"この部屋は共通のほくろを見つけないと出られません"

そもそも、そんな共通点あるのかな。それが本音だ。兄弟としての共通点は同じ名字、それしかないのではというくらい俺と朝也は似ていない。ああでも背格好とかは似てるのかな。喋り方も似てると母さんに言われたことあるっけ。
え、でもほくろ?

ちら、と微妙な顔をしている朝也を見たが少なくとも見える場所には、共通のほくろはなさそう。つまりは服の下まで見る羽目になりそう。なかったらどうするんだろう、出れないのかな。ほくろのせいで。

「腕出して」

朝也の出した腕を軽く捲くって、俺の腕と並べる。朝也の方が微妙に腕が細いし、多分俺より長い。色は同じくらい、あと体毛の薄さも。
あ、ほくろ。でも朝也のほくろは手首にあって、俺は肘のそばと手の甲。うーん。

「共通のって、あると思う?」
「わかんない」
「だよなあ。朝也、胸とか腹にある?こう、風呂入った時に見たりしない?」
「多分ない...うん」

ちらっと首元を引っ張って覗きこんだ朝也は頷いた。俺は鎖骨のそばにあるくらいで、でも朝也はなさそうだし。
ちら、と視線を下ろしていく。最悪下半身も見て探さなきゃ行けないのだろうか。

「じゃあ背中見して。自分じゃ見えないだろうし」
「え...わか、った」

なんだその間。別に見たくて見るわけじゃないんだからな朝也。
視線を気にしてか、背中を向けてシャツを脱いだ朝也。おお、ちょっとレアなものを見た気がする。筋肉は多分ないけど、背中の形のバランスが良さそうに見える。ちょっと反った背中から肩甲骨が張り出している。

なんか...

「羽生えそう」
「なに言ってるの兄さん」
「ごめん...ええっと、ここにあるほくろ。背中の真ん中より少し右寄り...」

説明しながら伝わるのだろうか、と思って勢いよくそのほくろに指で触れる。あ、鳥肌たってる。

「に、いさん...!」
「くすぐったかった?ごめん...あと、ここ。首のとこ、...あ、髪に隠れてるけどここも」

うなじのところにあるほくろは見落とすところだった。さりげなくちらりと見えるところに色気を感じるのかな。ほくろですら味方につけるのか。すごい。
にしても、そんなくすぐったいのかな。触るたびにびくびくされると悪いことしてる気分になるんだけど。

すごい恨めしい顔で見られてる。

「兄さんも見せて」
「わかった」

もちろん、とシャツを脱ぐ。別に見せて困るものでもないし。
なんか、朝也の息をのんだ落としたけどなんだろう。ほくろだらけ、とか。それとも傷とかあったっけ。

つ、と指でそっと撫でられて思わず「うわ」と声が出た。なんだそのさわり方。

「変な触り方やめて」
「思わず...じゃなくて、ここにあるよ」
「そこか...うーん」

多分全然違う場所だ。これは下半身も見せるコースなのか...?

「あ」
「まだあった?」
「ここ」

指が触れたのは、項の方。それ、確か同じ位置に朝也もあったような...。
がちゃ。

「開いたね」
「...よかった」

ほっと息を吐く朝也。そんなに身体見られるの嫌だったのか、ちょっとショック。

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