ニルヴァーナ
「ちっせぇアタマ……」

 そう言ってミスタは私の髪を撫でる。
 どこか余裕のない手のひらを後頭部に感じながら、天を指すペニスを口内に迎え入れた。

「うぉっ……!」
「ん……」

 ベッドの上で大の字になったミスタの脚の間に蹲って、ペニスをしゃぶる。
 ミスタは私のフェラチオが好きだ。とても喜んでくれているのがわかるから、私も嬉しい。
 歯を立てないよう意識して、濡れた唇を膣に見立ててペニスを抜き差しする。頭を動かすたびに、ミスタの荒い息遣いと、じゅぷじゅぷと水気を含んだ音が聞こえる。

「んむっ……ぅうん……っはぁ……」
「うぅッ! スゲェッ……ユウリ、チンポ溶けそ……」
「ン〜〜〜?」

 ミスタの太ももがビクッと震えた。
 ペニスをツゥっと舌でなぞって、そのまま玉袋の方へ移動する。敏感で弱い部分を舌先でつついて、それからゆっくりと唇で吸い込んだ。ペニスは両手で強めにこすって責め立てる。

「ぐぅッ! おぉっ……それヤベェって! あ〜……!」
「あむっ……なぁに、もぉイッちゃいそうなの?」
「ユウリ、ストップ! タンマ、なァ待てって!」

 あせったような声が頭上から降ってくる。クルミみたいにシワシワでコロコロの睾丸から口を離して、切ない顔で喘ぐミスタを見上げた。

「んむ……なぁ〜に? どうしたの」
「いや、上手すぎンだよお前ェッ! フェラでソッコー出しちまったら勿体ねェだろ〜〜〜。お前もケツこっち向けろよ。なっ」
「仕方ないわね……」

 ペニスを押さえたまま、コンパスみたいにずりずりと下半身を枕元へと回転させた。そろそろとミスタの顔を跨ぐと、ショーツ1枚で隠れていた私の女性器はあっという間に裸にされた。

「新しいパンティ、エロくて良いなァ」
「とか言いつつ1秒で脱がしてるじゃあないの」
「仕方ねーだろ〜ッ! 中身の方が好きなんだからよォ〜〜〜」

 剥ぎ取ったシルクのショーツをポイッとベッド下に投げ捨てて、ミスタはうっすらと生えた私の恥毛を掻き分ける。

「もっとケツ下ろせ……」
「ぅ……ん」

 言われるまま、彼の鼻先と私のアソコがくっつくくらい腰を下ろす。ミスタは割れ目を両手でひらいてそこに舌を這わせた。

「あっ……!」

 溜め息みたいな声が漏れた。ミスタは私の良いところを本能的に探り当てて、的確に責めてくる。
 私が中よりもクリトリスが弱いことを知っていて、そこばかり舌でなぞるのだ。

「んぅっ……! あん……あぅっ……あぁん……」
「あー、まじ、その声、カワイー……」
「あぁぁん……! だめぇ、息がっ……!」

 ミスタのクンニはしつこいけれど、私はそれが結構好きだった。
 喘ぎ声に蓋をするみたいに、先ほどからビクビクと震えるペニスを咥え直した。ミスタが私のアソコの入り口で「うぁっ」と熱い吐息を漏らす。

「あぁヤベっ……スゲェ……うッ……」
「んう……、ふぅ……、ぁむっ……」
「うぅッ、ユウリ、くぅぅッ!」

 競うみたいに性器を舐め合って、その堕落した行為に溺れた。
 彼のペニスを舐めた分、彼もまた快楽をくれる。彼の舌は勢いに任せて割れ目のヒダまで舐めて、指先はクリトリスを優しく捏ねる。

「あぁ……んっ、あぅん、あっ……だめぇ……ガマンできなく、なるぅ……」
「それがイイんじゃあねェかッ……『もぉ入れてぇ』ってなるくらい、トロットロにしてやるぜェ〜……ッ」

 丁寧ではないけれど、がむしゃらな彼の愛撫がいとしい。
 正直なところ、私は心も体もすっかりトロットロになっていて、ガマンなんてもうできそうもなかった。尿道の入り口に滲んだカウパーをペロペロと舐め尽くし、サイドテーブルの引き出しからコンドームを取り出した。

 コンドームを素早く被せて、ミスタの腰に跨った。
 ミスタは自分でペニスを支えて、私が腰を下ろすのを待っている。

「なァ〜ぁ、ユウリチャン。早くゥ」
「もう、……焦らないで」

 思わず笑顔とともに溜め息がこぼれた。恋人はいつも素直だけれど、セックスの最中はそれがさらに加速する。それがたまらなく愛おしい。

 くちゅ、と性器同士が音を立ててキスをする。

「あ……っ! 入っちゃうぅっ……」

 息をのむほどの圧迫感。
 ペニスが肉の壁を割りひらき、ゆっくりと奥まで侵入してくる。

「あぁぁ……!」
「うぅッ、ユウリッ!」
「あッ!? ちょっ、あんっ、ミスタぁっ!」

 いちばん奥まで届く寸前で、ミスタが腰を突き出した。急に深いところを抉られて、まるで悲鳴のような声が漏れた。上に乗っているのは私の方なのに、主導権はミスタにある。
 彼はそれが嬉しいようで、へへ、と得意な顔で何度も腰を突き上げた。

「あッ! あぁん、あっあっ、ミスタ、いやぁん、ダメ、あっ!」
「はッ、うぐっ、おっぱいすげェ揺れて、エッロぉ」
「あぁんっ! そんなっ、ちくびぃ、クリクリしちゃだめぇっ! あぁぁん!」

 腰を支えていた両手が胸に伸びて、乳首を捏ねる。優しく押しつぶすみたいに弄られて、腰が震えた。

「ユウリよォ、いま軽くイッたろ〜〜〜?」
「やだっ、なんでっ、わかるのぉっ! あぁぁん、だめぇ!」

 彼はお構いなしにペニスを打ち付ける。本格的なオーガズムの波が迫っていた。それはミスタも同じだ。
 やられっぱなしは悔しい。私は小さく円を描くように腰を動かして、ミスタの胸元にキスをした。

「あぁッ、ユウリ、くッ、ヤベェ、それまじヤベェって! おォ……!」
「はぁん、ミスタ、こうやって動かれるの、好きよねぇ?」
「あぁ好きだッ、好きだから、ぐぅっ、ヤベェって! イッ、イキそ……」
「イッちゃうぅ? じゃぁ……乳首も舐めちゃう」
「おいヤメろってぇ……俺、乳首なんて感じねェ……、うッ」

 小さな乳首をちゅくちゅくと吸うと、ミスタは喉を震わせた。感じないなんてウソだ。
 焦らすように動いていた腰を激しく上下に揺さぶって、ミスタと自分を追い詰める。頭が真っ白になるあの瞬間が近づいている。ミスタもまた小刻みに腰を振って喘いでいた。

「あぁんッ、はぅ、もぉダメ、イク! あぁぁん、イクッ、イッちゃうぅぅ……!!」
「おォッ、あぁ、スゲッ……締まるぅッ! もう出るッ……出るッ!」
「あぁぁっ、ミスタぁ……!」

 ひときわ大きく腰を揺すって、ミスタはラテックスの中に射精した。ほぼ同時に私も達して、そのまま彼の胸に倒れ込む。

「あ〜……、スゲェ良かった……」

 ん〜〜〜、と甘えた声でミスタがキスしてくる。
 私はセックスの後の気だるいキスが好きだ。とろけた心と身体を常温でこねまわすみたいな、夢うつつの時間。

「なァ〜〜〜、ユウリ〜……」
「はいはい、グイードくん」

 言いながらペニスを引き抜いて、コンドームの口を縛って捨てる。そうする間にもミスタは私を後ろから抱きしめて、首筋にちゅっちゅっとキスを落とす。彼が次に何を言い出すのか、私には手に取るようにわかった。

「なァ、また勃っちまったンだけど」
「……はいはい、グイードくん」





2019.06.08
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