ショタフーゴと年上メイド 豪奢なお屋敷の、巨大な門。私の幼少期の、古い記憶のひとつ。顔見知りの大人に手を引かれ、幼い私はその門をくぐった。 そのお屋敷はもちろん、私の生家ではない。 私は両親の顔を見たことがない。産まれてすぐに捨てられ、児童養護施設で育った私は、ある日、このお屋敷に引き取られた。10歳になって間もない頃だった。 その日から、私はお屋敷のメイドとして働くことになった。 お屋敷にはほかに数名のメイドがいたが、子どもは私だけだった。こんな子どもをどうして、と思ったが、理由はすぐに判明した。 パンナコッタ・フーゴ。五つ年下の、一人息子。 お屋敷の旦那様も奥様も、大奥様も。誰もが彼を愛していた。私は彼の遊び相手も兼ねて、このお屋敷に引き取られたのだ。 「ユウリ、あそぼ」 「ユウリ、ご本よんで」 「ユウリ、お外につれてって」 出会った当時のパンナコッタ坊ちゃんはまるで天使みたいに可愛らしかった。 坊ちゃんは幼いながらも人並み外れた頭脳を持ち、どこか危うい、繊細な魅力を秘めていた。 「ユウリ」 「はい、坊ちゃん」 「ユウリは大きくなっても、ぼくのそばにいてくれるよね」 「もちろんです。私は坊ちゃんのものですから」 それは所詮、幼い頃のたわごとに過ぎなかった。 けれど、私は今でもその言葉を覚えている。 ・ ・ ・ 私がこのお屋敷にやって来て、7年の月日が流れた。 私は今年、17歳になる。 私たちメイドは朝早くに起き、分担して、お屋敷の掃除をする。 次は食堂で朝食の準備だ。コックたちが料理を作る間、テーブルを綺麗にセットして、花瓶に花を生ける。 奥様の部屋に持っていく花瓶を用意していると、年配のメイド長に声を掛けられた。 「ユウリ、そろそろパンナコッタ坊ちゃんを起こしておいで」 ぎく、と背筋がこわばった。奥様よりもずっと年上の、初老に差し掛かったメイド長は、返事をしない私を不思議そうに見た。 「どうしたんだい? いつもならまっすぐ起こしにいくのに」 「いえ、あの…」 どうしよう、言ってしまおうか。 すこし悩んで、私は小さな声で、今日はほかの人にお願いできませんか、と言った。しかし、即答される。「そんなの無理だよ」 「わかってるだろ、坊ちゃんはあんたじゃないと起きない。あたしたちじゃあ無理だ」 「………」 そうなのだ。幼いころから付きっきりで世話をして回った結果、パンナコッタ坊ちゃんは私にべったりの甘えん坊になってしまった。 朝は私が起こしに行かないと絶対に毛布から出てきてくれないし、通学も私と同伴じゃないとダメ。なにより1番困るのは、私が他の誰かと親しくすると、ひどく不機嫌になってかんしゃくを起こすことだった。 坊ちゃんは私を独占したがる。 彼を敬愛する私は、それがとても嬉しく、誇らしくもあった。 けれど最近、そんな坊ちゃんの様子がおかしいのだ。 なんというか、私への態度がぎこちないというか、よそよそしい。じっと舐めるような視線を感じるし、かと思えば、坊ちゃんの方を見れば急に目をそらす。避けられている、というほどでもないが、それでも今までとは確実になにか違っていた。 「…もしかしたら、坊ちゃんは、そろそろ私の手を離れる頃かもしれません」 「おや。どうしてそう思うんだい」 「近ごろ、坊ちゃんの様子がおかしいんです。妙にそわそわしているし、私とあまり目を合わせてくれません」 私は真剣に言ったのに、メイド長は「ははあ」と楽しそうに笑った。 「そうかそうか。坊ちゃんもそんな年頃になったんだねえ」 「…ちょっと待ってください。それは早とちりです」 「早とちりなもんか。あんたは昔から美人だものね。坊ちゃんが気に入るのもわかるよ」 「いや、だから、そいうのじゃ…」 しどろもどろに否定するが、彼女の言うことは妙にしっくりきたし、つじつまが合う。 坊ちゃんが私を異性として意識し始めているというのは、あり得なくもない。昔から、主従関係にしてはかなり親密に過ごしてきた。早熟な彼がそれを恋と勘違いしてしまっても無理はない。 年配のメイド長は人当たりのよい笑顔を浮かべると、言った。 「いいじゃあないか。坊ちゃんが望むなら、恋の相手をしておあげよ。さあ、起こしにいってきな」 朝、坊ちゃんを起こすのは、私の1日のルーティンでもっとも好きな仕事だった。 …ほんの少し前までは。 「坊ちゃん、入りますよ」 ノックをして声を掛けるが、返事はない。いつものことだ。 ドアノブを回し、重たいドアを押し開けた。 昨日生けた黄色い花が目に入る。幼いころ、『部屋に入って最初に目に付く場所に、ユウリの生けた花を置いて欲しい』と坊ちゃんは言った。それを今でも守っているのだ。 「坊ちゃん」 お屋敷の一人息子は、ベッドで穏やかな寝息を立てている。 12歳を迎えた坊ちゃんは、それはそれは美しく成長していた。 整った顔立ちは幼さが残っていて、その中にもどこか影があり、耽美だ。 白い頬をそっと撫でてから、私は勢いよく毛布を引っぺがした。 「坊ちゃん、朝ですよ!」 なるべく大きく、元気な声で言う。 「…ん」 ふにゃ、と坊ちゃんが目をこすり、身じろぎした。寝起きのネコみたいで、なんだかかわいい。 「坊ちゃん、起きて。パンナコッタ坊ちゃん」 「んん…ん…ユウリ………、ってうわああああああああ!!!??」 「ひゃっ」 急に覚醒した坊ちゃんは大声で叫び、ズザザザッとすごい勢いでベッドの端へ移動した。 突然のことに目を白黒させていると、坊ちゃんはまた「わあああ!」と叫んで、私の手から毛布を奪い取った。 「ぼ、坊ちゃん?」 「ユウリ、こっちを見るなあ!!」 「えっ!?」 坊ちゃんは繭のように毛布にくるまり、顔を真っ赤にしてこちらを見上げてくる。その目には涙さえ溜まっていて、まるで手負いの獣が怯えているようだ。 「坊ちゃん、お身体の具合でも悪いのですか」 「ちちち違う!! なんでもないから、あっちへ行けっ!!」 「そんな…」 ショックだった。幼少時時代のかんしゃくを除けば、坊ちゃんからそんなふうに拒絶されたのは初めてだった。 けれど、そのショックが表情に出ていたのか、坊ちゃんはあわてて「い、言いすぎた、ごめん」とフォローしてくれた。 「ぼく、気が動転して…。ユウリにこんなこと、言うつもりじゃなかった」 「いえ…。私こそ、気が回らずすみません」 坊ちゃんはようやく落ち着きを取り戻したらしい。あーよかった。 あとは坊ちゃんをこの毛布の繭から出て来させれば、朝一番の仕事は片付く。 「では坊ちゃん、毛布をこちらに」 「それはダメッ!!!!」 「なんでっ!?」 ふりだしに戻る。坊ちゃんは頭まで毛布をかぶって丸くなった。 …仕方ない。ため息を吐いて、私はベッドに膝をついた。 大きなダブルベッドの隅で巨大な蚕と化した坊ちゃんに、ゆっくりと近づいていく。 近頃ではめっきりやらなくなったが、子どもの頃から、よく坊ちゃんに添い寝をしたものだ。どんなに機嫌が悪くても泣き喚いていても、私が抱きしめて差し上げると、坊ちゃんはスンと大人しくなるのだった。 坊ちゃんとの距離を詰め、毛布ごと彼を抱きしめる。ちいさな体が大袈裟にびくんと跳ねて、毛布から赤く染まった顔をのぞかせた。 「はなして…」 泣きそうな顔をしている。どうかその理由を聞かせてほしい。 「坊ちゃん、どうなさったのですか。どうかユウリにお聞かせください」 「…いやだ。できない」 「どうしてですか?」 あやすように背中をぽんぽん叩くと、坊ちゃんは消え入りそうな声で、 「…ユウリに嫌われる…」 と呟いた。縋るように見つめる大きな目からは、ついに涙がこぼれた。 「私は坊ちゃんを嫌いになったりしません」 「…ううん。きっと嫌いになる。ユウリに嫌われたら、ぼくは生きていけない…」 涙はぼろぼろと溢れ、絞り出すように言う。 切なくて、愛おしくて、毛布ごとその体を抱きしめた。 「泣かないで、私のかわいい坊ちゃん」 「…ユウリ…」 「ユウリは坊ちゃんの味方ですよ。いつまでも、何があっても。絶対に」 「………」 ややあって、坊ちゃんは毛布の中で身じろぎした。意を決したようにこちらを見つめ、ゆっくりと毛布から這い出てくる。 坊ちゃんは涙で濡れた頬をすり寄せ、私の腰を抱きながら、言った。 「ぼくは病気かもしれない」 「どこか具合がお悪いのですか」 「………」 坊ちゃんはふたたび口を噤み、俯くが、しばらく考え込んで、ぽつりと言った。 『…ちんちんがヘンなんだ』と。 「えっ」 予想外の言葉にフリーズする。 しかし、そんな私を余所に、坊ちゃんは続けた。 「時々、ちんちんが腫れてどうしようもないときがある。朝起きたときと、それから…。…えっと…」 みなまで言わずとも、もう分かる。坊ちゃんは精通の時期を迎えているのだ。 フリーズが解けはじめた私の頭に、彼はさらに爆弾を投下した。 「朝、起きたときと、それから…ユウリのことを考えると、ここが大きくなる」 「…えっ」 ユウリ。…私!? 「それはつまり…えっと…坊ちゃん…えっと」 「ッそんなの、ぼくにもわからないよ!! ユウリ、大人なんだから教えてよ!!」 「ええっ」 坊ちゃんのキレ芸…いや、かんしゃくが始まった。さっきまであんなに弱々しく、儚げに泣いていたのに。 そもそも、IQ152の天才児だというのに、性教育はおざなりだったなんて、旦那様は何を考えているのだろう。これから教えるつもりだったのだろうか。 「なんでなにも言ってくれないんだよッ!」 坊ちゃんが声を荒げた。「やっぱりぼくのことが嫌いになったんだ!」 「それは違います。ユウリは坊ちゃんを愛しています」 「愛ッ…!?」 素直な気持ちを伝えると、坊ちゃんは顔を真っ赤にして目を見開いた。わなわなと震え、大きな瞳からまた涙を零す。 坊ちゃんは私の服の裾をぎゅっとつかんで、上目遣いに言った。 「…ユウリがそんなこと言うから、またここが大きくなった。治し方を教えてよ」 …これはもう確信犯なのでは? そうは思うが、とてもじゃないが口にはできない。私は坊ちゃんの髪を撫でて、わかりました、と頷いた。 「坊ちゃん。では、こちらへ」 「…うん」 坊ちゃんをベッドサイドに移動させ、2人並んで座る。 「ご自分で脱ぎますか? それとも私が?」 「じ、自分で脱げるよッ!」 坊ちゃんが性急に脱ぎ捨てたパジャマのズボンを受け取り、たたんでベッドに置いた。 見れば、彼のそこはなるほど、子どもらしいポップな水玉模様のトランクスを、かわいらしく押し上げている。 坊ちゃんは恥ずかしそうに言った。「…パンツも脱ぐの?」 「もちろんです」 「うっ…ううう………」 「どうなさったのです? ユウリはむかし、坊ちゃんのおねしょした下着やシーツを何度も洗いましたよ。おちんちんだって、何度も拝見致しましたし」 「わああああ! 言うなあああ!」 喚きながら、坊ちゃんは下着を脱ぎ去った。 毛も生えそろっていない中心部があらわになる。小さいながらもピンと勃ち上がり、その存在を主張している。 最近はめっきり機会がなくなったが、昔はよく坊ちゃんの入浴のお手伝いをした。その頃よりは大きくなっているが、まだまだ小さな子どものペニスだ。もちろん包皮はまだ剥けておらず、先端まで完全に覆われている。 「ご自分でここを弄ったことは?」 「な、ないよッ! あるわけないだろ!」 坊ちゃんは耳まで赤くして言う。ペニスが小さく揺れた。 「そうですか。では、私にお任せください」 「なッ、なにするんだよ!?」 ペニスをきゅっと右手で包み、左手は先端に触れる。坊ちゃんは不安そうに下半身を見つめるが、その視線はどこか期待を孕んでいる。 「こんなに硬くして…」 私を思って、こんなにもここを大きくしている。 ただひたすらに、目の前の小さな主人が愛しかった。 包皮の中からのぞく先端部。うっすらと滲んだしずくを指先に取る。指を擦り合わせ、ねばねばする感触を楽しんだ。坊ちゃんは恥ずかしそうに目を逸らしながらも、早く、と小声で急かしてくる。 右手でペニスの根元を押さえ、もう片方の手でカリ首のあたりの皮を下に引っ張る。 「痛ッ!! ユウリ、やめ…」 敏感な先端部に張り付いた包皮を引き剥がすのは、やはり痛みを伴うらしい。坊ちゃんは腰を引いて逃げようとするが、 「ダメです」強い眼光と言葉で制止する。 「まずは皮を剥いてあげないと。汚れが溜まって、不潔です」 「そ、そんな…」 「はじめは痛いかもしれませんが、どうかご辛抱を」 小さな真性包茎のペニスを小刻みにしごき続けると、カウパーでだんだん滑りがよくなり、赤々とした亀頭が姿を見せる。完璧に剥けるまで、あともう少しだ。 「はぁ…、うぅっ…」 痛みに慣れてきたのか、それとも快感が上回っているのか、坊ちゃんはもうほとんど抵抗をやめていた。 「坊ちゃん、見えますか? ほらもう剥けますよ」 「あぁぁ…、あぅ…」 確かな手ごたえと共に、ぷりっ、と可愛らしいカリ首があらわになる。つるんとなめらかで、カウパーでいやらしく光る、坊ちゃんの頬みたいに赤い亀頭だ。 「綺麗に剥けました。時々、ご自分でもこうして剥いてあげてくださいね」 「う…」 坊ちゃんは、初めて見る自身の亀頭に釘付けだ。 長い間包皮をかぶっていたそこはいま初めて外気に晒され、わずかな刺激にもぴくぴくと揺れる。小さいながらも立派に勃起し、涙を流して天を向いている。 「ユウリ、早くっ…」 少年の細腰が揺れる。これだけガチガチに張り詰めていては、さぞ辛いだろう。 屹立したペニスを右手で包み込み、きゅっと力を込めて上下にしごいた。 「あぁぁぁ!」 坊ちゃんの太ももがビクビク震えた。爪先がぴんと伸びて、身体を仰け反らせて大きく喘ぐ。 「あぁぁ! あぁんッ。ユウリ、ユウリ…!」 「坊ちゃん、よく見て。ご自分でもできるようにならないと」 「ひぁぁ! ダメ、なんかヘンっ、おかしくなるぅッ!」 マスターベーションを覚えてもらわなくてはいけないのに、今の坊ちゃんにそんな余裕はないようだった。 「あぁ、ダメ、もうダメ! なんか出るッ! お、おしっこ、漏れる…!」 縋るような目をして、坊ちゃんはいやいやと首を振った。目のふちが赤く、涙ぐんでいる。 内ももをぎゅっと閉じて抵抗するが、そんなことで私の手は止まらない。 「坊ちゃん、それはおしっこではありません。どうか我慢なさらないで」 「あっ、あぁぁん! ユウリ、ヤダッ、手、止めてッ! もう出ちゃう、出ちゃううぅぅぅ!!」 脚がガクガクと震え出す。もう限界は近い。いっそう激しくしごいてやると、 「はぁぁぁんッ!!」 坊ちゃんは女の子みたいな声を上げて、私の手のひらに射精した。 「はぁっ、はぁっ…!」 べったりと手についた精子を見せながら、よくできました、と微笑む。 正真正銘、初めての射精だ。肩で息をしながら、坊ちゃんは気恥ずかしそうに、そして恍惚とそれを眺めた。 「白いおしっこが、出るなんて」 「ですから、おしっこではありません。これは生理現象ですから、病気ではないのですよ」 「う、うん……」 「溜め込むと体に毒ですから、時々きちんとご自分で処理して、射精してくださいね」 言いながら、汚れた手とペニスをティッシュで拭く。ティッシュで優しくペニスに触れてやると、坊ちゃんはまた小さく喘いだ。 「あぅ………」 ぴくっ、と内ももが震えた。坊ちゃんはまた涙を浮かべて、私のメイド服のエプロンを掴む。 「自分で、処理するって…?」 坊ちゃんはこてん、と首を傾げる。「ですから、」彼の手を取り、自身のペニスに導いた。 「オナニーを覚えてください。先ほど私がしたように、ご自分でおちんちんをこすって、精子を出すんです」 「あ……あぁ…そんな、…自分で…なんてぇ…」 坊ちゃん自身にペニスを握らせ、その上から私の手を重ねる。坊ちゃんの手ごと、上下にしごくと、また可愛らしい喘ぎ声が漏れた。 「はぁぁん…ダメ、また、おっきくなるぅ…」 「かまいません、何度でも出してください」 「あぁぁ! ヘンになるよぉッ、ユウリ、あぁ、ユウリッ!」 坊ちゃんはもう私がリードしなくても、自分で激しくしごいていた。私はその上からただ手を添えるだけにつとめた。 坊ちゃんはしきりに私の名を呼び、涙を零してこちらを見上げる。唇をツンと突き出して、キスをねだるみたいに、切ない顔をする。 「あぁンッ、無理、また出るッ、白いの出るぅっ」 「出して、坊ちゃん」 「ああぁぁっ! もうダメッ! 出ちゃう! ユウリッ、キスして、キスしてえぇッ!!」 悲鳴みたいな声を上げて泣く彼にキスを落とした。その勢いで、坊ちゃんが唇にかぶりついてくる。 「んッ、んふぅぅ、んむぅ!」 「っん…、坊ちゃん…」 年相応に拙く、でたらめな舌使い。余裕のない小さな唇が愛おしい。 キスでますます興奮したのか、坊ちゃんはさらに勢いよくペニスをこすった。カウパーが手の中で溢れていく。坊ちゃんは尻を浮かせて、あんあんと大きく喘いだ。 「あぁぁん、ユウリ、もぉ出る、出るぅぅっ!」 私の胸元に顔をうずめて、全身を震わせる。間髪入れずに、ぴゅるるっ、と精子が弾けた。 「あ…あぁ…」 「初めての射精は、いかがでしたか」 「………」 坊ちゃんは目を逸らし、小さな声で、…きもちよかった、と呟いた。 2度も射精したせいで疲れたのか、坊ちゃんはぐったりと私にもたれかかり、力なく腰のあたりに腕をまわした。私を抱きしめているつもりなのだろうか。 荒い呼吸を繰り返す坊ちゃんの額に口づけを落として、時計を見た。余裕をもって起こしに来たので、遅刻ギリギリというほどではないが、急いだほうがよさそうだ。 「さあ、坊ちゃん。学校へ行く時間ですよ。朝食の用意もできていますから」 「なに言ってるんだよ。こんな状態なのに、学校なんか行かないよ」 「えっ?」 「まだ足りない。ユウリ、もっと教えてよ」 …えっ。思いっきり素の声が出た。 坊ちゃんは私に抱きつきながら、目に妖しげな光を灯して見上げてくる。 「今日は学校を休むよ。ユウリに性教育を教えてもらう」 「…でも、私にも学業が…」 そうなのだ。私は旦那様のご厚意で、以前から学校に通わせていただいている。今は5年制の高等学校の4年生だ。学業以外の時間を、この屋敷のメイドとして働いて過ごしているのだ。 旦那様のご恩に報いるためにも、そうやすやすと学業をおろそかにするわけにはいかない。私は強い口調で、いけません、と言い切った。 「いけません、パンナコッタ坊ちゃん。私はきちんと勉強したいのです。テストも近いですし」 「勉強ならぼくが教えてあげる。いいだろ」 「ええぇ…」 たしかに、坊ちゃんは私なんかより遥かに頭が良い。お互いに教え合えばwin-winだろうなどと言われては、反論の余地がない。 「ユウリ、どうしてなにも言わないんだよ」 「えっと…」 歯切れ悪く、はっきりしない私に苛立ったのか、坊ちゃんの表情が険しくなる。 そして私は悟った。もうはじめから、私の運命は決まっていたのだと。このひとに逆らうことなんてできないのだ。 坊ちゃんの左手を取って、誓うように、その手の甲に口づけをした。それでもなお坊ちゃんは言う。 「ユウリ、言ってよ。自分が誰のものなのか」 「………えっと」 「言えって」 「…パンナコッタ坊ちゃん。私の生涯はあなたのもの」 全てあなたのお気に召すまま。 そう言うと、坊ちゃんはようやく満足そうに微笑んだ。 終 2019.04.20 お題「ショタフーゴとメイド夢主で精通ネタ」 |