仙様、求愛する
「あの時の“邪魔です”という言葉で、私は気付いたのだ。この心臓はサチ、お前にしか高鳴りはしない!さあ罵倒して一発踏ん付けてくれ!」
『気持ち悪っ』
「おぉっふ!!!」
立花先輩は、顔を赤く染めて仰け反った。気持ち悪い。
あの衝撃的な出会いから、行く先々でこの立花先輩が現れる。
そして、罵れだの踏み付けろだのと気持ち悪い要求をしてくるのだ。本気で気持ち悪い。あと迷惑だ。こちとら食堂で、おばちゃんの美味しいお茶を啜っているのに。
「そ、そのまま私を一発……」
『気持ち悪いので離れて下さい』
「うはんっ……!!サチ、お前はそんなに私を焦らしてどうするつもりだ!!」
『………うわ、気持ち悪』
「うはあぁぁぁんっ!!!」
立花先輩は、奇声をあげて崩れ落ちた。気持ち悪い。
一体どうしてこうなった。
なぜ私なんだ。
私がこの人に何をしたっていうんだ。
「ご馳走様でした」とおばちゃんにお礼をし、出口の前で転がる立花先輩を足でどかしてその場を後にした。
入れ違いで入った深緑色の忍装束の先輩が「おい仙蔵何してるんだ」という声と「黙れキモンジ!!何故サチでなく貴様がいるのだ!!サチーーーーっ!!!」という叫び声が聞こえた気がした。
………気持ち悪っ。
早く長屋に戻ろう。
これが後に語られるストーカーである
(ここを通るのを待っていた!)
(……げ、出た)
(さあ、そのまま踏んでくれ!)
(気持ち悪っ)
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