暴君、お前もか



 
 
 
『うふふ、やだ私ったら。つい空から落ちちゃいました!』



天女に媚びていたおかげで、平成の知識だけはある。実際の物は見たことはないが、軽い会話くらいなら違和感なく出来るだろう。



「ほうほう、空から」

『はいっ!恥ずかしいです、もう私ったらドジなんだから!』



見てみよ聞いてみよ!この違和感のない会話を!!!



何百何千回とあの胸くそ悪い天女共の相手をしたのだ。嫌でもあの未来の自慢話など覚えてしまう。



つまり、天女が空から降って来る事などお見通しなのだよ!



『この辺りでこすぷれの大会があるって聞いたから来たんですけど、間違えちゃったみたい!私方向音痴なのかなぁ?』



チラリと視線の端に木々が見える。おそらく上空から見えた緑の部分なのだろう。この天女養育場が山の上で助かった。しばらくあそこへ身を潜め、情報収集をしなければ。



このタコ野郎は表情が読めないが、その他の天女の一味は私を好奇の目で見ているだけで疑っている者はいない。



ただ、赤毛の男と教員であろう目つきの悪い男は私に警戒しているようだ。



赤毛の方は問題ないが、あの目つきの悪い男はかなりの実力者ね。要注意といったところかしら。



『あっ、それでは友人が待っているので行きますね?お騒がせしましたぁ〜』



あくまでも自然に。



町娘のように、天女のように。



私はその場を去る振りをして、天女の一味の視界から消えたことを確認後、気配を消し山の中へと紛れる。



近くの木に登り、そこから周囲を見渡してみると、見たことのない景色が広がる。



本当に緑がない。あの上空から見た白っぽい部分は、この四角い建物の事だったらしい。あれは全て民家なのだろうか。





これが戦のない平和な世、



“へいせい”




 
しばらくはこの山で様子を見よう。水さえ見つかればしばらく暮らせる。その間にこれからの事を考えよう。



そう考え水場を探していると、水練場のような場所を発見した。



なんだ、意外と簡単に



ザパァッ!!!!!!!













「お!みぞれだ!ここどこだ?いきなり水に落ちたんだ!」






嘘だろ、お前もか。










水中から暴君が現れた
(なぁなぁ!みぞれ!)
(ちょ、うるさい)



 



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