暴君二匹とタコの遭遇
「なぁなぁみぞれ、この際だから言わせてくれ!」
『どの際だよ』
七松と遭遇し、現在私の知る限りの情報を伝える。
いくらアホ暴君のアホ松といえど、今のこの状況の深刻さくらいはわかるだろう。
そんな中のこの発言。
余程私に言いたいことがあるのか。
「私と付き合おう!」
『……………は?』
何 言 っ て ん だ こ い つ。
「実はな、天女事変のせいで鉢屋に先越されたんだ!!でももう別れただろ?だから私と付き合おう!」
『は?マジで何言ってんの?ないわ。天女と三郎を許すレベルでないわ。ありえないわ。消えろ』
こいつだめだ。ほんの僅かに残っていた知性がさっき水に落ちた衝撃で流されたんだ。こいつもう終わったな。
「なんでだ!私たち相性バッチリじゃないか!特に体の相性!!」
『誰と勘違いしてんのよ。あんたとなんか寝てないし』
マジで何言ってんのこいつ。ないわ。天女と三郎を殺さないレベルでないわ。ありえないわ。消えろ
「寝たじゃないか五年の時!」
『バカじゃねぇの?あれは授業だよ』
「でも初めて同士だったのにお互い相性バッチリだったもん」
『“もん”じゃねぇよ。そんなの演技だよ下手くそが。それに私の初めては土井先生だっつーの』
マジあの人あんな優しい顔しといて超絶上手かったからね。つか上手過ぎて若干引いたわ。
『とにかく、そんなくだらない話する暇があったら猪か熊でも仕留めて来いよ七松』
「むっ!みぞれ!私たち恋仲になるんだから小平太と呼んでくれ!」
『ならねェよ。とりあえずアホ松死ね』
「駄目ですねぇ、言葉遣いが女性らしくありませんよ」
『うるせェタコ野郎。とりあえずアホ松こっち来い二度と発情しないようにそのお粗末なナニを………………、っ!!?』
バッとその場から飛び退く。
いくらアホ松と話をしていたとしても、油断はしていない。警戒も怠っていない。
それは恐らくアホ松も同じ。
それなのにこのタコ野郎は、気配を悟られず一瞬で私達の背後に立っている。
………一体こいつ、何者?
「その方がご友人ですか?見つかって良かったですねぇ」
落書きみたいなタコ野郎の顔が、にやにやとした表情で「ヌルフフフ」と笑っている。
なんか、もの凄い腹立つ。
「(こいつがみぞれの言ってたタコ野郎か)」
『(ええ、油断しないで)』
矢羽音を交えつつ、私はにっこりと笑顔で対応する。
『はいっ!彼とここで待ち合わせだったんです!今からこすぷれ大会に向かうんです』
するりとアホ松の腕に絡む。
「じゃあ行こうか!」
「(もっと寄れ!みぞれのおっぱいが当たる!)」
『うふふ、そうね!』
『(死ねよ。とりあえず後で殺す)』
タコ野郎の横を通り過ぎようとした時、タコ野郎が口を開いた。
「実は先生、とある占い師に言われたことがまだあります」
占い師、そういえば空中で抱えられた時にもそんなような事を言っていたわね。
私は足を止め、タコ野郎へと振り返った。
「空から降ってくる異世界の訪問者と遭遇するでしょう。そしてその訪問者が生徒に与える刺激は今後の成果に響くでしょう、と」
『……はァ?』
「???」
異世界?
ちょっと話がブッ飛び過ぎて、訳がわからない。
「いまいちよくわからん!みぞれ!私頭爆発しそうだ!」
『むしろ爆発しろよ』
それより、このタコさんにちょっと詳しく聞きたいわ。
凄腕占い師の未来予報
(タコさん、その話もう少し詳し)
(みぞれ!私の頭爆発してない?)
(黙れ死ねよアホ松)
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