その女、人類最強の奇人◇ | ナノ


  敵無しピエロ


 
 
 
『ふふふっ、ワタシはこっちよノロマなヘンタイさん』



ミソカは楽しげに笑いながら、巨大な裸の人間の攻撃をヒラリヒラリと避けている。



ドシンドシンと地を鳴らしながら歩いて来たのは、普通の人間の何倍もある巨大な人間だった。



以前出会った幻影旅団のメンバーにも人間離れしたデカさの人(確か、なんとかボォーって名前だったかしら)がいた気がするけど、もっと大きいわね。三メートルはありそうだわ。



動きはノロいしおかしな行動が多いが、目は確実にワタシを狙っている。



明らかに、力量の差は歴然。



でも、



『アナタみたいな巨大な人とヤってみたかったけど、残念ながら付いてナイのね』



少し、ワタシと、



『残念だわ。その変わり、たっぷりワタシと』





《アソビ》
殺り合い ましょう?









* * *










ふふふ




切っても切っても動くのね




ニヤリ、ニヤリ




手足を切っても死なないの?




ふふふ




あらあら……




そんなにワタシを食べたいの?



とんでもないヘンタイね




お仕置きがいるわね




グシャッ……




あら、頭を切ると死ぬのね




そう、死ぬと蒸発するのね




けど、おかしいわね




こっちのヘンタイは動いてる




頭を切っても死なないわ




グシャッ……




ああ、項付近が急所なのね




あら、もう刃こぼれしたの?




じゃあコレはもう要らないわ




でも、もっと、アソビたいわ




もっと  もっと








* * *









 
「チッ、遅かったか」

「すいません!道中に僕を助けて下さったから……!」



救援信号の元へ辿り着いた彼らが目にしたモノは、既に息絶えた仲間の姿だった。



「……………」

「……僕の、僕のせいで…!」

「ルータ落ち着いて」



救援信号に反応したのは、人類最強の男、リヴァイである。



近くの小隊からであり、その小隊は比較的経験の浅いメンバーが多かった。さらには作戦の進行経路に近い位置だったため、援護に一人引き連れ救援信号の元へ向かったのだ。



しかし道中、別の小隊の生き残りが巨人に襲われており、そちらを先に救助した。確かに時間はロスしたのだが、この死体の血の乾き具合からしてあのまま向かったとしても間に合うのは困難だと判断できる。



「……どちらにせよ間に合わなかった。奇行種なら尚更だ」



それは、紛れもない事実だ。



この救援信号は奇行種発見という黒い煙弾。経験の浅い隊員が奇行種に遭遇して生き残れる可能性など、ほぼゼロだ。



「流石にもういないみたいですね、リヴァイ兵長」

「……ば……バミラさん……」



震えているルータをなだめながら、リヴァイ班のバミラが周囲を見渡した。



「………いや、いるな」

「「…!!?」」



びくりと肩を揺らし周りを警戒する二人を余所に、リヴァイは一点を見つめていた。



まだ死んで間もない蒸発中の二体の巨人。



「きっと彼らが、命を懸けて……」

「…………」



その消えゆく蒸発の中に見えた巨人は、全身をバラバラにされているものと、頭のない体だけのもの。



つまり、項が弱点と知っている者がやったとは思えない残骸だった。



「…………!」



視線の片隅に見えたのは、投げ捨てられたブレード。



ブレードの柄には、まだほんのり温かさが残っている。



自分たちと同じ武器を使い、巨人をバラバラにした……という事か。



そう、項を削ぐのではなく、



切り落として。










狂気の足跡
(………この先へ向かう)
(……へ、兵長?)



 


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