クロウ
 普通の人間とはまるで逆のサイクル───陽が上り、空が白みはじめるころ、彼は眠る。

 彼の館に連れて来られてから、太陽の有り難みというものを改めて知った。


 ボロボロに引き裂かれたブラウス一枚纏った私のどこに興が乗ったのか、今夜はいつも以上に激しくされた。
 激しく、と言っても、発情しまくったそこいらのカップルが普段するような可愛らしいものではなく、DIOのセックスは蹴る殴る、絞首有りの凄まじいものだ。鏡に映った自分の姿に、もはや、笑いさえこみ上げてくる。

 どこかの国の王様のようなベッドで、死んだように静かな寝息を立てながら、DIOは眠っている。

 寝そべりながら、肘をつき、まじまじとDIOの顔を観察する。

 美しい。整った顔のパーツもそうだが、他人のものだと言う肉体も、それと顔とを繋ぐ首筋も、其処に刻まれた傷跡さえも、彼を形成する全てのものが、ある種の芸術品として完成している。

───こんなにも美しい彼を、私はどうして愛する事が出来ないのだろう。

 内面はどうであれ、一目見ただけで魅了されるほどの色気と眉目秀麗さ。妖しいまでに完璧な彼を、どうして愛する事が出来ないのだろう。

 理由は一つ。他に、愛している男が居るからだ。

 私がこの館に来て、一目で心を奪われた、愛する男───ザ・ワールド。DIOによって引き合わされた、DIO無くして存在する事の許されない、彼の半身。

「ワールド」

 つぶやくと、体温のない体に、後ろから抱きすくめられる。
 肩にのせられた無機質な横顔に、頬ずりをする。私の体を包む、彼の腕の力が強まった。

 ワールドは、言葉を伝えるすべを持たない。その代わり、彼の愛情表現はとてもストレートなのだ。

「意外とヤキモチ焼きよね。本体に似たのかしら」

 先ほどまでの、DIOとの行為。
 私がめちゃくちゃに犯されているさまを、ワールドは、恐ろしいまでの無表情で見下ろしていた。

「ただ単にストイックなだけか…それかもう慣れたのかと思ってたわ」

 思えば、DIOとの情事のあと、毎度のように、ザ・ワールドは、体こそ求めて来ないものの、こうして私をきつく抱きしめて離さない。まるで、傷ついた私を閉じ込めるかのように。

「んっ…ワールド…」

 ごつごつしたザ・ワールドの指が、先ほどまでの行為でほぐれきった私の秘部を掻き乱す。
 これは、愛撫ではなく、至って作業的なものだ。先ほど、中にたっぷりと出されたDIOの子種を掻き出しているのだ。

 DIOとのセックスのあと、毎夜のように繰り返されるこの儀式。形だけでも、私をDIOに奪われたくないという思いが、ザ・ワールドの中にあるのだとしたら、私は嬉しい。

「ワールド」

 少し上の方を見上げると、冷たい口づけが降ってくる。

「愛しているわ」

 見つめ合ったときの彼は、どこか、泣きそうな顔をしていた。




2012.04.21
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