集落を見て回ったら、もう一度集いの泉に集まる――そう約束を交わし、俺達は集落の見学に向かうことにした。




どこから回るか考えていた俺達は、再び遭遇したマルルゥに案内してもらいながら、集落を見て回ることにした。

結論から言えば、島の住人は、変わりも……個性的な……もういいや面倒臭い。
一癖ありそうな、変わり者揃いだった。





機界集落"ラトリクス"では、機械人形のクノンと出会った。

"リペアセンター"という施設にて、病人の看護を担当しているらしい。
長い間人との接触がなかったために、本来発達する感情の回路が未発達のままなんだとか。


島の住人同士でも、他の集落との交流は殆ど無いらしい。
俺達がこうして各集落を行き来して、橋渡し的な存在になれば、住人同士での交流も確実広まるはず。

そうなれば、クノンの感情の回路もすぐに発達するだろうな。




霊界集落「狭間の領域」では、天使のフレイズと出会った。
ファルゼンは言葉を操るのが不得手なため、副官を務めるフレイズが通訳のような役目をしているそうだ。


どうでもいいのだが、フレイズとは何やら通じるものを感じた。
"何が"とは言わない。"外見的な悩みと言える何か"とは言わない。

それは向こうも同じだったようで、俺の顔を暫く見つめていたかと思いきや、突然握手を求められた。
今ここに、同じ悩みを持つ者が結託したのだった。




幻獣界集落「ユクレス村」では、パナシェとスバルという二人の少年と出会った。


パナシェはバウナス族のようだが、スバルは鬼妖界集落の子で、度々パナシェと遊んでいるらしい。
やはり、幼い子供というのは誤解や偏見を持たないようで、他集落の住人とも分け隔てなく接することが出来るようだ。

スバルはそうでもないが、パナシェは人間に対して抵抗があるらしく、ビクつきながら握手してきた。
人間への偏見と言うよりは、未知の者に対する恐怖っぽいけど。

しかしながら、その様子は捨てられた子犬のように、プルプルしていて可愛かった。一気に癒された。





そして今、俺達がいる場所は――鬼妖界集落「風雷の郷」。



「……と言った感じの集落なのです。お姫様さん、って方が、みんなを纏めているのですよ」
「ユクレス村ものどかでしたけど、ここも落ち着きますね〜」
「姉さん、故郷の村を思い出さない?さっきのユクレス村もだったけど……緑が多いところとか、きれいな川が流れてるところとかさ……」
「そうですね……暑い日は川に入ったり、魚を捕ったりしてましたよね?」
「ここの川にも、お魚さんがいっぱいいるですよ?今度みなさんと一緒に、川遊びをしようですー♪」



楽しそうに話している三人を、俺は苦笑混じりで見守っていた。


ったく、子供とそこまで一緒になってはしゃいでどうするんだか。
まあ、それがコイツらのいい所だし、子供と同じ目線になれるってことは、実は教師の素質は十分あるのかも?


その後「魚はどうやって食べるのが一番美味しいのか」という話に発展し、俺が暫く魚料理の講釈をする。
その結果、今日の夕飯は魚の塩焼きを作ることを強要された。

献立に悩むことがないから、要望があるのは有り難いかなー。



そんな感じで歩くこと暫く。

遠目にも見えていた、大きな屋敷の前に辿り着いた。



「ここがお姫様さんのお屋敷なのです」
「おーっ、大きいですねー……」



アティの感嘆通り、その屋敷はもの凄い大きさで、恐らく俺達の海賊船を丸々収容出来るだろう。

木造ながら豪華で豪奢、それでいて無骨さの感じる外観は、シルターン自治区でもお目にかかれないだろう不思議な建物だ。




屋敷の中に入ると、護人のキュウマが出迎えてくれた。



「皆様、この鬼の御殿によくぞおいで下さいました」
「ああ、さっきぶりだなキュウマ」
「さっきぶり……とは、あまり言わないような気がするのですが……」
「まあまあキュウマさん、細かいことは、あまり気にしないということで」


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