その女、人類最強の奇人◇ | ナノ


  変態奇術師を保護せよ


 
 
 
『…………』



シュウシュウと蒸発していく肉片に囲まれ、ミソカは木にもたれかかっていた。



興奮は冷め、今は多少冷静である。



『ハンター試験みたいで懐かしいわ』



ナンバープレートがあれば、などと考えながら手の拘束器具を見る。



拘束されて犯されるのもキライじゃないけれど、今はそんな気分ではない。



『邪魔だわ。いっそ手首ごと切り落とそうかしら』



おそらく何者かの念によって造られた手枷なのだろう。力ずくも無理な上、自身の念が封じられているので何ともならない。



除念師か他の念能力者を探すしかない。



『変に興奮されてグッチャグチャにヤられそうだけど、ヒソカに連絡しようかしら』



携帯を取り出したのはいいが、電源もつかず全く作動しない。



はて、滅多に使わないから充電は足りていたはずだけど。



『………また何か来るわね』



使えない携帯をしまい、複数の気配が近付く方へ顔を向ける。



徐々に視界に入ってきたのは二頭の馬と、軍隊のような地味な服装の男女が三人。



そういえば、さっきの死体と同じ服装な気がするわ。



丁度良いわ。あの人達にこの枷か手か、どちらかを切って貰おうかしら。



わたしは、彼らが到着すると同時に立ち上がった。









* * *









 
「なんだこの卑猥な女は」



あら、第一声から素敵な褒め言葉ね。



ほんのり香る強者の匂いに、口角が上がっていく。しかし、それはこの小さな彼だけで残りの二人は雑魚。それにしても、この小さな彼はオーラが垂れ流し状態だわ。ああ、なんて勿体ない。



「おい卑猥女。何故こんな所にいる」

『こっちが聞きたいわ。気が付いたら手にこんなオモチャを付けられて森の中に放置されてるんだもの』

「…………」



あらあら、眉間にシワが寄っているわよ。それより本題はそっちじゃないわ。



『ねぇ、それよりこの手枷取ってくれない?無理なら手ごと切っていいわ』

「…………は?」

「て……手を……?」

「………この女狂ってる!」



あら、そんなに褒めても何も出ないのに。



「………てめぇを一時保護してやる。その鎖はてめぇの処遇が決まってからだ」

『あら親切なのね』

「兵長!!こんな怪しい女を!!」

「落ち着けバミラ。俺もこの卑猥女に聞きたい事は山ほどあるが、まずは場所を変えたい。壁外の真っ昼間は巨人共がうろついて話もできない」



どうやら話はついたようね。彼等のお家に招待してくれるみたい。



「……てめぇは俺の後ろに乗れ。おかしな行動を取れば遠慮なく削ぐ」

『ふふ、物騒なのね』



彼の跨る馬に乗ろうとしたら、嫌そうな表情で手を伸ばされる。親切な彼に掴まり、私は軽く飛び上がりヒョイっと跨る。



「…………行くぞ」



チラリと睨まれた後、馬は勢い良く走り出した。










変態奇術師を捕獲した
(おい卑猥女その手をどけろ削ぐぞ)
(あらイケズね)
(……あの女兵長のお尻をっ!)



 


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