足したか?」

 ユウリは唇を噛み、涙を湛えて、首をふった。

「…まだ。まだ全然、足りない…」
「俺もだ」

 上気して紅色にそまった頬に口づけを落とし、ブチャラティはふたたび、ユウリをベッドに沈めるのだった。




2012.06.07
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