薄い陰毛に鼻息が当たるのすら変に気持ちよくて、川辺は顔を顰めたものの、びくびく震える俺のちんこを口から出すと、手を伸ばして取ったティッシュに、うえっと精液を吐き出した。

「あ、は、ぁ…ッあ゛っ」
「うえー、まずっ」
「はっ、あ…あ、ぁ…かわべ、」
「なに?てか、たくさん出過ぎじゃね…?溜まってんの」
「おま、…はぁ、ぁ」
「つか、敏感すぎじゃね?そんなんで女抱けるの?」
「は、あ…!?」

疲れた身体を起こした俺は、川辺の方を睨む。相変わらずちんこは出しっぱなしだが、そんなのどうでもいい。なんて事言うんだこいつ!

「俺にも、抱けるに決まってんじゃん」
「へえ…不安だけどなあ」
「んなこと…っ」
「じゃあ、練習でもする?」

れ、練習?
ポカンとした顔で復唱した俺は、ふと視界で、AVの2人が音を立てながらキスをはじめていたのが入った。

「そ。女の子にキスする時とか、ちゃんと出来んの?」
「ちゃんとって何だよ。キスにちゃんととか、」
「気持ちよくするキスってあるじゃん」
「…え、っと」

AVによくある、くちゅくちゅ言わせているキスのことだろう。俺の脳裏にそれは浮かんだものの、なんせ初めてだ。どういう風に動かせばいいかはピンと来ていない。
当然知ってるだろ?というテンションで尋ねてくる川辺に俺は中途半端に口を開いて、結局閉じた。
そんなん、分かんねえ。

「やり方とか分かんない?」
「う、ん…おれ、初めてだし…」
「へえー」
「別に、そんなのぶっつけ本番で、」
「だめだめ。キスが下手くそだと振られるよ、すぐに」
「ふら、振られるのか…!?」
「そ。だから、俺が練習台になってあげる」
「練習台…?」

聞き覚えのある言葉の意味を理解するまで、俺は10秒はぽかんとしていた。
練習台…?え、それってどう言う事?誰と誰が練習すんの…?

川辺はおーい、と言いながら俺の頬をぺちぺちと叩いた。

「やわらかっ…」
「練習台って何だよ…え、俺お前とキスすんの?」
「キスしないで練習とか無理じゃん」
「恥ずかしいだろそんなの!お前と何でキスしなきゃいけねえんだよ!」
「えー良いじゃん」
「しかも俺の、せ、精液…っ」
「それはお前の出した奴だから良いじゃん」

川辺は顎に手を置きながら、ほら、と言わんばかりに俺を見た。

確かに手コキしてフェラまでして貰ったけど、キスもするのか…?

でも、女にはモテたい。男は欲望に忠実な生き物だし。俺も当然。
出来る男必須の技術なら欲しいと思うのは当然だ。
川辺はそんな俺をにやにやしながら見ている。
女に、モテるためにはやむを得ない。

「じゃあ…いーけど」
「んじゃ、ほら舌出して」

ちろ、と伸ばされた川辺の舌にビビりながらも自分のを絡めていく。

「んっ…んぅ、」

ぬめる、生き物みたいに動き回る舌が根本から先まで翻弄していく感触は気持ち悪さ以上にうっとりするような気持ちよさが俺の全身に迸る。
あれ、キスって気持ちいい…。

「ぁあ…んっ」
「ふ、…鼻で息しないと」
「わ、わかって…ん、うう」

歯列をなぞって、何度も角度を変えてくる川辺。上手い、と思わざるを得ない。
ぎゅうと硬く目を閉じていたのをおそるおそる薄ら開くと、そんな俺の顔を余すところなく眺める川辺と目が合う。うう、気まずい…。
これが果たして誰のための練習になるのか、俺は精一杯でその答えには至らない。

「んっんっ…」
「良い声…」

川辺の手に深く抱き寄せられ、腕を折りたたんだままで俺は絡んでくる舌にされるがまま。
そのままずるずると押し倒され、川辺がちゅ、と音を立てて唇を離すと糸が引いた。

はあはあ、と胸を上下させた俺は気付けばとろんとした顔をさせ、上気していた。

「どう?」
「どうって…気持ちいい、けど」
「んじゃ、次のステップな」

俺の着ているワイシャツのボタンを外していき、手早く脱がせる。
な、なんで…?ほどよく焼けた肌は微かに赤くなっていて、俺は怖くなって自分の身体を抱きしめた。なんでこんな事になってんだ…?

「な、なに…?」
「次は優しく脱がせてあげて、まず身体を触ってあげる」

あ、練習続いてんの…?
腕から腰をなで、薄っぺらい腹をゆっくり撫でる川辺の指先。その少しの感触すら追ってしまう。触れるか触れないか、くすぐったさに身を捩ると、今度は掌でしっかり撫でられた。汗ばんだところも全部。

「こんなんで、気持ちいいのか…?」
「だんだんかな。…こっちを触ってあげながらがいいかも」
「こっち……っ、あ、」

俺のくたりとしたちんこを川辺の手が包み込んで、やわやわと揉み始める。そこを触られれば嫌でも快感を感じてしまう。
イったばっかで敏感なちんこを、手早くむちゃくちゃに扱きあげられる。それ、やばい。
鎮まりかけていた熱が身体の奥底からじわじわと広がっていき、自分の身体が自分じゃない。怖い。

「あ、あんまり…っさわんな」
「もう2回もイったからね…何回かイかせてたら、あんまり責めちゃ駄目だよ。きついから」
「じゃあ、やめろって……あ、?な、何でそんなとこ触んの…?」
「女の子は乳首で感じたりするから。揉んであげたりしなきゃいけないの」
「んんっ…なるほど…でも、俺は別に…」

触っているところを見ると、焼けた肌の上にぽつり、小さな突起は綺麗なピンク色。あれ、そんな色してたっけ。
快感のせいか、触りやすくツンと尖っていて、川辺はそこを摘んで優しくくりくりと弄る。その触り方、恥ずかしい…!


爪でかりかりされると、嫌な感じ。摘まれれ痛みが広がり顔をしかめてしまう。
そして、乳首を上から下へ、親指で持ち上げるようになぞられると、小さく声が「あ、ん…っ」と溢れた。

「これが良いの?ケイって優しいのが好きなんだ」
「うう……ん、ぁ…その、触り方、やめっ……!っ、あぁッ」
「下からなぞるのも良いんだ。ふうん」

どんどん赤みを帯びていく乳首に川辺は舌なめずりをする。それがビデオの中の男優みたい。うまそ、と溢した川辺の小さな声は聞こえなかった。そのまま川辺の染められた頭が俺の胸へと落ちていく。
敏感な先っぽに、ザラッとした感触がなぞり俺はびくびくと震え、腰を川辺の手に押し付けてしまった。
まるで強請ってくるような仕草だったことに気付いて、慌てて離れるももう遅かった。

「ぁ、あっ…そっち、…あんまり……!」
「乳首触ってからめっちゃ硬くなってんじゃん、…女の子みたいに乳首で感じてるんだ」
「やめ、っ……バ川辺っ、もぉ、やだっ」

いつのまにか、2回出した俺のペニスは硬く熱を持っていて、その先からはとぷとぷと汁を溢れさせている。なんでこんな、出てんの…?

「ちょ、っ…また、イくからぁ……っ」
「分かった分かった…じゃあ、こっちね」
「ちょっと待て、おいおい!何でそんなとこ触るんだよ馬鹿!やめろ馬鹿!」
「バカバカ言い過ぎ。ほら、見てみなよ」

川辺の顔の向いた方に目を向ければ、すっかり忘れていたAVがまだ流れていて、タチの男が尻の方を探っているのが見え、俺は真っ青になった。
男同士なんてどうやってセックスするんだよ、という疑問の答え、それに流石にバカな俺も気付いてしまった。
そして、川辺はそれをしようとしている。俺に。

「え、俺の練習なのに俺がされなきゃいけないの!?アレを!?」

待て待て待て、矛盾してるだろ!おかしい。
画面を指差しながらも、そっちを見ないようにして叫ぶ俺。

「そんな変わんないじゃん、女の子のと」
「いやいやいや、だから俺の練習だろ!」
「女の子役すれば何されたら嫌とか痛いとか分かるようになるじゃん?それとも女の子に痛い思いさせたいのかよ、ケイは」
「そりゃあ…そんなこと、ない、けど…でも」
「セックスに思いやりがない男とか100パー振られる」
「…ホントかよ」
「痛い思いしてしかも下手くそって無理に決まってるだろ。気持ちだけでどうにかなるものじゃないよ。しかもセックスが上手いと女の子めろめろになっちゃうよ」

ソースは俺、とドヤ顔した川辺。俺の頭には天秤が浮かんだ。

片方にはモテたいし好かれたいという欲望丸出しの気持ち、もう片方には親友にケツを触られるという嫌悪感。ゆらゆら揺れ、しばらく迷ったあと、最後にはモテたい気持ちが勝ってしまった。男の欲望は無限大だ。
これきり、これきり、と何度も繰り返しながら絞り出すように「分かった」と俺は返した。

「じゃあ、やるか」

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