淫魔なブチャラティに手取り足取り
 この世には様々なスタンド使いが存在する。
 幅広く応用できる能力もあれば、使いどころの限られた能力もある。そのどれもが、意味のある能力だった。

 しかしブチャラティは今、困り果てていた。ひょんなことで喰らったスタンド能力が、あまりにも意味不明だったからだ。

「…まいった」

 思わず盛大に溜め息を吐き、片手で顔を覆った。

 ―――コトの始まりは、今朝がたポルポに呼び出されたときだ。ブチャラティは、たまたま居合わせただけの、別のチームに新しく配属になった新人を紹介された。
 スタンド能力を得て間もないその新入りは、まだスタンドのコントロールが完璧ではなく、ふとした拍子に能力を暴発させ、止めに入ったブチャラティ相手に能力を発動させてしまったのだ。

 そしてそのスタンド能力は、完全にブチャラティの理解の範疇を超えていた。

 それは決して、相手を傷つけるようなものではなかった。しかし、その新入りの口から、自身のスタンド能力を説明されたとき、ブチャラティは戦慄した。


 ―――『このスタンドは、触れた相手を淫魔に変える』―――










 淫魔。夢に化けて出ては、人間の精を搾り取る夢魔。性別によって、サキュバスやインキュバスと分けて呼ばれる。

「待って、全然意味がわかんない」
「ではよく聞け。もう一度説明する」

 いたって真面目に、淫魔について再度説明し始めたブチャラティに、ユウリは「そうじゃないわよ!」と声を荒げた。

「急に押し掛けてきてなにかと思えば、『淫魔になってしまったから手伝ってくれ』って、どういうことなのかまったく意味がわかんないのよ!」
「安心しろ、この状況は俺もよくわからん」

 いつものキリッとした表情で言い切られ、ユウリは思わず脱力した。
 ぼすっとソファに座り、クッションを抱える。よくわからない状況だが、とても目の前の男が冗談を言っているようには思えなかった。

 なぜなら、ブチャラティの背中には黒い悪魔のような羽根と、自在に動く細長い尻尾が生えているのだ。

 ブチャラティとは長い間友達以上恋人未満で、時折り、気まぐれに体を重ねるような関係だった。恋人のような強い結びつきはなかったが、互いのことを深く信頼していた。だからこそブチャラティは、この事態に、真っ先にユウリを頼って来たのだ。

「でもインキュバスって、夢の中で女性を犯して妊娠させるんでしょ。ブチャラティあなた、私を妊娠させるつもりなの?」
「…いや、そういうつもりじゃあ…」

 歯切れの悪いブチャラティに、ユウリは首を傾げる。
 ユウリのマンションを訪ねたときからどことなく顔色が悪かった。落ち着きを取り戻したユウリは、大丈夫なの?と声を掛ける。

 ブチャラティはこうなってすぐに、そのスタンド使いの新入りに、能力の全貌を聞いていた。新入りはまだスタンド使いになって間もなく、謎の多い能力だったが、大まかな効果と解除方法はわかっていた。

「…死ぬような能力じゃあないが、早急に対処しないとマズい。お前には迷惑をかけるが…、こんなこと、お前にしか頼めねえ」

 ユウリの胸がきゅっと疼いた。ブチャラティはズルい。真剣な顔でそんなことを言われたら、断れるわけがない。
 仕方ないわね、とわざとらしく言って、ブチャラティの手を握った。彼の筋ばった大きな手が、熱をもって握り返してくる。

「私にできることなら、協力するわ。…なんとなく想像できちゃったけどね」

 察しの良い彼女にふっと微笑み、ブチャラティはグラッツェ、と呟いた。

「ベッドに行きましょう」

 話が早い。ブチャラティはユウリの細腰を抱くと、幾度となく肌を重ねてきた寝室へもつれるように移動した。









 淫魔、といっても、今のブチャラティは女を種付けするのが目的ではない。スタンド使いの男が言うには、淫魔の本質である精の搾取―――それが限度まで行われたとき、このスタンド能力は解除されるという。

 …つまり。

「ん……」

 唇より先に舌がふれる濃厚なキスを受けながら、ユウリは男の首に腕をまわした。その腕は背中に下りてゆき、なにか確認するように肩甲骨のあたりを撫でる。

「本当に生えているのね」
「ああ」

 淫魔といえば、創作などでは尻尾や悪魔の羽根が生えていることが多いが、ブチャラティの見た目はまさにそんなポピュラーな装飾が施されていた。
 
「ねえ、どうしたら良いのか教えて。いつも通りじゃダメでしょう」
「そうだな…」

 ブチャラティはユウリの額にキスを落とすと、少し言いづらそうに、耳元で囁いた。

「…特別なことは必要ない。ただ感じてくれさえすればいい」
「すごいこと言うのね」

 わかりやすく言えば、ブチャラティはひどく渇いていた。その渇きを潤すことができるのは、女が快感を得たときに発する精気だけだ。

「つまり、私はこれからブチャラティが満足するまで、搾り取られちゃうってわけね」

 からかうように笑うが、ユウリの言うことは当たっている。
 見つめてくるブチャラティの目が真剣で、そして、燃えるような劣情を孕んでいたので、ユウリはそれが正解なのだと悟った。

 ブチャラティの指が、ユウリのシャツのボタンをひとつずつ外していく。じらすように、ゆっくりと。

「…なんだ、これだけで感じてるのか」
「わかるの?」
「ああ」

 ユウリが快感を得るたびに、精気が放たれ、ブチャラティの渇きが少しずつ満たされていく。先ほどのキスでも、彼女はいたく感じていた。
 ユウリが感じているのが、肌でわかるのだ。怪我の功名というべきか、ブチャラティはそれが嬉しかった。

 トップスを脱がし、ブラジャーも外す。ふっくらと柔らかい乳房を、ブチャラティは両手で包んだ。その柔らかさを確かめるように、優しく揉む。

「…ん」

 フェミニストを気取るわけではないが、ブチャラティの愛撫はいつも優しい。しかし乳首を舐める舌はねっとりと絡み、音を立てて責め立てる。

「あッ! 気持ちいぃ、ブチャラティ…!」

 ユウリは腰をくねらせ、ブチャラティの頭を抱きしめた。彼女の素直な反応が愛おしい。その反応に比例して、ブチャラティの渇きも満たされていく。

「んぅっ、あぁん…!」

 ブチャラティは丁寧に両方の乳首を味わった。小さな乳輪を舐め、上目遣いに見上げると、ユウリは泣きだしそうな顔でブチャラティを見つめていた。

「乳首ばっかりじゃ、イヤぁ…」
「仕方ないな」

 腰から太もものラインをなぞるようにスカートを脱がせると、ブチャラティはすでに水気を含んだそこを見下ろした。

「下着は自分で脱げ。どうなっているか見せてくれ」
「もう…」

 甘く息を吐いて、ユウリはゆるゆるとショーツを下ろした。その恥ずかしそうに伏せられた目元がたまらない。
 露わになった陰部は、男を誘うようにしっとりと水気をまとっている。うっすらと生えた隠毛は水滴を含んで、ブチャラティの愛撫を待っていた。

「漏らしたみたいになってるぞ」
「そんなこと、ない…」

 震える腿を両手で押さえて、ブチャラティはそこにしゃぶりついた。尻を持ち上げるような勢いで押さえつけ、溢れるしずくを飲みくだす。「あッ…」ユウリが弱々しく喘いだ。

「あぁっ、それだめ! あぁん、あっ、あ〜…ッ」
「スゲェ感じてるな。イっていいぞ」

 器用に包皮を剥き、硬くした舌でクリトリスをねぶる。ユウリのいちばん弱い場所だ。そこを舐めると、彼女の精気がいっそう濃くなり、ブチャラティの全身を満たした。

「いやっ! あぁん、そこ、本当にだめぇ!」
「ダメじゃあねーだろ」
「あん、ダメ、ダメなのぉ! あぁん、イッ、イッちゃうぅ!」

 ユウリがイキそうなのを察して、ブチャラティはさらに激しくそこを責めた。ユウリの奥から溢れた水分が、ブチャラティの口元を濡らしていく。

「あぁぁんっ! あぅん、もぉだめ、イクぅぅ!」

 ユウリは細い指先でシーツをつかみ、ビクビクと身体を仰け反らせた。
 その瞬間、今までとは比べものにならない強烈な精気が、ブチャラティに流れ込んでくる。甘いミストを全身に浴びたみたいに、かぐわしく、ブチャラティに潤いを与える。

「あぁッ…!」
「ブチャラティ?」

 ブチャラティはユウリに馬乗りになり、夢中でその唇を奪った。呼吸のひまも与えず、嵐のように口付ける。
 言葉にして伝えたことはなかったが、ブチャラティはユウリを愛していた。
 愛した女の精気で、全身が満たされていく。その感覚はすばらしく甘美で心地よく、ブチャラティにかつてない感動と快感をもたらした。

「んッ、ブチャラティ…」

 キスの合間に、途切れ途切れ、ユウリは言う。

「…あなたも、少しは満たされた?」
「ああ。すげえ感覚だぜ。…だが」

 まだ、足りない。
 掠れた声で囁かれ、ユウリは頬を赤くした。身体の中心がまた、とろりと溶け出す。

「…足りないなら、全部あげる。あなたの好きにして」
「お前な…。どうなっても知らねえぞ」

 挑発するように微笑むユウリに、ブチャラティは噛みつくみたいなキスをする。ブチャラティは白い腰と背中に手をまわすと、その華奢な身体を反転させた。
 ユウリはバックから責められるのが好きだ。ブチャラティは、四つん這いの白い尻をいたずらっぽくぺちんと叩いた。

「あっ!」
「こんなのも良いんだな」
「そ、そういうわけじゃ…!」

 口ではそう言っても、彼女の身体から滲み出る精気の流れが、なによりも快感を物語っている。

 ブチャラティはボトムのジッパーを下げ、ペニスを取り出した。ユウリの精気を浴び続け、そこはすでに痛いほど勃起している。
 ペニスを何度かこすり、濡れてやわらかくなった割れ目にあてがう。

「あッ…ブチャラティ。んッ、いま、イッたばかりだから、ゆっくり…」
「ダメだ」
「あぁぁぁんっ!」

 無遠慮に腰を打ち込まれ、ユウリは声を抑えられなかった。達したばかりで敏感になった内側の肉を、容赦なく彼のペニスが責めたてる。
 快感に浮かされた頭で、ユウリはふと違和感を覚えた。いつもとはペニスの感じが違うのだ。そこでハッとする。

「ちょっと、ブチャラティ、今、な、生で入ってる…」
「そうだ。今、気づいたのか」

 言いながらも、腰の動きは止めない。

「あっ、あん! そんな、あっ、だめぇ、あん、だめ、きもちいぃ」
「ふっ、どっちなんだよ」
「あぅん、あん、いい、きもちいいのぉっ」

 繋がった部分がくちゃくちゃと音を立てて、欲情したふたりを煽る。ユウリの奥を突くたびに、彼女の放つ精気と快感とで、ブチャラティの身体に電流がはしった。快感に呼応するように、ブチャラティの羽根がバサッと大きくはためく。

 淫魔化させるこのスタンドは、種付けが目的ではないと聞いていた。だが、ブチャラティは今になってそれを疑い始めた。
 それほどに、今、どうしようもなくユウリが欲しい。ユウリの奥に全てを吐き出して、彼女を自分のものにしたかった。

「は…ッ、ユウリ、スゲェ締まるッ…」
「あぁん、あん、ブチャラティのおちんちん、きもちいいんだもんっ、だめ、あっ!」

 またイキそうなのだろう、精気がさらに濃くなった。
 ブチャラティは細腰を逃げないようにがっしりと押さえて、夢中で腰を振った。もう、避妊具なしで繋がっていることに配慮する余裕はなかった。
 ユウリも自分のイイ場所にこすれるように、尻をふって喘いでいる。

「あぁぁん、もぉダメ、いっちゃう、またいっちゃうぅ」
「ッ、俺もだ、…中に出すぞ」
「あぁぁっ、だめ、それだめぇっ」

 言葉とは裏腹にユウリの膣はキュンキュンと締めつけて、射精を促す。素直な身体が愛しくて、ブチャラティの下腹が甘く疼いた。
 しかし、だめ、と振り向いたユウリの表情があまりに色っぽくて、思わず腰の動きを止めた。ユウリは切なげな声で、言った。

「ブチャラティ、だめ。…あなたの顔が見たい。顔を見ながらイキたいの」
「ユウリッ…」

 限界だった。ブチャラティは結合部が離れないようにユウリの身体の向きを変え、正常位にすると、無我夢中で腰を振った。

「あぁッ! 良い、いいの、あぁん、ブチャラティ、すごい、あんッ、きちゃう、もぉイくぅ!」

 上にのしかかる男の首をかき抱いて、ユウリは達した。ぶわ、と精気が広がり、ブチャラティの快感をいっそう鋭くした。

「あぁ、出すぞ…! ッ、イく…!」
「んんぅっ、ブチャラティ…!」

 キスで唇を塞がれ、息ができなくなる。同時に、中で勢いよく射精されているのがわかって、ユウリは身体をふるわせた。不快感はなかった。
 離れていく唇を追いかけて、ユウリはまたキスをする。

「妊娠させるつもりはないって言ってたのに、中出ししたわね」

 うらめしげな口調だが、表情はいたずらっぽく微笑んでいる。
 ブチャラティは彼女の精気を全身に浴びながら、バツの悪そうな顔をした。黒い尻尾がふらふらと揺れている。

「すまん。だがこれは淫魔のスタンドというよりも、俺自身の本能かもしれない」
「えっ」
「愛してる」

 ブチャラティはユウリの顎をつまんで、その唇を覆うようにキスをした。
 言葉で伝えるのは得意じゃない。舌を絡めて、こぼれた唾液を飲み込む。こめかみのあたりから手を差し入れ、髪を撫でた。

「…言うのが遅いのよ」
「悪かった」

 額と額、鼻と鼻をくっつけて、微笑み合った。
 まだ足りない。淫魔のスタンドはまだ落ちていない。ブチャラティは、繋がったままの下半身をゆっくりと動かした。

「最後まで付き合ってもらうからな」
「…好きにしてって言ったでしょ」




2019.04.12
お題「ブチャラティで裏」「ブチャラティに手取り足取りエッチなことをされる」
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