繋がったセカイ
『………あら?』
女が気が付くと、地面に倒れ込んでいた。
ジャラッ……
『………』
手首に巻かれた鎖。かなり強力な念がかけられているのか、千切ろうとしてもびくともしない。さらには、自分の念も使えない。
『それよりあの子はどこ行ったのかしら』
女は手を鎖で固定されたまま立ち上がり、異様に大きな木だらけの森を歩き始めた。
彼女の名は、ミソカ。
彼女については、一言で未知。
その露出度の高い服装と見た目から女性だと分かる以外、全くの未知なのだ。
服装や性格的なものがそっくりな為、快楽殺人鬼で有名な奇術師ヒソカの妹としても知られているがその信憑性も定かではない。
さて、彼女がこの状況になってしまった経緯をお話しよう。
快楽殺人鬼とまではいかないが、強者を求めている点ではヒソカと同じ部類に入る彼女。
そんな彼女が偶然見つけた強者のニオイがする極上の果実、それが全ての始まりである。
黒いフードを深く被り異質なオーラを放つ子ども。ヒソカに負けず劣らずの実力者である彼女の攻撃を、一度も食らう事なく夜の闇の中へ逃げていくのだ。
そんなとびきりの“獲物”を逃す理由はない。
その子どもを追いかけ、とある森の中に入った瞬間に意識が遠退いた。
そして、気付いたのが今である。
『流石にもう近くにあの子の気配はないわね。………ところで、ここはどこかしら』
気を失う前の景色とは、あきらに違う見覚えのない景色。
しかし、特に臆する様子はなく森の中を進んで行く。
そんな中、ふわりと香る嗅ぎ慣れたニオイに彼女が反応する。その方向へチラリと視線をずらすと、彼女の口角が反射的に上がる。
彼女の視線の先には、二つの死体。
一人は木に刺さったワイヤーに、血まみれの状態で吊されている。おそらく木に叩き付けられ骨が粉砕したのだろう、体幹があらぬ方向にぐにゃりと折れ曲がっている。
もう一人は地面に。“ソレ”の上半身はどこへやら、下半身だけ残った状態で木にもたれかかっている。
『…………』
ゾクゾクッ……
ペロリと舌舐めずりをする彼女。
そう、久々に見つけた獲物を追いかけていたのに見失った挙げ句、念能力も使えず自分では外せない拘束器具。
つまり、空腹の獣が極上のご馳走を取り逃がしたという極限のお預けをくらっている状態なのだ。
――――ドシン、ドシン
歩いていた足を止める。
『……ナニか、来るわね』
見知らぬ森の中を歩くならば、周りを警戒するのが一般的である。
しかし、彼女はその逆である。
敢えて警戒をしないのだ。
自分の強さに、絶対の自信を持っているからだ。
“ナニか”が近付いてくるこの地響きは、彼女を興奮させる材料に過ぎない。
さらに、自分では外せない拘束器具がついている上に、念が使えないという不利な状況。
気配に気付いていながら“敢えて”近付かれるまで無視をするのだ。
この危機的状況を楽しむ。
それが“ミソカ”なのである。
腹を空かせた獣はニヤリと笑う
(さあ、いらっしゃい)
(ワタシを楽しませて)
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