「今日はこれにしねえ?」

ベッドの上に投げた鞄からは学校で出た今日の課題のプリントがはみ出ている。面倒な課題ばっか出してくる教師だ、ま、そんなのは夜やれば良い話だ。

放課後は小中高の幼馴染み、川辺の家でぐだぐだベッドに寝転がってゲームをしたり、エロ本見たり…AVを見たりと過ごしてきた。
幼馴染みと言うのもあり気心の知れた相手だからどんな事も相談して来たしそこそこ喧嘩もして、仲直りもしてきた。
親友と言っても過言じゃない。小っ恥ずかしいから口が裂けても言えないが。腐れ縁みたいなもんだ。

今日は時短授業だったからいつもより早く川辺の家に来ていた。川辺の両親は共働きだから今は家に俺と川辺しかいない。この時間はお互いの暗黙の了解、当然と言えば当然、みんな大好きAV視聴会だった。
とりあえず傍にティッシュの箱を置いて、2人が座れる分のスペースを空ける。

今日は川辺のおすすめらしい。楽しみにしとけよと以前から言われていたから、一昨日から抜いてない。これで大したことなかったら一発殴る。

川辺がごそごそベッドの下から出してきたーーそろそろ隠し場所を変えるべきだ、絶対にーーAV、そのパッケージが目に入った俺は「はぁ?」と口に出していた。

こいつ…ついに頭おかしくなったのか?

「…んだよ、それ」
「ゲイもの。最近の流行」
「さ、最近…!?」

パッケージには黒く焼けた筋肉質の男の裸体、中出し、トコロテン、雄鳴き…そんな言葉が書いてある。
は…?トコロテンって、食い物じゃん。

それに最近の流行だと…知らない、そんな話は初めて聞いた。だが嘘つけ、と言いたいところだったが川辺は顔が良くて女にも男にもウケが良いし、そのせいか俺よりずっと友だちが多い。
流行について語るなら右に出るものはいないだろう。

「ホントかよ…」
「え、知らないの?常識だけど」
「…」

後に考えれば、そんな常識ある訳ないと言い切れる。だっておっぱいついてないんだから。綺麗な生脚だってない。チンコがある2人で何をするんだって。
でも、その時は俺は川辺の言葉を鵜呑みにした。
だってコイツが嘘なんかつくことなかったし…。
だから渋々頷いた。初めて見るゲイものに好奇心があることには気付かないフリをして。

「じゃあ、見る…」
「おし」

この言葉を後にめちゃくちゃ後悔する羽目になるとは、この時の俺は思ってもいなかった。

ノートパソコンにdvdを入れた川辺は早速大画面にした。なんとなく間近で見るのが怖くて、いつもより少しだけ後ろに下がった。いつもは前のめりになって見てるけど、今回ばかりはな。
ウィーン、と音がして再生される。ベッドしかない部屋で、寝ている男に体格の良いサングラスをかけた男がのしかかって行く。
ここまで見て思わず口を開く。

「ストップ」
「うん?…どうしたんだよ」

俺の声に川辺はとりあえず止めてくれた。
止まった動画では、今にも男に男が襲いかかる図が。妙にぴったりしたシャツを着ているせいで、盛り上がった凹凸、筋肉があるのがよく分かる。

「これ…本当に見るのかよ」
「だめ?嫌だった?」
「ダメっていうか…変な感じ。あんま、見ないしこういうの」
「何事も挑戦だろ?もし微妙でも、お前のお気に入りのやつもちゃんとあるから後でそれでお茶でも濁せば大丈夫」
「そっか…そうだよな」

じゃあ、と川辺は再生する。
映像の中では、早急にことが運んでいくから、あっという間にどっちも裸になって水音をさせながらキスしていく。男女のを見るより、でかい方の男の捕食みたいなイメージが強かった。

女役になる男は、息を荒げながら女みたいに喘いでいる。声が高くて艶っぽいっつうか、時折低い喘ぎもさせながら肌が汗ばんでいくのをカメラが捉える。

なんか、やばい。

何がやばいか分からないけど、気付けば画面をじっと見ていた。興味が強かった。女みたいになる男に。
そのせいで、川辺がこっちを見ているのに気付かなかった。そろそろと伸びていた手にも。

「勃ってるじゃん、しっかり」
「うわっいきなり触るなよ…!」
「てか…たまには抜いてあげるよ、久しぶりだけど」
「は!?良いって、俺そういうの嫌なんだって」
「良いから良いから」

伸びてきた手はいつの間にか緩く勃起した俺のに触れていた。

抜き合いっこは昔したことがある。男友達ならフツーと川辺が言っていて、嘘だろと思ったけど他の奴にも同じことを言われて、川辺にしてやったし、された。
するのは特に気にならなかった、自分のをしてる感覚だったし。

でも、されるのはやばかった。
川辺の力は俺より少しだけ強くて、敏感な俺は自分でする時はいっつもゆっくりやってたから、余計に。
逃げる腰を押さえつけて、扱かれてあっという間。はや、と笑いながら言った川辺がトラウマになって、週間口をきかなかったくらいだ。

だから、嫌なのに。

「やめろって…!ん、ぅ…ッ」
「はは、良い声出てるよ、ここが良いんだっけ、よく自分で触ってるよな」
「あ、ぁっ!ばか、ぁ…!」

右にいる川辺が右手を前から回してきて、未だに剥けてない、皮の覆われた先を小さくクチュクチュと扱かれ、腰がびくびく震えちまう。そこが1番ダメなのに、と川辺の腕を掴んでも、器用に五本の指が俺のチンコを気持ちよくさせる。
こいつ、こういうの無駄に上手くて腹立つ…!

「く、あ、ぁっ…でるっ、川辺出るって!」
「出して良いよ、俺の手で気持ちよくなって、イけよ」
「ひ、ぁ…ん、ぁっあっ…」

クチュグチュグチュッ
リズムもなくがむしゃらに、俺じゃ到底無理な速度で責め立てられ、つい腰が浮く。

「腰浮いてる…かわいーな」
「ちが、っあっ!……も、やだ、出るからぁっ」
「あー」
「あ、ぁ、んんっ……あ゛ーーッ」

ぽたぽた、と川辺の手を伝って垂れた精液はいつの間にか用意されたティッシュが受け止めていた。断続的に震える腰が、いつもより気持ち良いことを物語っている。

真っ白になった頭が、だんだん切り替わって、ふと、喘ぎ声が耳に入って顔を上げると、男がフェラをしていて悲鳴のような声を上げている。細い手が必死にベッドを掴んでいて、逃げようにも逃げられない。
うわ、男の咥えてんじゃん…。

「この声より良い声出してたよ、ケイ」
「っ…んなわけないだろ」
「そうかな」
「つか、あんま、っ耳元で話すなよ…っ」
「ごめんごめん」

離す瞬間、ふ、と耳に息をかけられぞわりと毛が逆立つ。不快感じゃない、もっと熱を持った何か。それが何か、知りたくない。

「フェラ、気持ちよさそー」
「そう、かよ」
「ケイされたことあんの?」

薄く笑みを浮かべながら聞いてくる川辺にむっとする。川辺は何かと俺が経験がないのをバカにする。当然こいつはあんだけモテるからあるんだろうけど。別に高校生で経験ないのなんてフツーだろ。
そりゃ早く脱童貞はしたいけど。彼女も欲しいし。

「やっぱされてみたい?」
「そりゃ、まあ」

そんなの童貞の夢だろ言わせんな。

ふうん、と言った川辺はその綺麗な顔をどんどん近づけてくる。不穏な空気を察知した俺はすかざす身をひこうとしたが、遅かった。

「じゃあしてあげる」
「はっ…?あ、ばか!おいっ」

出しっぱなしだったチンコに温かい息がかかって、あ、ちょっと気持ち良いとか思った瞬間にらヌルッと柔らかい口の中に取り込まれてた。
これ、やべえ…!

「か、川辺っ!やばいって、それ、ぇ…っ」
「そー?ひもひい、?」
「しゃべ、んなっ……い、ぁあっ」
「んふ、…汁出すぎじゃね?」
「ふ、うぅ…っ、ぁあッ」

川辺は、なんか手慣れた感じで、先っぽやくびれたところを舌でなぞりあげる。それが堪んないのに、逃げようとするのを、腰に回した手で押さえつけてくる。反射的に暴れそうになる身体も、川辺は容易く制御してきて、どうしようもない。
やばい、気持ち良すぎる。

「んっ、どー?」
「まっ、て…ひ、っうぅ……」
「ん、く…」
「あ、ぁあっ…ぺろぺろ、しない、でっ…ふ、ああっ」

じゅるっ、れろっれろっ
幹も舐め上げられ、怖いもの見たさでちらりと見下ろすと川辺は口に含みながら下からこっちを見上げてきていた。目が、合った。顔を見られてる、その瞬間顔がカッと赤くなって、どうしたらいいか分からなくなった。

逃げたい、でも気持ち良い。
初めての感触に戸惑いながらも、やみつきになりそうな気持ちよさだった。これをしてくれてるのが川辺という事実がなければもっといいのに。
あ、やば…イきそー…!

「ん、んぅ…っも、お……また、イく…っ」
「ん、ぐ…はや、そんなにいーの?」
「あ、だってぇ…そこ、やばい、ん…っ、んーッ!」

ぴちゃっびちゃっ
ぬるぬるっにゅるるっ
水音をたてながら全体をフェラさせられる。裏筋のところを、舌先でぐりぐり責め立てられると、反射的に声が上がって足が跳ねる。
逃げを阻む手に、快感をどこにも逃さなくなって気付けば川辺の顔に押し付けていた。俺なら、できっこない男のチンコを舐めるという行為を川辺は楽しそうに目元を細めて、ましてや俺の痴態を余すとこなく見つめてくる。

こいつ、性格悪い…!

「あ゛ぁっ!…も、でるっ…でる、せーし、ぃ、あ゛ぁっ!」
「ん…だひて、いーよ」
「だ、めぇ…っ!あ、あ、ぁ、あ゛ッが、わべっ」

唾液と我慢汁に溢れた口の中は、柔らかくぬめついていて、なのに時折当たる歯の硬い感触が、勝手に俺を絶頂の淵へと追いやる。逃げ場がなくて、辛い、つらい、気持ちいい。

「ごめ、っ…イく、いくか、らぁ…あ、イ、あ゛ああッーーー!」

腰が小刻みに震えるのを逃さないように川辺はケイの臀部を両手で鷲掴んで引き寄せる。喉の奥はもっと熱く、俺は身体を捩らせながら絶頂した。

home/しおりを挟む