そんなアティの頭を軽くポンポンと叩き、同様に訝しげな表情を浮かべているレックスに微笑みかける。



「そんなこと、俺達は気にしちゃいない。だから、本当のことを話してくれねーか?」
「……この島が昔、召喚術の実験場だったことはご存知でしょう」


やや暗い面持ちのキュウマの言葉に頷く。


「正直、実験と称して、口には出せないような酷いことも、度々行われていたの」
「そんなことがあったから、島の住人は人間に対して、あまり良い感情を持っちゃいねぇんだよ」
「オ前達ガ、本当ニ、仲間トシテ受ケ入レラレルカドウカ……」



だから俺達を、「島を紹介する」という名目で呼び出して、危険性がないかどうかを島の住人に見極めさせようとしたのか。
その時のようなことが起こらないことを、知ってもらうために。その時のようなことをする人間達ではないと、理解してもらうために。

カイル達に、昔実験場だったことは聞いたが――その傷は、やはり深いようだ。


沈黙により訪れた重苦しい空気をぶち壊すかのように、俺は口を開いた。



「あ、なーんだ。それだけのことか」



……。



いやさー、覚悟はしてたけど、その"何だこの空気読めねー奴は"みたいな目で見られるのは堪えるね。

ユキさん、ちょっと居心地悪い!


全員がぽかんとした顔をしているその様子に、苦笑を浮かべながら言葉を続ける。


「俺達は、友好関係を築けるんならそれでいいのさ。そこにどんな思惑があろうと、結果的に仲良く出来るんだったら、一向に構わねーって」


そこで一旦言葉を切り、護人達一人一人の顔を見る。



「ただ、隠された思惑を探り合ってぎくしゃくしちまうと、それが新しい問題の種になりそうだったからねぇ……不用意な所に足を突っ込んじまったな。すまないと思ってるよ」
「確カニ、我ラハ少シ、間違ッテイタノカモシレナイナ……」
「口では友好だの何だのと言っておきながら、心の奥では、まだ貴方達を信用できていなかったのかもね……」



俺が頭を下げると、ファルゼンとアルディラが、自らに言い聞かせるように呟いた。



「それにユキ殿の言う通り、わだかまりが残ったまま付き合っていたら、必ずどこかに歪みが生じるでしょう」
「むしろ、こっちが礼を言うべきなんだろうな」



俯きがちに苦笑しているキュウマと、人差し指で、困ったように頬を掻いているヤッファ。


隣のアティとレックスを見ると、困ったように笑っていた。



「あー……はいっ!この話は終わりっ!!仲良くなれる日なんだから、そんな顔してないで、明るくいこうぜー?」
「それじゃあ、これからもよろしく、ってことね?」
「はい!よろしくお願いしますね♪」



腕組みをして頷くファルゼンと、ニコリと微笑むアルディラに、アティが笑顔で返す。



「それでも一応、我々の行為の謝罪と、ユキ殿へのお礼を……」
「おいおい、キュウマの兄ちゃん、そう堅苦しくなんなって」
「そうですよキュウマさん。ユキなんか、敬語が好きじゃないって理由で、誰に対してもタメ口ですからね!」
「おいレックス、お前のそれは褒めてないよね?」



微妙に失礼なレックスにツッコミをいれると、キュウマとヤッファが可笑しそうに笑った。


みんなが笑顔になって、仲良くなって……それでいいじゃねーか。

まどろっこしい理屈や建て前なんか取り払えば、誰も彼もそう変わらない。




「それじゃあ、話も纏まったことだし……早速集落の見学と行きますか!」
「「はーい!」」



元気よく返事をし、俺に抱き着くアティとレックス。


……あのねー、一々俺に抱き着くのやめない?お前ら年幾つよ?



その様子に、可笑しそうにクスクスと笑う護人達。

俺は護人達に向かって、困ったように肩を竦めた。




さて、どこから回ろうか?




第9話-終-
[*prev] [next#]
[タイトルへ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -