「あーあ」

蹴ったせいでぐらついた水車を支えたのは宍戸だった。その冷たい声に、快感ではなくぞわりとしてしまう。

「す、いません...」
「まあ仕方ないけど...そういうのも考慮しなきゃ行けないし。壊したら堪らないけど。でも威力はすごいっていうのは分かったよ」

ちら、と宍戸は赤く染まる深山とイってもなお舐められ続けて勃起したペニスを興味深そうに見つめた。
白い精液が絡み、先走りでぐちょぐちょになったそれは刺激が止んでも余韻に震えている。見られていて慌てて太ももを閉じると、宍戸は水車をまた椅子の上に置き直して位置をさっきより後ろにズラす。

さっきみたいなことにはならなそう、と深山は安堵した。

「まだやって見たいことあるんだけど、いける?」

目にじんわり涙をにじませ、頬を紅潮させる深山とは正反対に宍戸にとってこれはただの仕事でそれ以上でもそれ以下でもない素振りだ。実際そうなのだろう。深山は自分ばかりが意識していることを思い知らされていた。

そして深山はここで呆れられて頼られなくなるのは嫌だった。宍戸に見捨てられることだけは。

こくり、と頷くとパッと宍戸は顔を緩めた。
宍戸も上着を脱ぎ、シャツの裾を捲りあげベッドに乗り上げると深山の後ろに座る。宍戸の足と足の間に深山が座ることになる。予想外の急接近だった。
深山より小柄だが男の体躯で、深山をしっかり支える宍戸の胸板の存在感は深山の鼓動を早めることになる。汗ばんだシャツの身体を宍戸が抱え込むようにして支えられ、急に深山は自分の体臭が気になり始めた。

「僕が抑えてるから、今度は蹴らないようにね」
「っす...」

そう言って剥き出しの太ももを容赦なく押さえつけられ、力が込められればもう逃げることは出来ない。宍戸の手は男のもので無骨で、ただその仕事を遂行するために動いているようだった。

(これは仕事...)
深山は自分に言い聞かす。自分の感情に左右されないように深山は来たる刺激を待ち構えた。

カシャンという音とともに再び回転を始める水車は、先ほどとは違い距離が遠のいたため舌先だけがペニスにぺしぺしと当たっている。指先で叩かれるだけの軽い刺激だ。さっきより楽だ、と深山は思った。

「ん、ふ...」

玉をちょこっと叩くような刺激はあまり強くなく、じんわりとした気持ち良さがずっと続くような感じだ。
ゆっくり熱が引き戻されるような感覚。深山はゆっくり宍戸の身体に体重を預け始めた。

「どう?」
「なんか、丁度いぃ、です...っ」

太ももを押さえつけていた指がいたずらに内腿を撫で、思わず息を詰める。カッと体温が上がったのが宍戸にばれていないか、深山はそんなことを気にしてしまう。

「じゃあ、これどう?」
「ひゃあっ!せ、せんぱい!」
「んー?」

ひた、とペニスに当てられた暖かい手のひらに深山は飛び跳ねる。慌てて太ももに力が掛かるのにハッとして力を抜くものの目の前の光景に深山の目は釘付けになった。
宍戸が深山のそそり立つペニスの根元を掴んでいた。

(やば...)
好きな人に、仕事とはいえ触られているとときめいてしまうのだ。一方でその手が精液と先走りとローションで汚れるのに申し訳ないような気持ちが溢れる。
そんな深山の気持ちを知ってか知らずか、ペニスの根元にググッと力が込められ、腹にくっつく程そそり立っていたペニスがどんどん頭を下げていく。
そうなれば何が起きるか、深山は身をもって思い知る。

「っ、!」

亀頭に絶え間なくぴたぴたと当てられる舌先に、深山の顔は強張る。その部分は幹や玉よりよっぽど敏感なのだ。

「はうっ」

ぴしっぴしっぴしっ。
びちゃっぴちゃっぴちゃっ。

「あううッああっ」

収まりかけた熱が一気に身体の中で盛り上がって来る。

「先っぽ、あ、あっ...せんぱいッ」
「なぁに」

(ああダメだ先輩...すき)
耳元に熱い息がかかり、心臓がばくばくする。そんな吐息と声に興奮を抑えられない。

「あああッ!...あた、ってるぅ、んんっ」
「先っぽ気持ちいい?」
「っ、はい!...きも、ちいぃです...だめ、あっあんっああーーッ!」

角度を変えてカサの部分をくすぐるように当てたり、先端の穴をぴんっと撫でるように舐められ身体が快感に翻弄される。
ぐったり体重を預けては刺激に身体が強ばっていく。この短い時間でどんどん自分の身体が変化していくのを深山は感じて、恐ろしい気持ちになった。

「うっ動か、さない、でぇッやああっ!」

のたうち周りそうになる身体も、後ろにある身体が制御する。それでも暴れそうになると太ももの上に、後ろから足が乗っかって来る。力をかけられ足を開かれ、逃げようがなくなる。宍戸からも、この水車からも。

「せん、ぱい...っせんぱい!」

ぴしっぴしっぴしっ。水車の回転が早くなっているように感じるほど、快感の込み上げ方が早まる。勝手に腹筋に力がこもり、悲鳴のような声が上がる。

「せんぱいっ!なんか、なっ、ぁ、んぁっ!」
「これが出来るか試したかったんだよね...力を抜いて深山」
「ひ、ぃ、い――!おかひっ、おかしぃッ...あ゛ッあ、ぁ、あ!」
「恥ずかしくないから、深山。僕がついてるから」
「っ、せんぱ、ぁッ!...くるっ、...ああッ!きちゃうッあ、あっ、あ、あ゛あ゛―――ッ!せんぱいっ、いや、死ぬっし、んじゃうッ!」
「大丈夫」
「あ、ぁ、あ、んぅ―――ッ、―――ッあああっ!」

ぐぐっと体を伸ばして、頭を宍戸の肩に押し付けて大声が飛び出る。ぎゅうっと宍戸に押さえつけられながら、身体は強ばりがくがく震えて、頭が蕩けていくのを深山は感じていた。むき出しの神経を勢いよく打たれ、快感の荒波にもみくちゃにされる。

「っ、...あ゛あ゛ッッ...ひぃい―――ッ!」

(漏れるっ)
精液ではない何かが一気に管を通っていき、プシャアアと吹き出す。噴水のように溢れた水分が腹と太ももと辺り一帯をびしょ濡れにさせる。

(なに、これ...?)
(この歳で、失禁なんて...)
びくびくっと震えるペニスから手が離れ、宍戸の足で水車が遠のく。

「すげー潮吹きだ。やっぱ出来るんだなあ...まあ、深山の身体が特別なのかもしれないけど」
「は......い、」

ぐったりと力を抜いた身体を完全に宍戸に預けて、ぼんやりと深山は宙を見つめ。



「おつかれ。よかったよー深山」
「う、先輩...」
「なにしょんぼりしてんの。深山のおかげであの玩具がかなり良いって事に気づいた。もうちょっと試行錯誤したら売り出せるかなあ」

にこにこと天使のように笑う宍戸の顔が見れず深山は俯いた。シャワーを浴びて拭けていない髪からぽたぽたこぼれた滴がシャツに吸い込まれていく。
距離を詰めた宍戸に身長差で簡単に顔をのぞき込まれ、鼻を摘ままれる。

「あまり気にするなよ−、あの反応を僕は待ってたんだし。むしろ深山はよくやってくれて、良い部下を持ったなあって思うんだけど」
「そうっすかね...」
「うん。あんなに潮吹き出来る人そういないよ?誇って良いと思う」
「嬉しくないですよ」

宍戸は、そう?と首を傾げている。そんな可愛い仕草に心を射貫かれながらも深山は自分の何もかも痴態を晒してしまっていることにもう後戻りが出来ないことを感じていた。
好きになったのが駄目だった気がする。会社の先輩で男性で、下半身のすべてを開けっ広げにして見せてついには潮吹きと来た。もうこれ以上見せるものなんてそうないくらいに。
(いつか先輩が結婚したら大泣きする気がする...)

「でも可愛かったよ。たくさん潮吹きしてて」
「もうお嫁に行けないっすよ」

深山は冗談でそんな言葉をこぼす。

「そしたら僕が責任もってお嫁にもらってあげるから」
「え」
「任せて」

どき、と胸が高鳴る。冗談に冗談で返すようなそんなテンションだった宍戸だが、深山はごくりと喉を鳴らす。その頭の中には今日の痴態など頭の片隅にもなく、消え去っていた。

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