慣らすのはやってくれるらしいから、中を軽く洗って元彼への気持ちも全部洗い流す。熱いシャワーは気分をさっぱりさせる。それと同時にこれから初めて会ったばかりの人とするんだと思うと、身体の熱がなかなか引かない。
ラブホの部屋を不思議そうに見回していた彼は、出てきた俺にちょっと顔を赤らめていた。バスローブで包んでいても首元や火照った顔は直視出来ないらしい。いちいち初々しい反応するなと言いたくなる。そんな顔されるとこっちまで恥ずかしくなるのだから。
それから一応、保険だ。
「ゆ、!」
「ゆ?」
「緩くても、...何も言わないで...」
きょとんとして、噴出すように笑われる。笑い事じゃない一大事なのに。ちょっとがっかりした気持ちになる。
でも、くすくすと笑う彼の細くなった目に優しく見つめられ、また心臓が跳ねる。
「多分大丈夫だよ」
そう言って彼は前を緩めた。下着が、何かに引っ張られて張っているのがよく分かった。そして下着をずり下ろすとぼろんと出てきたのだ。凶器が。
「え…は!?」
「…あはは」
「なにこれ...っ」
でっっっっか!なにこれ!本当にちんこ!?
腕より太いんじゃないのこれ!
現れたのは長さも太さもある巨根で、一瞬で血の気が引く。これは簡単には入らないだろうし慣らしても怖いわけだ。脚がすくんだ、流石の俺でも。
「怖い?」
縋るような目で見られて、大型犬にも見える。もしかするとさっきの俺もこんな顔してたのかな。今度は俺が噴出すように笑ってしまった。
大きさばかりに目が行くけど、使ってないから色も黒くなくて清潔感に近いモノを感じた。変なの。
「ちょうどいいかも」
元気付けるように声をかけて、それから見せつけるようにベッドに仰向けになって足を開く。恥ずかしいのは一瞬我慢。彼はローションを手にしっかりつけるとそっと指を差し込む。
「ぁ、っ…」
ちゅぷ、という音が聞こえ顔が赤くなる。まず1本。1本ならするりと入る。でもすぐに指は増えなくて、何度も馴染ませるみたいにゆっくりゆっくり指を前後させる。どれくらいだろう、5分くらいかな。もう1本、本数を増やしていく。
ちょっと質量が増して、一瞬息が詰まる。
「あっ、...あっ」
ばらばらと指が動き、内壁をこすり前立腺を引っ掛ける。炎に炙られるように汗が吹き出して、抑えきれない声が忽ちあがる。
「んぅっ、ああっ...はあ、ッ」
「大丈夫?」
「ん、っ...うん、っ」
あー、なんかいいなあ。
思い出せば、セックスは入れるだけ、中に出すだけのようだった。時間は長かったけど愛撫の時間は少ない。腰を激しく穿つ時間ばかりで、こんな愛撫は受けたことがない。優しく肌を撫でられただけでぞわぞわするなんて、なかった。指がぬるぬると滑る感触が声が漏れ出るほど気持ちいいと思ったことは無かったのに。
「ああっ、ひ、ひ、ぃ」
「敏感だね」
「なんか、ぁ、へん、ッ」
ぬぷぬぷと出し入れするだけで俺のちんこからの我慢汁は止まらないし、快感がじわじわ包み込んでくる。
「指もこんなに締め付けてくるのに...緩くなんかないよ、よっぽどそいつが小さかったんだよ」
「んっ、んっ...ほん、と...ぁ?」
見つめると、きゅうと目を細めた笑顔があった。嘘じゃない。本当にそう思ってくれている。
それを知った瞬間ぽかぽか胸から気持ちが湧き上がる。胸を締め付けるような甘い感情。これはなに。
「きっと俺にはちょうどいいから」
俺の身体に反応して、ギンギンに大きくなった彼のペニスはとても大きい。何というか、野菜みたいで、ちょうどいいどころか俺でも大きいと思うんだけどなあ。
でも、嬉しい。素直な言葉が心地いい。何の含みも嘘もない。
「あ、あっ、......んっ、ま、って...!」
じっと顔を見つめていたら、浅いところを優しく撫でられる。
そこは前立腺で、俺のたまらないとこ。ずりずり擦られて身体が跳ね上がる。
「いく?」
「ぅんっうんッ!...まって、あっ、あッんぅ、ああっだめっ、―――ッ!」
我慢できず、どぴゅっと勢いよく出た精液は俺の胸の方まで飛んだ。トコロテンなんて恥ずかしい。前立腺を触っただけでこんなに気持ちいいなんて。そんなこと今まで無かったのに。
「ああっも、うっ…は、あ、」
「もう一本増やすね」
3本目が増える。
「ん、ふ、…い、ったばっか、だから…ッ」
「わかってるよ、苦しい?」
「ん、んんんっ、ちょっ、と、ぁ、あっ」
動きが緩くなって、太ももやお腹の辺りを優しく撫でられ、小さな快感がせめぎ合ってくる。余計に感じるんだけど。たまらずシーツを掴んで、枕に頬を擦り付ける。快感が逃げ場もなく身体の中を巡って広がっている。
気持ちよすぎる...!
「ああぁッもう、いれ、て…ッ!」
「まだ、3本しか指入ってないのに」
「じゅー、ぶんだから…ッ!」
「だめ…傷付けたくない」
きゅん、俺の鼓動が確かにそう高鳴った。少女漫画みたいに。馬鹿みたいだ、きっと一夜限りなのに、次はないのに、なんでときめいてるんだ。
なんで好きになろうとしてるんだ。
「はや、くぅっ…増やして、あ、ぁあッ」
挿れる前に何度もイってしまえば、最後まで保たない。彼は無理に意識がない間に突っ込んだりはしないだろう。そしたらもう二度とこんなことはない。そんなことは絶対に嫌だった。
深く呼吸をして、なるべく増える指を意識しないように目を伏せる。
ずず、と更に増す質量とみちみちに広がっていく感覚。いつまでも慣れないこの感じ。
ああ、でもこれ、
「あっんあっだめ、あ、っああ―――ッ!」
今までと比べものにならないくらい、余計に指の感触や肌に触れる息を感じて俺は肌が敏感になる。ちょっとシーツに擦れるだけでそこから快感を拾って、口を引き結んでも喘ぐ声が止まらない。たまらなく気持ちいい。
これ、やばい...!
「目、開けて」
促されて、そっと目を開けると彼は服を脱いでいた。筋肉質でもない、ごく普通の少し痩せただけの身体なのに顔から火が出るほど熱くなる。元彼のが細マッチョだったのに。見惚れるほど格好良いあの身体が、目の前の彼のごく普通の体型に塗り替えられていく。
「俺の身体、微妙?」
「そっ……そんなことない!」
勢いよく否定しすぎたのか、彼はまた噴出すように笑ってる。目尻のシワが寄るのがすごくいい。
「ほんとに?」
ぐぷ、とまた一本指が増える。両手を使ってナカを丹念に解されて頭が蕩けるような快楽だった。
同時に大切にされていると、錯覚してしまう。そんなわけないのに。
「あっ、んぅっ…すごい、あっ、いぃと…おも、うっ」
「良かった...嬉しい」
何だろうこれは何だろう。彼の言葉の一つで心臓は嫌なくらいときめく。鼓動の速度が上がって、気持ちが一杯一杯になる。
もう、おかしい。俺が、俺じゃないみたいだ。
「あぁーっ、あっんんんんん!」
もう1本増えて、優しく前立腺を6本の指で順々に愛でるように撫でられて、俺は悲鳴をあげてお腹に力を入れた。伸びきった足が震えながらシーツを打つと、指は丁寧に1本ずつ抜けていく。すっかり中には何もない。
埋まっていたモノがなくなって、寂しい。そんな気持ちになる。
そんなこと今まで無かったのに。
彼は初めからベッドサイドに持ってきていたコンドームを開けると少しもたついていた。そんな初々しさにときめいて、手を伸ばして着けるのを手伝いかけて、手を止める。どうしよう、普段は気にするのにコンドームを着けてほしくない。
「その、直接じゃだめかな」
「え...」
「俺は大丈夫だから、病気とかない...ちゃんと調べてるし、ね」
「でも、後からつらいよ、きっと」
「大丈夫、お願い」
「...後で洗うの手伝うから、つらかったら絶対言って」
「うん...うん」
うれしい。どうしよう。俺はこの人の言葉に、行動に一喜一憂してる。
「あの、正常位のが気持ちいいのかな、やっぱり」
「は、あっ……誰が…?」
「俺な訳ないよ、君が。あんまりよくわかんないからさ、後ろからのが良い」
「...っ、正面、から、にして...ぁ、ッ、うんっそう、して」
気遣われてる、とても優しくしてくれている。痛いくらいの優しさに俺は羨ましいと思った。この人の恋人だった人たちが。こんなに優しいのにあれが大きいからって簡単に捨てられるなんて。俺なら、絶対そうしないのに。
「やめて欲しかったらずぐ言ってね」
大きな先端がアナルに押し当てられる。怖い、怖いけどそれ以上に嬉しい。
「あ、あ、あっ……ッッ、ああ――ッ!あ、んんんんんっっ!」
俺のがばがばなそこに千切れそうなほどの太さがゆっくり入ってくる。
やばい、大きい、ッ。
でも、彼も苦しいのか、目を閉じて食いしばっている。
「ああっ、お、おきい…ッ!なに、あっああッ」
全てを攫っていくような重い衝撃に、俺は咄嗟に彼の腰に足を絡めた。そうするとゆっくり入って来てナカをめりめり広げていく。どこまでも無限に広げられる感触に恐怖を感じた。
「あんっああっやば、いぃッ!あっ…ひぃいいいッ」
「う、っ...!」
前立腺も全部、敏感なとこを押しつぶして前に進む。それがぴたりと止むと、おそるおそる彼を見つめた。
そしたら、ゆっくり今度は出ていく。
「えっあ、あ、はぁあっなにっ、あッこわいっ!」
広げられたナカがぽっかり空いて、閉じないような感覚は恐ろしかった。
「まっ、ああっ…出ないでっおか、おかしいッな、にこれぇっ!あっ、ぅんっ」
内臓がずり下がっていくんじゃないかと思うほどぽっかり空いた虚しさに戸惑う。それでも肉壁の全てに引っかかりながら抜けて、そして再び埋められると俺は声が止まらなかった。
「はああッな、あんっんあぁっだめ、あ、アっ!おっき、ぃい…ッ」
「全然、ゆるくないよ…すごい、気持ちいい」
「あ、あ、ぁっ…!」
しみじみ言われて羞恥で顔を覆いたくなる。俺も、気持ちいい。すごい気持ちいい。
「もっと動いていい…?」
「ん!っ…ぅん、うんッきて、!」
彼は身体を寄せて来て、肌と肌が触れ合うと熱さに震え上がった。汗のしみた身体が擦れ合うと気持ちいい。嫌な感じが全然無い。
抜けて、入って来て。ゆっくりな動きでも敏感なナカを引っ掻かれて、目の前が快感に真っ白になる。
「あ"あ"ぁッ!やッ!ああ―――っ!」
ずぶぶぶぶっ
「ひぃッ、ん、んッふうぅ...ッ」
「や、ばっ」
呼吸が止まるような衝撃に、彼の身体につい爪を立ててしまう。つぷ、と肌の避けたような感触がして慌てて力を抜いても、つい縋り付いて力がこもる。
快感の炎にどんどん油を足されていくように、勢いが増していく。身体に縋り付いて、どこか深いところに落ちないように支えて、顔を細い肩に押し付けた。
「おっき、ぃ...お、俺んナカ、いっぱい、ぁ、あッ!」
じゅぶっ...じゅぼっ...。
卑猥な水音が羞恥を煽る。
「すごい、ナカあっついね...」
「ああっだめッ!へんっに、なる...ッ!」
底のない闇にいつまでも落ちていくような感覚はより一層恐怖と快感を生み出していく。寄せ合う肌が温かいのだけが救いになる。
「は、あ」
「ふぁ、ああっ!」
彼も初めての快感に気持ちよさそうに見えた。目を閉じて、時折小さく息を吐いて、ちょっと唇をかみしめている。
そうであってほしい。気持ちいいって思っていて欲しい。無意識に甘えるように肌をすり寄せて、その首に腕を伸ばす。俺より首が太い、そんなとこにきゅんとする。
「あっあんっ…きも、ちぃ…っ?」
「うん、気持ちいい、すごく...君は?」
「…ふ、ぅッ...ふ、あ、あ、気持ちいい、からぁっ」
良かった。嬉しい。ほっとした気持ちが束の間湧く。それも動きの早まった腰にもみくちゃに消された。
「ひぃっ...あつい、よぉ...ッふ、ぁ、ぁあン!」
「そろそろ、ッ」
「あっ...なん、か、すごい、ぃ...ッ」
ばちゅんばちゅん、汗なのか何の汁なのかわからない水分をはじく音で激しく奥を突き上げ、中に出入りするたびに身体がびくびく仰け反って震える。入り口の浅いところを小刻みで責め立てられると視界が歪んで、どっと汗が溢れる。
もう限界が近い。それはひどく惜しい。終わらないでほしい。
でも絶頂感は抑えきれない。ビーカーの中の水かさが増していき、表面張力のギリギリまできて、それは溢れていくような。
ああ、もう終わっちゃう。嫌だ嫌なのに。終わって欲しくない、今の望みはそれだけなのに。
「っ、い、くっ」
「あ、ぁ、あぁあッ...い、く、ッ...あ゛―――ッ」
終わりたくないって思ったのに、身体はあっという間にどんどんと絶頂へと上り詰める。
きゅ、と自分より少しだけ大きな手で握られ、それを握り返して喘ぎながら、ナカでびくっと震えて脈打ったペニスを締め付けて、イった。
どぷどぷと奥に吐き出された精液が、たまらなく愛しい。なんだろうこの気持ち。熱くて、そのせいで身体もじんじんしていた。
大量の精液はアナルから溢れて、擦れくっつきあった肌と肌の間でぬちゃぬちゃと広がった。感触は良いものじゃないのに気にならなかった。それ以上の心地よさがつかの間広がっていく。
「大丈夫...?」
「は、ぁんっ…」
小さく上げた声は甘えるような声になっていた。
身を寄せ合って、抱き合って、何度も息を吐きながら、ふと外を見る。窓の外が少しだけ明るくなっている気がした。
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