って言うか、アリーゼはいつの間に俺の側に?
……おぉ、ベルフラウまでいるよ。そしてお前の「撫でて!」って言いたげな顔は何なんだ。
仕方なくベルフラウの頭も撫でていると、不思議そうに首を傾げて口を開いた。
「ところでお兄様、何で"黒い風"って呼ばれてるんですの?」
「あ、それはオレもずっと気になってた」
「僕も、そこまでは知らないな……」
「私も……」
子供達の言葉に、俺は一瞬ピクリと眉を動かした。
幸い、誰も気付いていない――いや、スカーレルは気付いたらしい。
俺と視線が合うと、肩を竦めて苦笑していた。
「ちょいとアナタ達、そんなに一気に質問責めにするもんだから、ユキが困ってるじゃないの?その話は、また時間がある時にでも、ゆっくりと話せばいいじゃない?」
「あ……」
「すみません、兄さん……」
「私達、興奮して、つい……」
「お兄様だって、疲れてるのに……」
申し訳なさそうにうなだれる四人に、「気にするな」と言って微笑みかける。
再びスカーレルと目を合わせると、「気にしないで」と目で言い、手をヒラヒラさせていた。
『狂乱の黒い風』……か……。
その名が付いた当時は別段何とも思わなかったのだが、今の俺にとって、それは重荷以外の何物でもない。
海賊になって以来、久しく聞かなかったが――。
やっぱり、どこまでも付いて来るもんなのかな。
「ところで、護人達との間ではどのような話し合いがなされたのですか?」
ヤードの言葉によって、話が漸く本筋に入った。
「幻獣界と鬼妖界の集落に、以前から野盗が出てるらしくて……その討伐に、協力することになったんだ」
「野盗?」
眉根を寄せたソノラの問いに、困ったような笑みを浮かべ、レックスが頷く。
「しかも、その野盗って……どうやら、人間らしいんですよ……」
「先日の、帝国軍の仕業なのでは?」
「いーや、それが帝国軍や俺達が流れ着く以前かららしくてねぇ」
「で……断るに断りきれず、つい、同行するって言ってしまったんですよ……」
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