突然だが俺は、アダルトグッズが好きだ。

いわゆる大人の玩具というやつを買って、集めて、使って、それが趣味みたいなものだ。こういうのってコレクターって言うのか?こんな悪趣味なやつそういないだろうけど。
三十路も迎え、つい最近加齢臭が気になり始めた俺は、異性にも同性にも残念なことに興味がない。そう気付いた時は流石に悩んだ。生涯ぼっちとか寂しすぎるし親にもしょっちゅう結婚しろとガミガミ言われるが、そんなものは聞き流すに越したことはない。何故なら、仕方がないからだ。生身の恋人なんてこのアダルトグッズがいれば、必要ない。

今となってはこのオナホやバイブやディルドやらの、こいつらが俺の恋人だ。

このオンボロアパートでの狭く貧しい暮らしも、こいつらのおかげで日々満足して充実している。
金は大概玩具で消し飛ぶ。毎日のように各メーカーが突飛な作品やら以前の改良版やらを出してくるからだ。供給過多。幸せすぎるのが目下の悩みだったりする。
帰宅したばかりの身体で届いたばかりのこのバイブやオナホなどの大人の玩具、特にお気に入りのアダルトグッズ企業が新しく出したばかりのオナホを早速開封する。箱に書いてある言葉は生々しいがよく読むのが大事だったりする。

何でも、突っ込んだだけで絶頂する男性社員続出とかなんとか。この会社は男性社員の使用感まで書いてあるのが特徴だ。つい最近は刷毛水車ならぬべろ水車という奇妙な製品を発売し、俺の購買意欲を誘った。ついでにそれはかなり気持ちよくていつもより相当乱れまくった。俺の夢はいつかこの会社に勤めることだ、毎日製品の試験がしたい。
中を覗きこむと、細かい凸凹が手前から奥まで続いている。指を押し込んでみるときゅう、と張り付く感じがある。確かにやばそう。
アダルトグッズ製品を作る会社が自信作と語る期待大の代物だ。ローションも最近出たフローラルな香りのものを出して、中にツプと注ぎ込む。
会社でこき使われ疲れた身体もこの時間で癒される。このオモチャたちで毎日オナニーするのが最高で堪らない。

疲れて元気のない息子をリズムよく撫でて軽く勃起させると、オナホの入り口に擦り付ける。

「ん、ん…っ」

違和感は拭えない。でも、ちゅう、と先っぽに吸い付かれる感触に堪らず声が出る。背筋がひり付くような、これはやばい、と感じている。それでも好奇心と興奮、未知の世界への探究心が勝る。
ゆっくり、何度もちゅぷちゅぷと音をわざと立てながら擦り付けて、焦らして焦らして焦らして。

「ふ、ぅ…っ、んく、」

入口のぶよぶよの柔らかい感じがどれくらい本物の女性のものと似ているのか俺には到底分からないが、確かにこの柔らかさは気持ちいい。

「はああっ、すごい…ちゅう、して、るッ」

先端とオナホの入り口が吸い付き、奥へ奥へと吸い込まれそうになる。
疲れた身体だが、期待感から俺の息子はバキバキに硬くなり、はあはあと息を吐きながらも、それをゆっくりゆっくり、押し込む。
ああ、やばッ。腰抜そ…っ。

「んんん〜〜〜ッ、はあ……ッちんこ、溶けちゃう…っ」

パッケージ通りに、挿れただけで危うく射精しそうになった。汗がぶわっと溢れて、頭からドーパミンが出ている気がする。つまりは、俺の興奮はマックスだった。
あっという間に終わるのも楽しくないから、ゆっくり扱くと中は確かに締め付けがいい。かなり狭い、まるで…そう、処女みたいに。俺は童貞だから処女がどうとかわからないけど?
その締め付けが今までよりもキツくうねるようで俺は予想以上の快感に腰ががくがく震えた。

「やば、っ…ぁ、あアっ!」

ちなみにオンボロアパートの俺の部屋は角部屋で、左隣には男二人が住んでいる。かなり怪しい雰囲気で、多分ゲイのカップルだろうと思う。距離感が明らかにそう。
まあそれはどうでも良い。
問題は、俺はちょっと喘ぎ声がデカイ。けど隣もそれなりにデカイから勝手におあいこということにしている。お互い様だ。つまりここだけ男の喘ぎ声が聞こえる魔窟になっている。誰得だよ。
だからこうして遠慮なく声を出す。壁の薄い安いアパート、誰かに聞かれていると思うと背徳感が止まらない、それが俺の興奮に拍車をかける。だって、声を出すって気持ちいい。

「ああっあ、あ、ぁ、んっ……んっ」

何もかも搾り尽くすような締め付けに、息が切れる。そろそろ最後のフィニッシュだ。手を早めて、強めに握りながら腰を前後に激しく振る。

「っ、あああッッ!…ッいくいくッ!ーーーッ!あっ、せーし、出てるぅっ…っ!」

どぷ、と出ていく精液がオナホの中を満たし、お風呂に浸かっているような気分になる。はあ、すっきりした。想像以上に気持ちよかったなコレ。ちゃんと口コミ評価しておこう。次回も期待していますの文字を添えて。
よしこのまま風呂に入ろう、と気を取り直したところで突然ピンポーンと玄関のインターホンが鳴る。
誰だろう、もしかして声がうるさかったか?アパートの人だったら結構気まずいな。今まで注意されたことないのに…。だが無視するわけにもいかない、万が一にも大家さんで追い出されたら堪らないからな。
いそいそと前をしまい、何となく気配を潜めながら覗き穴を覗くとそこには…隣のゲイカップルの2人がいた。
怒った顔はしていないが、もし声がうるさいと言われたらお前らのことも正々堂々と言い返してやろうと堅く心に決め、少しもったいぶってドアを開ける。
開けた途端目が合った方ににこやかに微笑まれる。あれ、何その反応。

「こんばんは…?」
「どうも」
「ええっと…どうしたんですか」
「実は、ですね…御坂さんの喘ぎ声が…」

ほらきた。やっぱりだ。

「聞こえてて、最近僕たちカップルは…あ、僕たちゲイなんですけど、あんまりセックスのときなかなか興奮しなくて、失敗が多いんですよね、お恥ずかしい話ですが…あはは、それで実は……さっき御坂さんの喘ぎ声にはちょっと興奮して」

はい?

耳を疑うような、おかしな内容が聞こえた気がする。喘ぎ声が聞こえて、までは普通だった。カップルの話もまあ良いだろう、人それぞれ問題はあるだろうし。だが最後、何だって?
いざ言い返そうとしていた俺は空回りで何も言えなくなった。
俺の声に、興奮?

「良かったらもっと喘いで欲しいんですけど…お願いします!」

俺の目は喋る細身のネコっぽい方を見つめると、その股間部分がしっかりと膨れ上がっているのに気付いた。まさか、と隣のガタイの良い方の股間も見る。布を押し上げ、驚くほど大きくなっている。いやいや待て待て。どっちも興奮してんの?俺に!?
そうしてようやく言葉の意味が理解出来た。

「えええっ!」
「お願いします!」

何がだ!
いやいいです、意味分かりませんと首を振ったのに突然正面からドンっと押され、俺は尻餅をついて狭い玄関に倒れ込む。尻に響いた激痛に顔をしかめた。
だけどガチャと鍵が掛かる音が聞こえ、それどころじゃなくなった。一気にサッと自分の顔が青ざめるのを感じる。
あっという間にデカい方に抱え、連れていかれ、俺の狭い1人用のベッドの上にぽいっと転がされる。
待て待て待て待て!どんな展開だ!AVかよ!?

「ちょっ…!?」
「お礼もしますよ〜」

押さえつけてくる細身の方はもうベルトを緩めている上に舌舐めずりをした。こわっ!
まだ常識の通用しそうなデカい方を縋るように見るも、腕を抑えられる。
もしかしてヤられる…?俺が?
簡単に前を緩められ、下着を下ろされる。そこにはもちろんオナって我慢汁まみれの俺のちんこが。

「美味そう」

にんまりと笑った男に、俺は再び怖っ!と叫んだ。

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